10 月 20 日, 2018

大腸smがん

大腸粘膜の層構造初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。
がんの深さが①までであれば内視鏡治療を選択します。
がんの深さが③④⑤まで及んでいれば(シェーマの黄色のラインより下)、外科手術が必要です。

問題は②粘膜下層にがんが及んでいた場合です。
内視鏡でポリープ切除をしたけれども、さらに外科的切除が望ましいとされているのは、
(1)垂直断端が陽性(がんが粘膜下層断端に露出していることを言います。)
(2)摘出標本で以下の一因子でも認めた場合
❶ 粘膜筋板から1,000μm(=1mm)以上
❷ 脈管侵襲陽性
③ 低分化腺癌、印環細胞癌、粘液癌
④ 浸潤先進部の簇出(しゅうぞく)がグレード2以上(グレードは0~3)*簇出とは、がん細胞のばらけ具合を言います。グレードが高いほど、ばらけ具合が強い。

先日、70代女性に大腸ポリープ切除をおこなったところ、smがんと診断されました。ポリープ切除によって完全にがんは取り切れていたのですが((1)はクリア)、粘膜筋板からがんの最深部までの距離が2,000μm(=2mm)ありました。また、切除標本の詳細な検討の結果、脈管侵襲陽性と診断されました((2)の❶と❷が該当)。その後、リンパ節郭清の目的で外科手術が行われました。

10 月 6 日, 2018

よもやま話(108) 腕組み

腕組みは拒絶、怒りのポーズです。診察に付き添いの方が同席される場合があります。お子さんの親御さんとか、ご高齢の方のご子息とか、夫婦とか、いろいろです。本人の事が心配だから付き添われていると理解しています。本人から正確な情報が得られにくい場合は付き添いの方からの一言がとても重要なこともあります。
和やかな雰囲気が大事ですね。一方、用意した椅子に座ることも無く、腕組みをして無言で立たれる場合も(ごくまれですが)あります。
これから始まる診察や検査の結果いかんでは、大変なことになる事もあり得るわけで、付き添いの方も心穏やかでないのでしょう。ついつい、身構えてしまい、その結果、無意識に「腕を組む」という動作をしておられるものと思います。
しかし、正直なところ、腕組みをして無言で立たれると、診察する方としては、いささかプレッシャーを感じます。診察を監視されているような錯覚におちいり、診察も型通りの硬いものになりがちです。腕組みは相手を拒否する行動の表れとも言われています。名乗らなくても結構ですので、せめて、腕組みはやめて、フレンドリーに診察に参加しませんか?

9 月 24 日, 2018

よもやま話(107) 10年前の自分と出会う。

古いカルテ先日、患者さんがご家族のことを説明されている話の内容から、「それ、ひょっとしたら、主治医は自分かも知れない。」と思い当たる節がありました。水曜日の午後の休診を利用して、以前、勤めていた病院に入院カルテを閲覧しに行ってきました。10年前の自分の書いたカルテを見るのは、とても新鮮でした。

当時は、まだ電子カルテが導入されておらず、紙カルテでした。ですから、自分の肉筆を見ることが出来ました。
入院時の診察所見、診断、治療計画。
ご家族への病状説明、治療計画、予後、の説明。さまざまな検査や治療の同意書。
治療の評価
更なる追加の治療
ご家族への病状説明(入院後の経過や追加治療の必要性、など)
難病の申請手続き
等々。
人工呼吸器の設定・管理などの記載を見て「こんな難しいことをやっていたんだ」と感心しました。リスクの高い処置にも次々と立ち向かっていました。10年前の頑張っている自分と出会えて嬉しかったです。

9 月 9 日, 2018

ブログでダイエット 持続血糖測定器(1)

腕の白いのがセンサーです。過去4回にわたってダイエットの模様をブログで紹介してきました。前回10kg体重を減らすことが出来た時点でブログは終了しています。あれから2年経ち、徐々に体重は増え続け、気がつけばダイエット前の体重にすっかり戻ってしまいました。

敗因は、ハッキリしています。「糖質制限」が続かなかったことです。「頑張ったご褒美」と評してスイーツだのパンだの食べていると、あっという間に戻ってしまいました。そもそも「ダイエット」という言葉にすでに矛盾を含んでいます。今、ダイエット中であれば、いつかはダイエットをやめるわけで、そしたら、また体重は増えます。ガマンは続きません。何か別のアプローチはないだろうかと考えていた時に、「持続血糖測定器」に出合いました。これは、センサーを体に貼っておけば、1日何回でも簡単に血糖測定が出来る装置です。
血糖値が200mg/dL前後になると、体はブドウ糖を中性脂肪に置き換えて体に保存しようとします。これが、皮下脂肪や内臓脂肪になり、体重が増えてしまうわけです。そこで、何をどれぐらい食べれば、血糖値が上がってしまうのか、自分の体で体験して、血糖値の上がらない食事の方法を会得するツールとして活用することで、ダイエットにつながればと考えたわけです。
幾つか例をご紹介します。
果物をスムージーにして飲むと、健康に良さそうですが、血糖は軽く200を超えました。
チャーハンは、カロリーが高そうですが、意外と血糖が上がりませんでした。ご飯にからまった油が糖質の吸収を抑えているのだと思います。
ナッツ類(くるみ、アーモンド、他)はさほど血糖に影響しませんでした。
こんな具合に「高血糖」を出来るだけ避けることで、体重が減っていかないか、試してみます。

7 月 30 日, 2018

鶏のタタキ 生で食べても安全な肉は「牛肉」だけです。

美味しそうですが・・・。居酒屋メニューに「鶏のタタキ」があります。よかったら、「鶏のタタキ」の知識を収集していきませんか。

① かつおのタタキは意味があります。
タタキと言えば、まず「かつおのタタキ」が思い浮かびます。かつおは皮の下に寄生虫がいることが多いので、周りだけ炙(あぶ)って処理しておけば、安全に美味しく食べることが出来ます。

② 生の牛肝臓(レバ刺し)は販売することが禁止されています。
牛内臓の10%は腸管出血性大腸菌(O-157、他)を保有しています。O-157は少量の菌だけでも、死に至ることがあります。ですから、レバ刺しは販売が禁止されています。一方、牛肉は生でも安全です

③ 鶏肉の保菌率
鶏肉のカンピロバクターの保菌率は10%から100%です。新鮮な肉ほど保菌率が高いです。カンピロバクターは肉の内部に潜り込んでいきますので、肉の周囲だけに火を通しても菌は死にません。また、鶏肉のサルモネラ菌の保菌率は50%以上です。鮮度が落ちるとさらに保菌率は上がります

それでも、あなたは、鶏のタタキを注文しますか?

【追記】
鶏肉を洗ってはいけません。菌の付いた水しぶきが周囲の食材や食器に飛び跳ねるからです。鶏肉をさばいた包丁とまな板は十分に洗ってから次の作業に移ってください。

7 月 11 日, 2018

開院9周年を迎えて

9才です。クリニックの焼印が入っています。本日、開院9周年を迎えました。皆様にご利用頂いたおかげで、クリニックを続けることが出来ました。心よりお礼申し上げます。

診察で心掛けていることは、患者さんの症状が重大な病気の始まりなのか、それとも気にしなくて大丈夫なのか、見極めることです。検査結果からどうするのが一番いいのか、手術を受ける時は、どの病院にお願いするのが一番良いのか、といったことを患者さんの希望をくみ取りながら診察を進めています。
当院で治せる範囲のものは責任を持って治療にあたり、そうでない場合は、速やかに他科の先生や総合病院へ紹介しています。開業当初は、この境界線がなかなか見極められませんでしたが、今では、迷うことはほぼ無くなりました。

当院には、開院以来働いてくれているスタッフが3名います。患者さんから、いつもの看護師と思って頂けるだけで、安心感が生まれると思うのです。クリニックの大切な財産です。

今日からは10年目に突入です。もっともっと信頼されるクリニックを目指して頑張っていく所存です。今後ともよろしくお願いいたします。

6 月 30 日, 2018

入れ歯の誤飲からの ”まさか” の展開

まさか、数日前に胃透視を受けていたとは。60代女性の方が、昨夜、ふと、ブリッジの付いた入れ歯が無いことに気付き、おそらく気がつかないうちに飲み込んでしまったのではないかと来院されました。

喉の違和感や腹痛はありません。腹部レントゲン写真を撮ってみると、盲腸のところに、1cmぐらいの惰円形の白い影とそれにつながる5cm程度の弧状の白い線が写りました。本人にレントゲンに写ったモノを確認してもらい、入れ歯が盲腸で停留していると判断しました。ブリッジの部分の先が尖っているので、今後、大腸穿孔を来しうる可能性があるため、さっそく大学病院に行ってもらいました。しかし、CT検査や大腸カメラで入れ歯は見つかりませんでした。大学病院の先生が詳しく病歴を聞き直したところ、数日前に胃透視を受けていたことが判明しました。レントゲンに写ったものは、虫垂に留まったバリウムだったのです。
そもそも、入れ歯は飲み込んでいなかったのかも知れません。今頃、洗面台のどこかから入れ歯が見つかっているかも。脱力感が残ったほろ苦い経験でした。

6 月 20 日, 2018

背部痛→心窩部痛→腹部大動脈瘤

【60代男性】腹部大動脈瘤
1週間前に強い背中の痛みが発症し、ペインクリニックを受診されました。局所に注射を打ってもらい、痛み止めを処方されました。その薬を内服したために心窩部痛が出現したと当院を受診され、胃カメラを希望されました。病状を聞きながら「痛み止めによる胃潰瘍」を想定し、『痛み止めは胃に悪いから、極力飲まないように。』と説明し、胃カメラの予定を入れました。
❷『胃カメラで確実な診断がつくから、今日は話を聞くだけで良いかな。』と思って診察を終わろうとした時、患者さんから腹部の診察を求められました。そこで初めてお腹の触診をしたのですが、ヘソの辺りに可動性の無い鶏卵大の硬いしこり触れました。エコーで確かめると、8x5cmの腹部大動脈瘤でした。
❸気に留めていなかった血圧は180/120mmHgと異常高値です。動脈瘤の切迫破裂によって、「背部痛」→「心窩部痛」と痛みの性状が変化したのであれば、とても危険な状況です。頭の中を切り替えて、直ぐに循環器内科医に診てもらうように手配しました。
❹CT検査の結果、腹部大動脈瘤が確認されました。直ちに「人工血管置換術」が施行され、無事に退院されました。
和やかな雰囲気が大事ですね。
【あとがき】
今回の診療ではいろいろ反省することがありました。
・患者さんの話にそのまま乗っかてはいけない。
・胃カメラを予定していても、お腹の触診をする。
・バイタルチェックをきちんと確認してから診察を始める。等々。
特に、患者さんがお腹の触診を希望されたことがポイントでした。患者さんが何でも言い易い雰囲気をつくることが大切ですね。

6 月 10 日, 2018

胃がんの手術 「観音開き法」

【30代女性】
会社の健診で「血中ヘリコバクターピロリ抗体陽性」を指摘され、当院を受診されました。保険診療ではピロリ菌の除菌の前に胃カメラを受けておくことが必要です。胃カメラで、胃の入り口に小さな胃がんが見つかり、手術になりました。このたび、数年ぶりに当院を受診されたのですが、ハツラツとされていました。食事も手術する前と全く変わず、美味しく何でも食べられるとのこと。体重も手術前とまったく変わらないそうです。
胃の口側(上側)を切除して、食道と肛門側(下側)の胃とつなぎます。
通常、胃がんの手術はがんの部位を含めて肛門側(下側)を切除します。そして、残った口側の胃(上側)と十二指腸を吻合します。ですから、胃の入り口にがんが出来た場合、もったいない気もするけれど、胃を全部取ってしまわなければいけません。この方も、多分そうなるだろうと想像していました。
胃を全部取ると、ご飯が少しずつしか食べられないため、10~15kg痩せるのが常です。

ところが、この方は、噴門側切除術(挿絵参照)を受け、同時に、食道と残胃の間で逆流が起こらないように胃粘膜を使った人工弁を付けてもらったのです。その弁が「観音開き」のように開け閉めするので、「観音開き法」と名付けられています。「観音開き法」の一番のメリットは無理なく栄養が維持出来ることです。この手術法は1998年に日本で開発されました。(*噴門:胃の入り口)

胃の機能が温存されたうえに、胃から食道への逆流が防止されているため、患者さんの術後はとてもハッピーです。今回初めて「観音開き術」を受けた方とお話することが出来、その効果に大変感銘を受けました。

5 月 30 日, 2018

バセドウ氏病に看護師さんが気付いてくれました。

20代女性
心窩部痛にて来院。経過やお腹の所見から「急性胃腸炎」と診断し、処方しました。診察の後、看護師さんから「先生、今の方、甲状腺腫れてなかったですか?」と指摘されました。顔を見て、病歴を聞いて、診察台に横になってもらい、お腹を診察したのですが、首元(甲状腺)はまった注意していませんでした。改めてバイタルを見直してみると、発熱も無いのに脈拍が100回/分以上あります。甲状腺機能亢進症では脈が早くなります。益々、甲状腺の病気が怪しくなってきました。お腹の事ばかりに気をとられ、全身を見ていませんでした。「木を見て森を見ず。」ということです。
再度、診察室に入ってもらい、甲状腺が腫れていることを確認し、血液検査を受けてもらいました。その結果、甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病)と診断がつきました。

看護師さんは頼りになります。バセドウ氏病では、食欲が亢進し、軟便、下痢などの消化器症状がみられることがあります。ですから、胃腸症状であっても、甲状腺が腫れていないか患者さんの首元を観察しておいた方が良いのです。

患者さん全体をしっかり観察するところからやり直さなければいけません。そのためには、患者さんが診察室に入って来られる時に、正面視しなければいけません。ついつい、その前の患者さんのカルテを書きながら、次の方を呼び入れていました。まず、ここを改める必要があることを痛感しました。

看護師さんも、診察に関することを院長に進言するのは勇気が要ったと思います。指摘してくれてありがとう。スタッフがなんでも話し易い環境づくりが大切ですね。それが、中野胃腸クリニックのレベルアップにつながるわけですから。


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