9 月 20 日, 2017

乗馬日記(11)  駈足(かけあし)発進

カッコイイ!北九州市若松区の「若松乗馬倶楽部」に通うようになって、丸2年が過ぎました。上手に乗れるようになった時に、「そんなことも出来なかったのか。」と懐かしがってみたく乗馬日記を始めました。乗馬の最終目標は、「若松の海岸をさっそうと駆け抜ける」です。

長らく乗馬のブログが更新できませんでした。というのも、ある壁にぶつかって、筆が進まなかったのです。

常足(なみあし)または軽速歩(けいはやあし)の状態から駈足(かけあし)にするには、(あぶみ)で馬の腹をけって合図を出します。そうすると、馬は一歩目を踏み込むので大きく揺れた後に、加速度がかかります。そのために、自分の体が後ろにおいて行かれそうになります。落馬したくない気持ちから、合図を出すと同時に上半身が前屈みになってしまうのです。そうすると、馬は止まってしまいます。前屈みにならないように我慢すると、手綱(たづな)を引っ張ってしまい、やはり、馬は止まります。手綱を引っ張らない様にしようとすると、手元があがってしまい、手綱が緩むとやはり馬は止まってしまいます。この壁に数か月間悩みました。

先日、同じ馬(ダニーボーイ:通称ダニー)に乗っている女性の練習を見学していると、楽に発進されていました。おまけに、発進した直後に手綱を片手に持ち替えて、「お利口さん」といわんばかりに、余った手でダニーの首をポンポンと叩いているのです。身のこなしがしなやかで、上半身に余計な力が入っていないのが良く分かりました。乗っている人間の上半身が硬くなると、馬も走りにくいのです。それで、心の準備のためと急な発進を回避するために、掛け声をかけてみることにしました。馬に聞こえるように、何より自分自身に。「イチ、ニ、サン、シ」でポン(で合図を出す)という具合です。そして、今日、スムーズに発進が出来るようになったのです!
この気持ち、子供の頃に、補助車を外してはじめて自転車に乗れた時と同じような感動でした。

9 月 10 日, 2017

大腸smがん(ガイドラインどおりにならない時もある)

大腸粘膜の層構造です。初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。

がんの深さが①までであれば内視鏡治療を選択します。
がんの深さが③④⑤まで及んでいれば(シェーマの黄色のラインより下)、外科手術が必要です。

②(粘膜下層)にがんが浸潤していた場合、粘膜筋板から1,000μm(=1mm)までの深さであれば、内視鏡治療で良いとされています。1,000μm以上あければリンパ節転移の可能性が10%程度あるため、手術が検討されます。

先日、60代男性に大腸ポリープ切除をおこなったところ、smがんと診断されました。ポリープ切除によって完全にがんは取り切れていたのですが、粘膜筋板からがんの最深部までの距離が2,000μm(=2mm)ありました。内視鏡治療の基準より深くがんが浸潤しているため、リンパ節郭清の目的で外科手術を依頼しました。                             

【その後】外科で詳細に検討されました。まず、CT検査でリンパ節転移が無いことが確認されました。病変が肛門に近かかったため、リンパ節郭清をすると肛門機能障害を来す可能性が問題になりました。その結果、ガイドラインには従わず、厳重フォローアップの方針となりました。診療の標準化のために、ほとんどの疾患にガイドラインが設けてあります。今回のように、あえてガイドラインから外れた治療法を選択することはとても勇気がいることです。親身に患者さんのことを考えてくださった外科医に心から感謝しています。患者さんにとっても、手術が回避出来て良かったです。

8 月 30 日, 2017

医療の話  ベロトキシン(腸管出血性大腸菌)

楽しいBBQ!1982年、アメリカとカナダでハンバーガーが原因となった食中毒を契機に、腸管出血性大腸菌が発見されました。この時、O-157からベロトキシンが産生されていることがわかったのです。日本では、1996年大阪堺市でO-157による食中毒が集団発生し、数人の方が亡くなられています。

【80代女性】
強い腹痛、下痢、下血にて近医からの紹介で当院を受診されました。大腸カメラをおこなうと、直腸とS状結腸に、びらんや浮腫が規則性を持たないで混在していました。「規則性が無い」というところがポイントで、細菌性腸炎が最も疑われる所見でした。数日後、便培養検査から腸管出血性大腸菌O-26が検出され、ベロトキシン(VT1)が確認されました。その後の経過は良好でした。ただし、腸管出血性大腸菌溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすと、命を落とすこともあります。

ベロトキシンを持つ腸管出血性大腸菌はそのほとんどがO-157ですが、まれにやO-26やO-111の場合もあります。3類届け出感染症ですので、私も保健所に届けました。

北九州市における腸管出血性大腸菌の届け出数は、以下の通りでした。
平成26年 46名(8月26名)
平成27年 60名(8月37名)
平成28年 19名(8月6名)
注目すべき点は、8月に約半数が集中していることです。
夏休みにBBQなどを楽しむ際は、生肉の取り扱いに十分注意してください。

8 月 20 日, 2017

医療の話  急性肝炎→肝不全→肝移植術→生還

移植術中。
【30代の男性】
1週間以上続く強度の食欲低下吐き気を訴えて来院されました。嘔吐や下痢は無く、腹痛もありません。発熱もありません。通常の胃腸炎らしくないのです。しかし、症状は深刻な様子でした。急性肝炎を疑い、血液検査をおこなった結果、著しい肝機能障害が確認されました。直ちに大学病院に入院となりましたが、入院後も肝不全状態は改善せず、移植術施行病院へ転院となりました。タイミング良くマッチングされた肝臓が提供され、移植術がおこなわれました。術後経過も良く、1ヶ月後には退院されました。なお、肝炎の原因は特定できなかったようです。

今回、私は最初に一度診察しただけで、よもや肝移植術になろうとは想像だにしていませんでした。しかし、この人命救助のホンの一端を担えたことで、とても充実した気持ちになりました。

本邦では、2010年臓器移植法が改正され、それまでは本人(脳死)の生前の書面による意思表示が必要であったものが、本人の意思が不明な場合には、家族の承諾で臓器が提供できるようになり、移植術が飛躍的に増えました。肝不全(あるいは劇症肝炎)からの肝移植術も年間40例ほど施行されています。

臓器移植法が改正される前に、肝臓移植になった患者さんを担当したことがありましたが、肝臓の提供者を血縁者からつのり、保険適応の面でも十分整備されていなかったため、資金集めに、患者さんのご家族の苦労は大変なものでした。今回は、直ぐに臓器提供があり、医療費もすべて保険診療でカバー出来ています。現在の日本の移植医療は良く整備されています。

8 月 10 日, 2017

3次除菌とペニシリンを使わない除菌ー8年間のまとめ

ピロリ菌見つけました!胃潰瘍や胃がんの大きな要因であるピロリ菌感染ですが、除菌治療によってそれらを予防することが可能です。1次除菌の成功率は90%程度です。もし、不成功であれば、2次除菌を受けます。2次除菌の成功率も90%程度なので、99%の方が除菌することが出来ます

【3次除菌】
なかには、1次除菌も2次除菌も不成功だった方もいらっしゃいます。当院ではこの方々に3次除菌をお勧めしています。3次除菌は保険診療ではないので(全額自費)受ける方は少ないです。開院以来8年間で3次除菌を受けた方は、6名でした。うち2名は未だ判定にみえていません。残りの4名は全員除菌出来ています。皆さん、粘り強く、3次除菌まで付き合ってくださいました。その忍耐力に敬意を表します。

【ペニシリンアレルギー】
1次除菌も2次除菌も抗生物質のペニシリンが入っています。ですから、ペニシリンにアレルギーのある方は使えません。そこで、当院ではペニシリンを用いない除菌療法も提供しています(保険外診療ですので、全額自費です)。開院以来8年間でこの除菌治療を受けた方は、6名でした。そして、6名全員が除菌に成功しています。諦めないで良かったですね。

*先日、開院8周年を迎えました。8年間の診療の証しになるようなものを考えていました。そこで、除菌治療のことを調べてみました。3次除菌を受けた方の100倍以上の方が、1次除菌か2次除菌を受けているわけです。そう考えると、この『3次除菌6名』は私にとって大事な数字です。

7 月 30 日, 2017

コールドポリペクトミー

ポリペクトミー(ポリープ切除術)は、スネアでポリープを把持した後に、通電して組織を熱変性で壊死させて切除するものです。
一方、近年行われるようになったコールドポリペクトミーは通電しません。通常のポリペクトミーが熱が発生するのに対して、熱が発生しないので、「コールド」ポリペクトミーと命名されました。
また、コールドポリペクトミーはがんを対象にしていません。良性の腺腫のうちに切除して、がんの芽を摘み取ってしまうのです。

太い血管は粘膜下層にはありますが、粘膜内には存在しません。コールドポリペクトミーは粘膜内で切除するために、粘膜下層で切除する従来のポリペクトミーよりも「後出血」のリスクが低いのです。

【写真上段】コールドポリペクトミーによって、完全にポリープが切除された写真です。中央に索状物が残っていますが、取り残しではありません。
【写真下段】同じくコールドポリペクトミーです。白いところがポリープです。切除後に強い水圧をかけることによって、切除断面をむくませています。こうすることによって、術後の止血効果が得られます。

*センナ(下剤)を長期に内服すると、大腸粘膜に色素沈着をきたしますが、心配はありません。

5mm大のポリープ切除直後

白いところがポリープです。
水をかけてむくませています。

7 月 20 日, 2017

フィッツヒュー・カーティス 症候群

お腹が痛い!「症候群」は、その病態を最初に発見した人の名前を付けることが一般的です。
フィッツヒュー医師とカーティス医師がそれぞれ、女性の性感染症による腹痛を報告したのが最初で、この名前が付きました。
現在では、クラミジア(等)感染症による骨盤周囲炎と同意語になっています。

【症例】20代女性
強い右上腹痛のために来院されました。嘔吐、下痢はありません。発熱もありません。診察では、腸雑音に異常は無かったのですが、打診(中指をもう一方の中指でトントンと叩くやつです)すると、強く痛みを訴えられました。痛みは広範囲で、部位を特定できませんでした。触診上、お腹は柔らかく、腹膜炎の可能性はなさそうでした。血液検査では、白血球数は正常で、白血球の成分も正常でした。エコー検査では胆石は認めませんでした。

ここまでで一旦頭の中を整理してみました。
① 腹痛ではあるけれど、胃腸症状は無い。こういった場合はむしろ要注意である。虫垂炎、尿管結石、お腹の血管の閉塞、などいろいろ考えておかなければならない。白血球が増えていないので、虫垂炎ではなさそうだ。血尿の訴えはなく、尿管結石も考えにくい。不整脈がないことから血栓が詰まる可能性は低そうだ。
② 強い痛みを訴えている割には、診察上、異常所見は認めない。
③ 女性の腹痛は子宮や卵巣が原因の可能性もある。

そこで、性感染症の可能性をご本人に説明し、クラミジア抗体を測定し、クラミジアに効果のある抗菌剤を処方することを了承して頂きました。
フィッツヒューカーティス症候群は、その激しい痛みのために、緊急手術になることが時々あります。この方も、非常に強い痛みでしたが、腹膜炎の所見はなく、落ち着いて診察が出来ました。なお、クラミジアに感染しても白血球は増えないことが多いのです。

後日、来院された時は、腹痛はおさまっていました。クラミジア抗体が上昇していることを説明し、産婦人科医にその後の治療をお願いしました。

【余談】三十数年前、医師国家試験に備えて、数多くの症候群を暗記しました。フィッツヒューカーティス症候群は無かったですね。

7 月 11 日, 2017

8周年を迎えて

7月11日で8才になりました!早いもので、本日、開院8周年を迎えることが出来ました。これもひとえに、皆様が当院をご利用して頂けるからこそであり、厚くお礼申し上げます。有り難うございました。
そして、いつも一生懸命に患者さんに接してくれる受付の皆さん、看護師さん、助手さん、有り難うございます。正確で確実な仕事ぶりに感謝しています。

この1年間で診療上の一番大きな変化は「コールドポリペクトミー」を取り入れたことです。当初は、通電しないで切除することに不安が残っていたのですが、通電しない方が粘膜下層の深い所にある血管に影響がないことから、むしろ安全であることに納得し、今では積極的に実施しています。実際のところ、まだ一度も後出血をおこしていません。

昨年夏にクリニックの外壁を再塗装しました。隣にコンビニが開店し、クリニックの外壁の汚れが目立っていたため、思い切ってキレイに塗り直して頂きました。不思議なもので、クリニックがきれいになっただけで、新たな気分で頑張ろうという意欲が湧いてきます。

開院9年目に入りますが、これからも一人一人の患者さんに集中して診療にあたる所存です。どうか、皆様、中野胃腸クリニックを今後ともよろしくお願いいたします。

6 月 30 日, 2017

慢性の咳 その咳は何時頃に出ますか?

自分自身が辛い上に、周囲に気を遣う慢性の咳。慢性の咳に咳き込むとツライものです。ついてまとめてみました。

【時間帯による特徴】
昼間:逆流性食道炎 会話の最中にもよく咳が出ます。
夜 寝入りばな:風邪の治りかけ
夜間・早朝:咳喘息
起床時:慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、COPD) 夜間に溜まった痰が排出されるためです。
咳が出やすい時間帯によって、ある程度診断がつきますので、皆さんも参考になさってください。

【急性/慢性】
急性:3週間以内
慢性:2か月以上
*3週間~2か月:遷延性といいます。
感染症による咳は、結核を除けばほとんどが2か月以内です。「百日咳」は感染症ですが、100日(2か月以上)も咳が続くわけです。

【湿性/乾性】
痰が絡んだ咳が湿性で、絡まなければ乾性です。感染症による咳は湿性のことが多いです。

6 月 20 日, 2017

ブログで診察(18) ウォーキング

いつものブログ先生です。体のチョッとした不調や気になる症状、一度、医師に聞いてみたかったことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

【質問】生活習慣病の治療の一環として、ウォーキングを勧められました。具体的にはどのようにしたらいいですか?(50代 女性)

【答】ウォーキングは是非実行してください。
生活習慣病(肥満、高血圧、糖尿病、等)を改善するために、あるいは予防するためにウォーキングを始める方が多いとおもいます。ウォーキングについて、幾つか説明しましょう。なお、残念ながら、高コレステロール血症はウォーキングなどの運動による効果は認められていません。

① 上半身も有効に使いましょう。
手を大きく振って歩くことで、運動量がふえます。2本のポールを持って歩く「ノルディックウォーキング」も運動量を20%程度増やします。上半身も使うことで、効率の良いトレーニングになります。

② 1週間に60分。これだけで大丈夫です。
以前は、運動を始めて15分経過した時点で、やっと脂肪が燃焼し始めるので、30分ぐらいは続けて運動しないと意味が無いと考えられていました。私もこのように説明してきました。しかし、最近では、10分3回でも30分連続の運動とほぼ同じ効果があることが分かっています。日頃からチョコチョコ運動して、1週間の合計が60分になれば十分です。

③ 心拍数が100~110程度が目安です。
軽く汗ばむ程度の運動が適切です。いきなり、強度の負荷をかけると、筋肉や関節を痛めることになりかねません。

④糖尿病の方は食後30~60分後の運動が効果的です。
血糖値の上がる時間帯に合わせて運動することで、過剰な食後高血糖が改善されます。


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