10 月 30 日, 2017

虫垂開口部の異常からの新展開

大腸カメラの終点は盲腸です。盲腸には、虫垂の開口部が観察されます。通常では、それは、おへそのようなイメージです。
盲腸と虫垂の位置関係を確認してください。
【50代の女性】

腹痛の精査目的で大腸カメラを受けてもらいました。盲腸の虫垂開口部が「つくし」のような突起物として観察されました。色素散布をして詳しく観察すると、ポリープではなく、大腸粘膜の突起でした。腸の中から観察すれば、通常は窪んでいるハズの虫垂が腸の中に反転しているのです。大腸憩室でも同じことは起こります。ただ、虫垂の反転を観たことが無かったので、CT検査で確認することにしました。CTで虫垂の反転が確認されましたが、同時にすい臓がんも見つかり、急きょ、総合病院に入院していただきました。なお、虫垂の反転の原因はわかりませんでした。

【30代女性】
下腹部痛の精査のために大腸カメラを受けてもらいました。盲腸にある虫垂開口部が少し赤く腫れていました。虫垂に炎症があるわけで、CT検査も受けて頂きました。CTで慢性的に腫れた虫垂を認めましたが(慢性虫垂炎)、虫垂がんの可能性もあるため、大学病院に手術をお願いしました。手術前のルーチン検査として受けた胃カメラで胃がんが見つかり、急きょ胃がんの手術が追加されました。

最近、虫垂開口部の異常から内臓のがんが見つかった患者さんが2名続きました。たまたまだと思いますが、その異常を「良くあることだし、様子を見よう。」と判断していたら、がんの発見は遅れたと思います。わずかな異常でも「見逃さない」「そのままにしない」ということの大切さを強く感じました。

10 月 22 日, 2017

睡眠薬に関する豆知識

今夜も眠れない。睡眠薬に関するいくつかの注意事項をまとめてみました。

❶睡眠薬は麻薬及び向精神薬取締法で規制されています。処方された薬を誰かに転売したり譲渡することは『犯罪』になります。
❷アモバンとデパスに限っては、これまで90日処方が可能でしたが、最近、30日までになりました。医療機関から不正な手段で入手する事例が増えたためだそうです。
❸睡眠薬はイメージほど依存性が強くありません。一度飲んだら、止められないということは無いのです。むしろ、精神安定剤(デパス、リーゼ、等)の方が依存性が強いです。
❹最近まで、アメリカ合衆国では、睡眠薬は一生で最大35日しか処方出来なかったそうです。その理由は、保険会社が睡眠薬の処方をなかなか認めないことと、薬の認可の権限を持つFDAがとても厳しかったためです。
❺睡眠薬は安全な薬です。大量に服薬しても命の危険はありません。私が救急病院に勤務していた頃、自殺企図で睡眠薬をたくさん飲んで救急車で運ばれてきても、スタッフは皆落ち着いていました。
❻睡眠薬を飲めば、直ちに眠くなるわけではありません。すべての用事を済ませて、「あとは薬を飲んで寝るだけ」となった状態が必要です。寝室は、真っ暗にし(豆電球もダメ)、テレビ、ラジオも消してください。

10 月 10 日, 2017

ブログで診察(19)

いつものブログ先生です。体のチョッとした不調や気になる症状、一度、医師に聞いてみたかったことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

【質問】 健診でγ(ガンマー)-GTPの高値を指摘されました。お酒を飲まないのにどうしてでしょう?(50代女性)

【答】 γ-GTPはお酒のマーカーだけではありません。

γ-GTPといえば、お酒のマーカーというイメージが強いですね。確かに、その側面もあります。ただ、飲む量とγ-GTPの上がり方には個人差があって、γ-GTP値から飲酒量を推測することは出来ません。沢山飲んでいても、γ-GTPが正常の人もいます。一方、飲酒を止めれば、γ-GTPはもれなく下がってきますので、禁酒を守っているかどうかの指標になります

γ-GTP高値で見落としてはいけないのが、脂肪肝の存在です。非アルコール性脂肪肝はメタボリック症候群と強い関係にあります。肥満傾向にあれば、一度調べたほうが良いでしょう。

γ-GTPALP(アルカリフォスファターゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)とともに、「胆道系酵素」の側面も持っています。これらの酵素が揃って異常であれば、胆道系疾患(例えば、総胆管結石、胆のうの結石やがん、すい頭部の炎症や腫瘍)を疑い精査する必要があります。ただし、γ-GTP単独の異常値であれば、その可能性はほとんど無いです。

また、γ-GTPはある種の薬剤(抗てんかん薬、抗不安薬、抗菌剤、他)でも高値を示すことがあります。

γ-GTPは健康体であっても、異常値を示す場合があります。異常値が出た場合は、年に数回、測定することをお勧めします。数値に変化が無ければ、心配無いでしょう。

9 月 30 日, 2017

医療に関する話 膵石(すいせき)

スターフライヤーは北九州空港の飛行機です。
【50代男性】

慢性膵炎で当院に通院中の方です。腹痛などの症状は無いものの、膵酵素の異常高値が続くためCT検査を受けたところ、主膵管に膵石が見つかりました。(*主膵管とは、膵臓の真ん中を貫いている膵液の通る管です。膵臓で作られた膵液はこの管を通って十二指腸に流れていきます。)
大学病院の治療方針は内科医、外科医ともに、「膵石による症状が出たら、手術を検討する」という結論でした。別の病院でも診て頂いたのですが、まったく同じ回答でした。内視鏡治療の選択肢はありませんでした。
ご本人は「悪くなるまで待つというのは性に合わない。」と、この治療方針に納得されませんでした。
そこで、症状が無くても手術以外の方法で膵石を治療してくれる病院を探しました。その結果、内視鏡で膵石を取り除いてくれる病院が見つかり、九州から東京に出向くことになったのです。

ガイドラインでは、膵石に対する内視鏡治療は、原則、疼痛を認める症例を対象としています。ただし、疼痛がない場合でも、膵萎縮が無く膵機能の改善が期待できる症例も適応とすると記されています。この一文が、患者さんにピタリ当てはまりました。

私が、東北地方の病院に勤務していた頃のことです。膵癌の患者さんの手術を外科に依頼しましたが、血管走行の異常から、手術は出来ないと判断されました。そこで、特殊な手術方法の論文を見つけ、その論文を書いた東京の先生に患者さんをお願いしたのです。(無事手術を終えて、帰ってこられました。)
その時、自分の勤めている病院だけで判断しないで、もっと広い視野で治療を選択出来ることに気付いたのです。今回はこの経験が生かされました。

9 月 20 日, 2017

乗馬日記(11)  駈足(かけあし)発進

カッコイイ!北九州市若松区の「若松乗馬倶楽部」に通うようになって、丸2年が過ぎました。上手に乗れるようになった時に、「そんなことも出来なかったのか。」と懐かしがってみたく乗馬日記を始めました。乗馬の最終目標は、「若松の海岸をさっそうと駆け抜ける」です。

長らく乗馬のブログが更新できませんでした。というのも、ある壁にぶつかって、筆が進まなかったのです。

常足(なみあし)または軽速歩(けいはやあし)の状態から駈足(かけあし)にするには、(あぶみ)で馬の腹をけって合図を出します。そうすると、馬は一歩目を踏み込むので大きく揺れた後に、加速度がかかります。そのために、自分の体が後ろにおいて行かれそうになります。落馬したくない気持ちから、合図を出すと同時に上半身が前屈みになってしまうのです。そうすると、馬は止まってしまいます。前屈みにならないように我慢すると、手綱(たづな)を引っ張ってしまい、やはり、馬は止まります。手綱を引っ張らない様にしようとすると、手元があがってしまい、手綱が緩むとやはり馬は止まってしまいます。この壁に数か月間悩みました。

先日、同じ馬(ダニーボーイ:通称ダニー)に乗っている女性の練習を見学していると、楽に発進されていました。おまけに、発進した直後に手綱を片手に持ち替えて、「お利口さん」といわんばかりに、余った手でダニーの首をポンポンと叩いているのです。身のこなしがしなやかで、上半身に余計な力が入っていないのが良く分かりました。乗っている人間の上半身が硬くなると、馬も走りにくいのです。それで、心の準備のためと急な発進を回避するために、掛け声をかけてみることにしました。馬に聞こえるように、何より自分自身に。「イチ、ニ、サン、シ」でポン(で合図を出す)という具合です。そして、今日、スムーズに発進が出来るようになったのです!
この気持ち、子供の頃に、補助車を外してはじめて自転車に乗れた時と同じような感動でした。

9 月 10 日, 2017

大腸smがん(ガイドラインどおりにならない時もある)

大腸粘膜の層構造です。初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。

がんの深さが①までであれば内視鏡治療を選択します。
がんの深さが③④⑤まで及んでいれば(シェーマの黄色のラインより下)、外科手術が必要です。

②(粘膜下層)にがんが浸潤していた場合、粘膜筋板から1,000μm(=1mm)までの深さであれば、内視鏡治療で良いとされています。1,000μm以上あければリンパ節転移の可能性が10%程度あるため、手術が検討されます。

先日、60代男性に大腸ポリープ切除をおこなったところ、smがんと診断されました。ポリープ切除によって完全にがんは取り切れていたのですが、粘膜筋板からがんの最深部までの距離が2,000μm(=2mm)ありました。内視鏡治療の基準より深くがんが浸潤しているため、リンパ節郭清の目的で外科手術を依頼しました。                             

【その後】外科で詳細に検討されました。まず、CT検査でリンパ節転移が無いことが確認されました。病変が肛門に近かかったため、リンパ節郭清をすると肛門機能障害を来す可能性が問題になりました。その結果、ガイドラインには従わず、厳重フォローアップの方針となりました。診療の標準化のために、ほとんどの疾患にガイドラインが設けてあります。今回のように、あえてガイドラインから外れた治療法を選択することはとても勇気がいることです。親身に患者さんのことを考えてくださった外科医に心から感謝しています。患者さんにとっても、手術が回避出来て良かったです。

8 月 30 日, 2017

医療の話  ベロトキシン(腸管出血性大腸菌)

楽しいBBQ!1982年、アメリカとカナダでハンバーガーが原因となった食中毒を契機に、腸管出血性大腸菌が発見されました。この時、O-157からベロトキシンが産生されていることがわかったのです。日本では、1996年大阪堺市でO-157による食中毒が集団発生し、数人の方が亡くなられています。

【80代女性】
強い腹痛、下痢、下血にて近医からの紹介で当院を受診されました。大腸カメラをおこなうと、直腸とS状結腸に、びらんや浮腫が規則性を持たないで混在していました。「規則性が無い」というところがポイントで、細菌性腸炎が最も疑われる所見でした。数日後、便培養検査から腸管出血性大腸菌O-26が検出され、ベロトキシン(VT1)が確認されました。その後の経過は良好でした。ただし、腸管出血性大腸菌溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすと、命を落とすこともあります。

ベロトキシンを持つ腸管出血性大腸菌はそのほとんどがO-157ですが、まれにやO-26やO-111の場合もあります。3類届け出感染症ですので、私も保健所に届けました。

北九州市における腸管出血性大腸菌の届け出数は、以下の通りでした。
平成26年 46名(8月26名)
平成27年 60名(8月37名)
平成28年 19名(8月6名)
注目すべき点は、8月に約半数が集中していることです。
夏休みにBBQなどを楽しむ際は、生肉の取り扱いに十分注意してください。

8 月 20 日, 2017

医療の話  急性肝炎→肝不全→肝移植術→生還

移植術中。
【30代の男性】
1週間以上続く強度の食欲低下吐き気を訴えて来院されました。嘔吐や下痢は無く、腹痛もありません。発熱もありません。通常の胃腸炎らしくないのです。しかし、症状は深刻な様子でした。急性肝炎を疑い、血液検査をおこなった結果、著しい肝機能障害が確認されました。直ちに大学病院に入院となりましたが、入院後も肝不全状態は改善せず、移植術施行病院へ転院となりました。タイミング良くマッチングされた肝臓が提供され、移植術がおこなわれました。術後経過も良く、1ヶ月後には退院されました。なお、肝炎の原因は特定できなかったようです。

今回、私は最初に一度診察しただけで、よもや肝移植術になろうとは想像だにしていませんでした。しかし、この人命救助のホンの一端を担えたことで、とても充実した気持ちになりました。

本邦では、2010年臓器移植法が改正され、それまでは本人(脳死)の生前の書面による意思表示が必要であったものが、本人の意思が不明な場合には、家族の承諾で臓器が提供できるようになり、移植術が飛躍的に増えました。肝不全(あるいは劇症肝炎)からの肝移植術も年間40例ほど施行されています。

臓器移植法が改正される前に、肝臓移植になった患者さんを担当したことがありましたが、肝臓の提供者を血縁者からつのり、保険適応の面でも十分整備されていなかったため、資金集めに、患者さんのご家族の苦労は大変なものでした。今回は、直ぐに臓器提供があり、医療費もすべて保険診療でカバー出来ています。現在の日本の移植医療は良く整備されています。

8 月 10 日, 2017

3次除菌とペニシリンを使わない除菌ー8年間のまとめ

ピロリ菌見つけました!胃潰瘍や胃がんの大きな要因であるピロリ菌感染ですが、除菌治療によってそれらを予防することが可能です。1次除菌の成功率は90%程度です。もし、不成功であれば、2次除菌を受けます。2次除菌の成功率も90%程度なので、99%の方が除菌することが出来ます

【3次除菌】
なかには、1次除菌も2次除菌も不成功だった方もいらっしゃいます。当院ではこの方々に3次除菌をお勧めしています。3次除菌は保険診療ではないので(全額自費)受ける方は少ないです。開院以来8年間で3次除菌を受けた方は、6名でした。うち2名は未だ判定にみえていません。残りの4名は全員除菌出来ています。皆さん、粘り強く、3次除菌まで付き合ってくださいました。その忍耐力に敬意を表します。

【ペニシリンアレルギー】
1次除菌も2次除菌も抗生物質のペニシリンが入っています。ですから、ペニシリンにアレルギーのある方は使えません。そこで、当院ではペニシリンを用いない除菌療法も提供しています(保険外診療ですので、全額自費です)。開院以来8年間でこの除菌治療を受けた方は、6名でした。そして、6名全員が除菌に成功しています。諦めないで良かったですね。

*先日、開院8周年を迎えました。8年間の診療の証しになるようなものを考えていました。そこで、除菌治療のことを調べてみました。3次除菌を受けた方の100倍以上の方が、1次除菌か2次除菌を受けているわけです。そう考えると、この『3次除菌6名』は私にとって大事な数字です。

7 月 30 日, 2017

コールドポリペクトミー

ポリペクトミー(ポリープ切除術)は、スネアでポリープを把持した後に、通電して組織を熱変性で壊死させて切除するものです。
一方、近年行われるようになったコールドポリペクトミーは通電しません。通常のポリペクトミーが熱が発生するのに対して、熱が発生しないので、「コールド」ポリペクトミーと命名されました。
また、コールドポリペクトミーはがんを対象にしていません。良性の腺腫のうちに切除して、がんの芽を摘み取ってしまうのです。

太い血管は粘膜下層にはありますが、粘膜内には存在しません。コールドポリペクトミーは粘膜内で切除するために、粘膜下層で切除する従来のポリペクトミーよりも「後出血」のリスクが低いのです。

【写真上段】コールドポリペクトミーによって、完全にポリープが切除された写真です。中央に索状物が残っていますが、取り残しではありません。
【写真下段】同じくコールドポリペクトミーです。白いところがポリープです。切除後に強い水圧をかけることによって、切除断面をむくませています。こうすることによって、術後の止血効果が得られます。

*センナ(下剤)を長期に内服すると、大腸粘膜に色素沈着をきたしますが、心配はありません。

5mm大のポリープ切除直後

白いところがポリープです。
水をかけてむくませています。


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