9 月 7 日, 2019

「開院10周年シーズン3」⑦虫垂開口部の異常からの新展開

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。

大腸カメラの終点は盲腸です。盲腸には、虫垂の開口部が観察されます。通常では、それは、おへそのようなイメージです。
盲腸と虫垂の位置関係を確認してください。
【50代の女性】

腹痛の精査目的で大腸カメラを受けてもらいました。盲腸の虫垂開口部が「つくし」のような突起物として観察されました。色素散布をして詳しく観察すると、ポリープではなく、大腸粘膜の突起でした。腸の中から観察すれば、通常は窪んでいるハズの虫垂が腸の中に反転しているのです。大腸憩室でも同じことは起こります。ただ、虫垂の反転を観たことが無かったので、CT検査で確認することにしました。CTで虫垂の反転が確認されましたが、同時にすい臓がんも見つかり、急きょ、総合病院に入院していただきました。なお、虫垂の反転の原因はわかりませんでした。

【30代女性】
下腹部痛の精査のために大腸カメラを受けてもらいました。盲腸にある虫垂開口部が少し赤く腫れていました。虫垂に炎症があるわけで、CT検査も受けて頂きました。CTで慢性的に腫れた虫垂を認めましたが(慢性虫垂炎)、虫垂がんの可能性もあるため、大学病院に手術をお願いしました。手術前のルーチン検査として受けた胃カメラで胃がんが見つかり、急きょ胃がんの手術が追加されました。

最近、虫垂開口部の異常から内臓のがんが見つかった患者さんが2名続きました。たまたまだと思いますが、その異常を「良くあることだし、様子を見よう。」と判断していたら、がんの発見は遅れたと思います。わずかな異常でも「見逃さない」「そのままにしない」ということの大切さを強く感じました。

【あとがき】開院10周年記念シーズン3は今回で終了いたします。ご愛読ありがとうございました。

9 月 6 日, 2019

「開院10周年シーズン3」⑥超音波(エコー)検査で胃拡張が見えました。

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。

魚の群れを見つけたぞ!食欲不振で来院された70代の男性の方です。
3日間、ほとんど何も食べることが出来ないので、点滴を希望されて来院されました。お腹を打診すると、胃の辺りの音がなんか変です。超音波(エコー)検査で観察してみると、胃液をパンパンに貯めた胃が観察されました。通常、超音波(エコー)検査では、胃や腸のなどの管腔臓器は観察できません。エコーは空気を通さないからです。もともと、超音波(エコー)検査は、魚群探知機を人間の体に応用したものらしいです。ですから、水の中は良く見えるのです。普段見えないものが見えること自体が異常です。救急病院にお願いしてその日のうちに腹部CT検査を受けて頂き、十二指腸に狭窄があることが確認されました(狭窄の原因は、すい臓の腫瘤でした)。

以前、腹部レントゲン写真で胃拡張を診断したことをブログで紹介しましたが、今回は、超音波(エコー)検査で診断することが出来ました。

9 月 5 日, 2019

「開院10周年シーズン3」⑤腹部レントゲン写真で胃拡張がみえました。 

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。

息をとめて~。カシャッ!嘔吐で来院された70代の男性の方です。
激しく吐いてしまうと、後は割と楽になるそうです。診察上は、柔らかいお腹で、腸雑音もイレウスを疑わせる音は聞こえませんでした。何か腑に落ちないものを感じたので、腹部レントゲン写真を撮ってみました。そうすると、腸のガスがお腹の真中から下に向かって凸状に弧を描くように圧排されていたのです。通常の腹部レントゲン写真では、胃は穹窿部のガス像が写る程度でほとんど存在感がありません。しかし、この方の写真は、「胃が張っている」という存在感を強く感じました。
救急病院にお願いしてその日のうちに腹部CT検査を受けて頂き、十二指腸水平脚に狭窄があることが確認されました(狭窄の原因は、悪性疾患の十二指腸への転移でした)。

勤務医だった頃に、一度だけ同じような腹部レントゲン写真を見たことがありました。その時は、十二指腸水平脚の粘膜内血腫による狭窄が原因でした。珍しい症例だったので、学会で発表しました。今回はその経験が生かされました。

研修医だった時に、消化器内科の部長先生が、立位と臥位の腹部レントゲン写真の写真を見比べて、胃のガス像の形が同じだったら、それは「胃が硬い」ということだから、スキルス胃癌も考えていた方が良いよ。と教えてもらいました。『レントゲン写真だけでスキルス胃癌を診断してしまうなんて、何てスゴイ先生なんだ。』と感動しました。それ以来、腹部レントゲン写真をみる時は、まず胃の辺りをみる習慣がついてしまったのです。

9 月 4 日, 2019

「開院10周年シーズン3」④PTP包装シートの誤飲

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。

カメラの先端の透明フードに注目!平成29年に1名の方が錠剤をPTP包装シートも一緒に誤って飲んだ方がいらっしゃいました。
内視鏡で観察すると、PTP包装シートのとんがった角が食道粘膜の対角線上にしっかり突き刺さっていました。一旦、カメラを抜去し、カメラの先端に透明フードを装着し、再度、カメラを飲んでもらいました。PTP包装シートを把持鉗子でしっかり掴み、フード内に持ち込み、そのままの状態でカメラを抜去し無事にPTP包装シートを回収することが出来ました。

もし、フードを付けずに回収しようとすると、食道に縦に深い傷が入ります。そればかりか、食道入口部は生理的に狭いので、そこで引っかかると、にっちもさっちもいかなくなります。非常に危険なのです。

一見、何の変哲もないフードですが、適度に柔らかく、先端が斜めにカットしてあるため、カメラの挿入が楽におこなえます。大きなものも回収できるように径がカメラの直径よりも大きく作られています。完成度の高いフードだとしみじみと思います。

【参考までに】PTP包装シートは、誤飲を防ぐために、ミシン目が縦か横にしか入っていません。決して1錠ずつには出来ない様になっているのです。ですから、わざわざハサミでシートを切らないでください。

9 月 3 日, 2019

「開院10周年 シーズン3」③虫垂がん

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。

虫垂の位置を確認してください。① 虫垂切除しているのに虫垂がんが見つかった。
② 進行した虫垂がんでも大腸カメラでは見つけられなかった。

今回は、2人の虫垂がんのお話です。

① 70代の方の話です。
若い頃に虫垂炎で手術を受けています。ですから、虫垂は無いわけです。最近、右の下腹部(虫垂のあったあたり)が痛むため、大腸カメラを受けて頂きました。虫垂口が出べそのように隆起し、そのてっぺんに、辺縁が不整で、扁平な10mm大のポリープを認めました。生検でがんと診断されたため、総合病院外科に転院となりました。
この方の場合、虫垂切除を受けていたことで虫垂の開口部が出べその様な形になり、大腸カメラでがんが観察出来たと思います。通常は、虫垂の中は観察出来ませんから。
人生、何が幸いするかわかりません。

② 60代の方の話です。
右下腹部痛(虫垂のあるあたり)のために来院されました。触診でしこりを触れましたので、エコーでみてみました。そうすると、イモ虫の様に虫垂が腫れているのが観察されました。そこで、近くの総合病院でCT検査を受けて頂き、虫垂がんと診断されました。手術の前に、大腸カメラが実施されましたが、虫垂口には何ら異常は無かったそうです。
触診の重要性を改めて実感した次第です。

9 月 2 日, 2019

「開院10周年シーズン3」②白血病

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。

採血風景です。一昨年と昨年に、1名ずつ(合計2名)の方が、当院の受診をきっかけに白血病と診断されました。当院を受診される方が大体、1年間に1万人ですので、確率的には0.01%といったところでしょうか。

1人は20代の初診の方で、良くある「風邪症状」で来院されました。喉も腫れていないし、首のリンパ節も腫れていません。呼吸音も問題ありません。ただ、「以前、健診で白血球が多いと言われたことがある。」という患者さんの訴えが気になりました。そこで、念のために、末梢血液(白血球、赤血球、血小板数)を調べてみたのです。その結果、異常に白血球が増えていました。バイ菌が体に入った時の増え方とは、ひと桁違っています。直ぐに、総合病院の血液内科に連絡し、入院をお願いしました。(現在、お元気です。)

もう一人は70代の方で、毎月1回、糖尿病で通院しておられました。定期の通院日に来院されましたが、数日前から体調がすぐれないとのことでした。明らかに顔色が悪く、生気がありません。いつもは、血糖などの糖尿病の項目だけチェックしているのですが、末梢血液も調べてみました。その結果、白血球、赤血球、血小板数とも著しく少なくなっていました。特に、血小板数は、正常下限の10分の1になっていました。直ぐに、総合病院の血液内科に連絡し、入院をお願いしました。(現在も療養中です。)

1人目の方からは、初診の患者さんには、何が隠れているかわからない怖さを痛感しました。患者さんの訴えを良く聞くことの大事さも再認識させられました。診察室に何でも話せるムードを漂わせておかなくてはいけません。患者さんの話をさえぎるのは勿論NGですが、「あなたのために、充分な時間をとっています。」と感じて頂けることが必要だなと思いました。

2人目の方からは、いつもの平時の診察こそが大事であることを思い知らされました。些細な異常をいち早く察知するためには、平時の時の入念な全身チェックが必要です。日頃の診療レベルを上げなければいけないと思いました。

限られた時間の中では、つい、定型的な診察に流されがちです。患者さんの訴えも「不定愁訴」として片付けてしまうことがあります。その結果、重大な病気を見落とさないように、日々、精進してまいります。

9 月 1 日, 2019

「開院10周年シーズン3」①大腸smがん

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。日常生活においては、思いがけないことが起こることがあります。また、検査や治療においても、予期せぬ結果を招くことがあります。今回のシリーズでは「アクシデント」や「偶然」がもたらしたお話です。
初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。

smがんが内視鏡治療だけで大丈夫と言えるためには、がんの最深部が粘膜筋板から1,000μm(=1mm)未満であること以外にもいくつかの条件があります(大腸がん治療ガイドライン)。
① 高・中分化型のがんであること(おとなしいがんという意味です)
② 血管やリンパ管へのがんの浸潤がないこと
③ 最深部でのがん細胞の散らばり具合が低いこと

これらの条件をすべて満たせば、smがんであっても、がん細胞のリンパ節転移はほとんどないことが確認されており、内視鏡治療で完結してよいことになっています。しかし、ひとつでも条件を満たさなければ、外科的手術をするべきです。

先日、50歳代の患者さんで大腸ポリープ切除をおこなったところ、smがんであることが判明しました。ガイドラインの内視鏡治療の適応条件はすべてクリアしていましたが、ご本人の希望により、追加の外科的手術を受けて頂きました。その結果、意外にも所属リンパ節にがんの転移が1か所見つかったのです。もし、内視鏡治療だけで終了していれば、リンパ節に転移していたがんが数年後には大腸がんの再発を来していたと思います。考えただけでぞっとしました。医学には例外がつきものですね。

結局、内視鏡治療というのは「摘除生検」にしかすぎないのです。完全にがんが取り切れたと思っても、見えない所のことは判らないのです。内視鏡治療を選択した場合は、厳重な経過観察が必要であることを再認識しました。

あとがき】smがんは内視鏡治療か、外科切除か、常に悩ましいですね。原則、『大腸癌治療ガイドライン』に則って治療方針を決めるわけですが、この方の様に、ガイドラインに逆らって手術を選択したことが正解ということもあるわけです。リンパ節転移が1個でもあれば、癌の病期はステージⅠから一気にステージⅢに上がります。ステージⅠであれば、局所切除だけでいいのですが、ステージⅢであれば、所属リンパ節の郭清および術後の抗がん剤投与(6か月間)が一般的です。治療内容も大きく変わりますし、5年生存率も違います。当院では、smがんで念のために追加切除術を受けて、リンパ節転移が見つかったのはこの方を含め2人いらっしゃいます。追加切除を受けるか否か、毎回、迷います。

8 月 11 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑪ネフローゼ症候群  

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

足がむくんだ!70代男性
ハッキリとした自覚症状は無く、何となく元気が無いとのこと。診察では特に異常はありません。むくみも認めませんでした。精査のために血液検査を受けてもらったところ、低蛋白血症、低アルブミン血症を認めました。尿検査はしていません。悪性疾患の存在を疑い、大学病院に精密検査を依頼しました。その結果、ネフローゼ症候群と診断されました。ネフローゼ症候群とは尿に大量の蛋白が排泄される原因不明の病気です。

紹介する際に、ネフローゼ症候群のことはまったく考えていませんでした。なぜ、診断出来なかったのか、成書を読みながら振り返ってみました。
❶ネフローゼ症候群の1/4は浮腫を来さない。
❷ネフローゼ症候群は20才未満が65%と圧倒的に多いが、70歳以上にも%程度と少ないながらも報告はある。
ネフローゼ症候群イコール「むくむ」「若い人の病気」という固定概念にとらわれていたのですね。むくみの無い高齢者でもネフローゼ症候群はあり得るのです。ただ、その確率が低いということです。

低蛋白血症(低アルブミン血症)をみたら、
① 摂取不足(低栄養)か吸収不良が無いか。
② 蛋白が尿から漏れていないか(ネフローゼ症候群)、便から漏れていないか(蛋白漏出性胃腸症)。
③ 慢性の炎症(自己免疫疾患、他)や悪性腫瘍が無いか。
④ 肝機能障害が無いか。
というふうに、順序立てて考えていけば、丁寧な問診(きちんと食事はとれているのか、便の性状はどうか、など)と、簡単な血液と尿検査だけで診断が絞られてきます。今回の経験を明日からの診療に役立たせたいと思います。

開院10周年記念 シーズン2』は今回で終了いたします。ご愛読ありがとうございました。

8 月 10 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑩膵石(すいせき) 

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

スターフライヤーは北九州空港の飛行機です。
【50代男性】

慢性膵炎で当院に通院中の方です。腹痛などの症状は無いものの、膵酵素の異常高値が続くためCT検査を受けたところ、主膵管に膵石が見つかりました。(*主膵管とは、膵臓の真ん中を貫いている膵液の通る管です。膵臓で作られた膵液はこの管を通って十二指腸に流れていきます。)
大学病院の治療方針は内科医、外科医ともに、「膵石による症状が出たら、手術を検討する」という結論でした。別の病院でも診て頂いたのですが、まったく同じ回答でした。内視鏡治療の選択肢はありませんでした。
ご本人は「悪くなるまで待つというのは性に合わない。」と、この治療方針に納得されませんでした。
そこで、症状が無くても手術以外の方法で膵石を治療してくれる病院を探しました。その結果、内視鏡で膵石を取り除いてくれる病院が見つかり、九州から東京に出向くことになったのです。

ガイドラインでは、膵石に対する内視鏡治療は、原則、疼痛を認める症例を対象としています。ただし、疼痛がない場合でも、膵萎縮が無く膵機能の改善が期待できる症例も適応とすると記されています。この一文が、患者さんにピタリ当てはまりました。

私が、東北地方の病院に勤務していた頃のことです。膵癌の患者さんの手術を外科に依頼しましたが、血管走行の異常から、手術は出来ないと判断されました。そこで、特殊な手術方法の論文を見つけ、その論文を書いた東京の先生に患者さんをお願いしたのです。(無事手術を終えて、帰ってこられました。)
その時、自分の勤めている病院だけで判断しないで、もっと広い視野で治療を選択出来ることに気付いたのです。今回はこの経験が生かされました。

8 月 9 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑨フィッツヒュー・カーティス 症候群 

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

お腹が痛い!「症候群」は、その病態を最初に発見した人の名前を付けることが一般的です。
フィッツヒュー医師とカーティス医師がそれぞれ、女性の性感染症による腹痛を報告したのが最初で、この名前が付きました。
現在では、クラミジア(等)感染症による骨盤周囲炎と同意語になっています。

【症例】20代女性
強い右上腹痛のために来院されました。嘔吐、下痢はありません。発熱もありません。診察では、腸雑音に異常は無かったのですが、打診(中指をもう一方の中指でトントンと叩くやつです)すると、強く痛みを訴えられました。痛みは広範囲で、部位を特定できませんでした。触診上、お腹は柔らかく、腹膜炎の可能性はなさそうでした。血液検査では、白血球数は正常で、白血球の成分も正常でした。エコー検査では胆石は認めませんでした。

ここまでで一旦頭の中を整理してみました。
① 腹痛ではあるけれど、胃腸症状は無い。こういった場合はむしろ要注意である。虫垂炎、尿管結石、お腹の血管の閉塞、などいろいろ考えておかなければならない。白血球が増えていないので、虫垂炎ではなさそうだ。血尿の訴えはなく、尿管結石も考えにくい。不整脈がないことから血栓が詰まる可能性は低そうだ。
② 強い痛みを訴えている割には、診察上、異常所見は認めない。
③ 女性の腹痛は子宮や卵巣が原因の可能性もある。

そこで、性感染症の可能性をご本人に説明し、クラミジア抗体を測定し、クラミジアに効果のある抗菌剤を処方することを了承して頂きました。
フィッツヒューカーティス症候群は、その激しい痛みのために、緊急手術になることが時々あります。この方も、非常に強い痛みでしたが、腹膜炎の所見はなく、落ち着いて診察が出来ました。なお、クラミジアに感染しても白血球は増えないことが多いのです。

後日、来院された時は、腹痛はおさまっていました。クラミジア抗体が上昇していることを説明し、産婦人科医にその後の治療をお願いしました。

【余談】三十数年前、医師国家試験に備えて、数多くの症候群を暗記しました。フィッツヒューカーティス症候群は無かったですね


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