7 月 20 日, 2017

フィッツヒュー・カーティス 症候群

お腹が痛い!「症候群」は、その病態を最初に発見した人の名前を付けることが一般的です。
フィッツヒュー医師とカーティス医師がそれぞれ、女性の性感染症による腹痛を報告したのが最初で、この名前が付きました。
現在では、クラミジア(等)感染症による骨盤周囲炎と同意語になっています。

【症例】20代女性
強い右上腹痛のために来院されました。嘔吐、下痢はありません。発熱もありません。診察では、腸雑音に異常は無かったのですが、打診(中指をもう一方の中指でトントンと叩くやつです)すると、強く痛みを訴えられました。痛みは広範囲で、部位を特定できませんでした。触診上、お腹は柔らかく、腹膜炎の可能性はなさそうでした。血液検査では、白血球数は正常で、白血球の成分も正常でした。エコー検査では胆石は認めませんでした。

ここまでで一旦頭の中を整理してみました。
① 腹痛ではあるけれど、胃腸症状は無い。こういった場合はむしろ要注意である。虫垂炎、尿管結石、お腹の血管の閉塞、などいろいろ考えておかなければならない。白血球が増えていないので、虫垂炎ではなさそうだ。血尿の訴えはなく、尿管結石も考えにくい。不整脈がないことから血栓が詰まる可能性は低そうだ。
② 強い痛みを訴えている割には、診察上、異常所見は認めない。
③ 女性の腹痛は子宮や卵巣が原因の可能性もある。

そこで、性感染症の可能性をご本人に説明し、クラミジア抗体を測定し、クラミジアに効果のある抗菌剤を処方することを了承して頂きました。
フィッツヒューカーティス症候群は、その激しい痛みのために、緊急手術になることが時々あります。この方も、非常に強い痛みでしたが、腹膜炎の所見はなく、落ち着いて診察が出来ました。なお、クラミジアに感染しても白血球は増えないことが多いのです。

後日、来院された時は、腹痛はおさまっていました。クラミジア抗体が上昇していることを説明し、産婦人科医にその後の治療をお願いしました。

【余談】三十数年前、医師国家試験に備えて、数多くの症候群を暗記しました。フィッツヒューカーティス症候群は無かったですね。

7 月 11 日, 2017

8周年を迎えて

7月11日で8才になりました!早いもので、本日、開院8周年を迎えることが出来ました。これもひとえに、皆様が当院をご利用して頂けるからこそであり、厚くお礼申し上げます。有り難うございました。
そして、いつも一生懸命に患者さんに接してくれる受付の皆さん、看護師さん、助手さん、有り難うございます。正確で確実な仕事ぶりに感謝しています。

この1年間で診療上の一番大きな変化は「コールドポリペクトミー」を取り入れたことです。当初は、通電しないで切除することに不安が残っていたのですが、通電しない方が粘膜下層の深い所にある血管に影響がないことから、むしろ安全であることに納得し、今では積極的に実施しています。実際のところ、まだ一度も後出血をおこしていません。

昨年夏にクリニックの外壁を再塗装しました。隣にコンビニが開店し、クリニックの外壁の汚れが目立っていたため、思い切ってキレイに塗り直して頂きました。不思議なもので、クリニックがきれいになっただけで、新たな気分で頑張ろうという意欲が湧いてきます。

開院9年目に入りますが、これからも一人一人の患者さんに集中して診療にあたる所存です。どうか、皆様、中野胃腸クリニックを今後ともよろしくお願いいたします。

6 月 30 日, 2017

慢性の咳 その咳は何時頃に出ますか?

自分自身が辛い上に、周囲に気を遣う慢性の咳。慢性の咳に咳き込むとツライものです。ついてまとめてみました。

【時間帯による特徴】
昼間:逆流性食道炎 会話の最中にもよく咳が出ます。
夜 寝入りばな:風邪の治りかけ
夜間・早朝:咳喘息
起床時:慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、COPD) 夜間に溜まった痰が排出されるためです。
咳が出やすい時間帯によって、ある程度診断がつきますので、皆さんも参考になさってください。

【急性/慢性】
急性:3週間以内
慢性:2か月以上
*3週間~2か月:遷延性といいます。
感染症による咳は、結核を除けばほとんどが2か月以内です。「百日咳」は感染症ですが、100日(2か月以上)も咳が続くわけです。

【湿性/乾性】
痰が絡んだ咳が湿性で、絡まなければ乾性です。感染症による咳は湿性のことが多いです。

6 月 20 日, 2017

ブログで診察(18) ウォーキング

いつものブログ先生です。体のチョッとした不調や気になる症状、一度、医師に聞いてみたかったことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

【質問】生活習慣病の治療の一環として、ウォーキングを勧められました。具体的にはどのようにしたらいいですか?(50代 女性)

【答】ウォーキングは是非実行してください。
生活習慣病(肥満、高血圧、糖尿病、等)を改善するために、あるいは予防するためにウォーキングを始める方が多いとおもいます。ウォーキングについて、幾つか説明しましょう。なお、残念ながら、高コレステロール血症はウォーキングなどの運動による効果は認められていません。

① 上半身も有効に使いましょう。
手を大きく振って歩くことで、運動量がふえます。2本のポールを持って歩く「ノルディックウォーキング」も運動量を20%程度増やします。上半身も使うことで、効率の良いトレーニングになります。

② 1週間に60分。これだけで大丈夫です。
以前は、運動を始めて15分経過した時点で、やっと脂肪が燃焼し始めるので、30分ぐらいは続けて運動しないと意味が無いと考えられていました。私もこのように説明してきました。しかし、最近では、10分3回でも30分連続の運動とほぼ同じ効果があることが分かっています。日頃からチョコチョコ運動して、1週間の合計が60分になれば十分です。

③ 心拍数が100~110程度が目安です。
軽く汗ばむ程度の運動が適切です。いきなり、強度の負荷をかけると、筋肉や関節を痛めることになりかねません。

④糖尿病の方は食後30~60分後の運動が効果的です。
血糖値の上がる時間帯に合わせて運動することで、過剰な食後高血糖が改善されます。

6 月 10 日, 2017

大腸smがん 1,000μmと800μm

初期の大腸がんは内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。先日、ポリープ切除をおこなった患者さんがsmがんでした。
大腸粘膜の層構造です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜(粘膜固有層) ②粘膜下層 ③筋層(固有筋層) ④しょう膜下層 ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。【右図参照】

がんの深さが①にとどまっていれば内視鏡治療で完治します。絶対にリンパ節転移はありません。
がんの深さが③④⑤であれば、外科手術が必要です。

②(粘膜下層)にがんが浸潤していた場合、粘膜筋板から1,000μm(=1mm)までの深さであれば、内視鏡治療で良いとされています。1,000μm以上あければリンパ節転移の可能性が10%程度出てくるために手術をした方が安全です。

先日、大腸ポリープ切除をおこなった患者さんの結果がsmがんでした。粘膜筋板(粘膜と粘膜下層の境にある薄い筋肉の層)からのがんの最深部までの距離は800μmでした。わずか、200μmの差でポリープ切除だけでOKという結果でした。しかし、それ程、人の心は単純ではありません。

・追加切除術を受けなかったばっかりに、数年後に、再発したらどうしよう。

・追加切除する必要が無いのに、手術を受けて、やっぱりリンパ節転移が1つも無かったら、その結果を素直に喜べるだろうか。手術しなければ良かったと後悔しないだろうか。

どちらを選択しても、不安と後悔を完全に消し去ることは出来そうにありません。

治療の選択に悩むということは、それだけ選択肢があるわけで、ある意味幸せなことです。治療方が1つしかない、あるいは、治療方が無い場合だってあるのです。

この患者さんは手術をしないで、経過をみていくことを決心されました。

5 月 30 日, 2017

乗馬日記(10)  復帰

北九州市若松区の「若松乗馬倶楽部」に通うようになって、早や、1年8か月が過ぎました。上手に乗れるようになった時に、「そんなことも出来なかったのか。」と懐かしがってみたく乗馬日記を始めました。乗馬の最終目標は、「若松の海岸をさっそうと駆け抜ける」です。

乗馬は楽しいですよ。落馬から3か月経ちました。腰の痛みはほぼ消失しました。「やっぱり乗馬がしたい。」という気持ちが強いことを確かめて、乗馬を再開しました。何があっても自己責任です。覚悟の上です。
ブランクがあると、出来ていたことが出来ないものですね。頭絡を装着するのも一苦労です。こわごわと、並足、軽速歩をしばらく繰り返し、いよいよ駈足にチャレンジです。上手く出来ました。
現時点のチェックポイント
① 右足の鐙(あぶみ)の踏み込みが弱い。右足の踵を下げる。
② 手綱を持つ手の位置を動かさない(拳の位置が動くと馬は止まれのサインと思ってしまうから)。
③ 肘の動きを柔らかくする。
④ 両肩の位置を後ろに反らして、視線は必ず進行方向を見る(日頃から下を見て歩く習慣あり。日頃から気を付けよう!)。
⑤ 下半身はしっかり馬体に固定しつつ、上半身はリラックスする(これの逆は得意です。)
そして最後に、
⑥ 手綱はしっかり握っておく。手綱さえ離さなければ、落馬はしない。

チェックポイント多過ぎ!

5 月 20 日, 2017

腹部レントゲン写真で胃拡張が見えました(その2)。

息をとめて~。カシャッ!

以前、腹部レントゲン写真から胃拡張を診断したエピソードを紹介しました。今回も、また、同じ経験をしました。

70代の男性の方で、食事が摂れないから点滴を希望されて来院されました。腹部レントゲン写真を撮ってみると、腸のガスがお腹の真中から下に向かって凸状に弧を描くように圧排されていたのです。通常の腹部レントゲン写真では、胃は穹窿部のガス像が写る程度でほとんど存在感がありません。しかし、この写真は、「胃が張っている」という状況を感じました。

救急病院で腹部CT検査を受けて頂いたところ、胃の出口にがんが出来ていて、食物が胃から十二指腸へ進みにくくなっていたのです。そのために、胃がパンパンに張っていたのでした。
前回の経験が2回目だったので、今回が3回目です。1回目と2回目の間は10年以上開いていたのに、2回目と3回目の間は数か月です。そこも不思議でした。

5 月 10 日, 2017

「寄り添う」について考えてみました。

雪だるまも寄り添っています。最近、よく耳にする言葉のひとつに「寄り添う」というのがあります。
「被災者の皆さんに寄り添って・・・」
「患者さんの気持ちに寄り添う医療を・・・」
などです。

この「寄り添う」のイメージでは、
・そばにいて、話を聞いてあげる。
・少し離れたところから見守っていてあげる
・少しでも明るい気持ちになれるように、励ましてあげる。
等々でしょうか。

でも、「寄り添う」を行動に移すとなると難しいのです。
話を正確に理解することが、話を聞いてあげるということでもないのです。
見守っているだけでは、気付かれないかもしれません。
励ますことが本人の自信を失わせ、逆効果になることもあります。

寄り添ったつもりでも、相手が寄り添ってもらったと感じたのか分かりません。
どうすれば、「寄り添ってもらえた。」と感じてもらえるのでしょうか?

「寄り添う」って難しい。
それが出来れば、医療人として、人として、一歩前進なのでしょうね。

4 月 30 日, 2017

中性脂肪(脂肪酸)で知っておきたいこと。「α-リノレン酸」

しそってスゴイ!何となく悪者のイメージのある中性脂肪。確かに、ラード(豚油)やバターは沢山食べれば、血中の中性脂肪やコレステロールが上がります。ラードやバターが飽和脂肪酸であるのに対し、不飽和脂肪酸は体に良い脂肪酸です。今回は、不飽和脂肪酸についてお話します。

体内で合成できない脂肪酸(必須脂肪酸)、すなわち食物からしか摂れない脂肪酸は、リノール酸(ω6)とアラキドン酸(ω6)とα-リノレン酸(ω3)の3つです。(ω:オメガ)

ω9(オリーブ油、キャノーラ油)、ω6(ごま油、くるみ)、ω3(えごま油、亜麻仁(あまに)油、DHA、EPA)と、数字が少ない程、体に良いものと考えて良いでしょう。

そうすると、必須脂肪酸でω3でもあるα-リノレン酸は是非とも意識的に摂取しておきたいですよね。α-リノレン酸はえごま油、亜麻仁(あまに)油の他にしそもあります

昔の人は偉いですね。梅干しを作る時にしそを入れますものね。ちなみに、α-リノレン酸は、熱に弱いので、調理方法に気を付けてください。また、取り過ぎるとかえって体に悪いので、1日小さじ1杯程度で十分です。

【まとめ】
① 体内で合成できない脂肪酸がある(必須脂肪酸)。
② ω3系は、とっても体に良い脂肪酸である。

4 月 20 日, 2017

超音波(エコー)検査で胃拡張が見えました。

魚の群れを見つけたぞ!食欲不振で来院された70代の男性の方です。
3日間、ほとんど何も食べることが出来ないので、点滴を希望されて来院されました。お腹を打診すると、胃の辺りの音がなんか変です。超音波(エコー)検査で観察してみると、胃液をパンパンに貯めた胃が観察されました。通常、超音波(エコー)検査では、胃や腸のなどの管腔臓器は観察できません。エコーは空気を通さないからです。もともと、超音波(エコー)検査は、魚群探知機を人間の体に応用したものらしいです。ですから、水の中は良く見えるのです。普段見えないものが見えること自体が異常です。救急病院にお願いしてその日のうちに腹部CT検査を受けて頂き、十二指腸に狭窄があることが確認されました(狭窄の原因は、すい臓の腫瘤でした)。

以前、腹部レントゲン写真で胃拡張を診断したことをブログで紹介しましたが、今回は、超音波(エコー)検査で診断することが出来ました。


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