Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

平成29年診療報告より(5) 大腸ポリープ

火曜日, 3 月 20th, 2018

大腸カメラってこんな感じです。平成29年に1,042名の方が大腸カメラを受けられました。そのうち、大腸ポリープ切除術を受けた方が186名いらっしゃいます。

【大腸ポリープの癌化率】
大腸ポリープ* の何%が癌化するのでしょうか。ポリープの大きさと癌化率の関係です。
1~5mm大:0.5%
6~10mm大:13.2%
11~20mm大:50.8%
21mm~:66.6%
大きくなればなるほど、癌になるリスクは大きくなるわけです**。ですから、あまり大きく育たないうちに、出来れば見つけ次第、ポリープ切除をしておくことが必要です。これらのデータを元に当院では積極的にポリープ切除をおこなっています。

【コールドポリペクトミーの導入(写真参照ください)】
通常のポリープ切除は、粘膜下に生理食塩水を局注し、ポリープを浮かせた後にスネアをかけ、通電することで焼灼切除しています。焼灼後に出来た粘膜の傷はクリップで縫合します。
一方、平成29年から導入したコールドポリペクトミーは、生理食塩水を局注せず、そのままスネア切除します。この際、通電もしません。一見、乱暴な治療に見えますが、粘膜の浅い所には、細い血管しかないため、重篤な出血は来しません。通電しないため、遅発性の出血のリスクは回避されます。当院では、通常のポリープ切除とコールドポリペクトミーをポリープの大きさや形によって適切に使い分けています。                                                                                                                                                                                                                                                                *大腸ポリープの85%は腺腫です。腺腫の癌化率について説明しています。
**今回提示したポリープの癌化率は広基性(Ⅰs)ポリープについてのデータです。

大腸ポリープ

コールドポリペクトミー

平成29年診療報告より(4) PTP包装シートの誤飲

土曜日, 3 月 10th, 2018

カメラの先端の透明フードに注目!平成29年に1名の方が錠剤をPTP包装シートも一緒に誤って飲んだ方がいらっしゃいました。
内視鏡で観察すると、PTP包装シートのとんがった角が食道粘膜の対角線上にしっかり突き刺さっていました。一旦、カメラを抜去し、カメラの先端に透明フードを装着し、再度、カメラを飲んでもらいました。PTP包装シートを把持鉗子でしっかり掴み、フード内に持ち込み、そのままの状態でカメラを抜去し無事にPTP包装シートを回収することが出来ました。

もし、フードを付けずに回収しようとすると、食道に縦に深い傷が入ります。そればかりか、食道入口部は生理的に狭いので、そこで引っかかると、にっちもさっちもいかなくなります。非常に危険なのです。

一見、何の変哲もないフードですが、適度に柔らかく、先端が斜めにカットしてあるため、カメラの挿入が楽におこなえます。大きなものも回収できるように径がカメラの直径よりも大きく作られています。完成度の高いフードだとしみじみと思います。

【参考までに】PTP包装シートは、誤飲を防ぐために、ミシン目が縦か横にしか入っていません。決して1錠ずつには出来ない様になっているのです。ですから、わざわざハサミでシートを切らないでください。

平成29年診療報告より(3) すい臓がん

水曜日, 2 月 28th, 2018

すい臓は120g程度の小さな臓器です。平成29年はすい臓がんの方が3名いらっしゃいました。
①60代女性 腹痛と背部痛にて来院。体重減少2kg。エコー検査で4cmの腫瘤が見つかりました。

②60代女性 腹痛と嘔気が続くため来院。CT検査で診断しています。

③70代男性 3日間食事がとれないため来院。エコー検査で胃拡張を認め、その原因を調べるためCTを施行し診断しています。

注意点
食事との関連の無い腹痛(鈍痛)のことが多いです。
積極的に造影CTをおこなうことが大事です。単純CTではすい臓がんは見つかりません。
手術できるのは1~2cm以下です。
すい臓がんによる死亡者数は、全部のがんの中で第4位と意外に多いです。

私見
特定健診や後期高齢者健診にすい臓の項目はありません。「健診で異常が無いからすい臓も大丈夫」とは言えないのです。
すい臓の病気はアミラーゼを測定することが一般的ですが、アミラーゼの半減期は2~4時間と短いため、急性期を過ぎると直ぐに正常値になってしまいます。急性すい炎をおこして翌日病院を受診した時に、まだすい臓に炎症があるにもかかわらず、血中のアミラーゼ値は正常ということがしばしば見受けられます。つまり、血液検査ではすい臓の病気は見つかりにくいのです。(むしろ、中途半端にアミラーゼの測定をしない方が良いと思います。)
すい臓の前面は漿膜に覆われていますが、後面は漿膜がありません。これが、すい臓がんの進行が速い一因と思います。すい臓は漿膜に完全には覆われていない”裸の臓器”なのです。漿膜はサランラップみたいなイメージです。

平成29年診療報告より(2) 原発性アルドステロン症

日曜日, 2 月 18th, 2018

高血圧症の5%程度に存在すると言われている「原発性アルドステロン症」。この病気の可能性のある患者さんが5名いらっしゃいました。

症例     アルドステロン        レニン       アルドステロン・レニン比
❶ 30代女性       291.9       0.9         324
❷ 50代男性    142.4       0.5        285
❸ 40代男性    121.8       0.6        203
④ 40代男性    155.2       0.7        221
❺ 30代男性    158.4       0.7        226
*原発性アルドステロン症のスクリーニング判定基準は、アルドステロンが120(pg/mL)以上かつアルドステロン・レニン比が200以上です。
レニン・アルドステロン系

この5人の方は皆さん大学病院で詳しく診て頂きました。その結果、原発性アルドステロン症と診断された方は、④番の方のみでした。ただし、④番の方も、副腎静脈採血が完全には遂行できなかったため腫瘍が見つけられず、降圧剤の内服治療となっています。

原発性アルドステロン症を早期に診断すれば、腫瘍を摘出することによって血圧は正常化し、降圧剤を飲み続ける必要が無くなります。早く発見すれば、高血圧症による障害も回避出来ます。ただし、アルドステロンを産生する副腎腫瘍は小さいため(1mm大のこともあります)、見つけにくいのです。

これからも、比較的若い方や急に血圧が上がった方などには積極的にレニン・アルドステロンを測定していこうと思います。

平成29年診療報告より(1) グループ2からグループ5へ

木曜日, 2 月 8th, 2018

「イチ、ニ、サン、シ、ゴー」胃カメラで採取してきた胃粘膜病変の診断に「グループ分類」がおこなわれます。
グループ1 正常
グループ2 腫瘍性か非腫瘍性か判断が難しい
グループ3 腺腫
グループ4 がんが疑わしい腫瘍
グループ5 がん
昨年(平成29年)生検でグループ2と診断された方で最終的にグループ5(がん)に診断が変わった方が1名いらっしゃいました。

この方は、胃の真ん中あたりに、小さなびらん(ただれ)がありました。特に悪性の印象は無かったのですが、「単発」という点が気になりました。一般的にはびらんはいくつか散在しているものです。生検ではグループ2と診断されました。3か月後の再検査でも、グループ2でしたが、さらに6カ月後に行った度目の検査で「グループ5」と診断されました。
その後、総合病院で早期胃がんの内視鏡治療を受けられました。
粘り強く、繰り返し検査を受けて良かったですね。

胃の生検組織から、透析患者さんであることを言い当てる病理の先生ってスゴい。

月曜日, 11 月 20th, 2017

毎日、顕微鏡とにらめっこです。50代女性】近医で、週3回の透析を受けています。萎縮性胃炎のために、当院で胃カメラをおこないました。白いブツブツが目立つために、粘膜の一部を採取し(生検)、病理検査をおこないました。
病理医のレポートは、『褐色の沈着物が認められ、これは、高リン血症治療薬である炭酸ランタンの可能性がある。この方は、透析を受けていませんか?』といった内容でした。

わずか1mm大の胃の生検組織から、内服中の薬を言い当て、その背景にある透析を受けていることまで想像出来るなんて、すごいと思いました。まるで、「名探偵コナン」みたいです。

文献を調べてみますと、炭酸ランタンは比較的新しい薬(2009年発売)で、高リン血症を治療するために、最近良く使われているようです。その主成分であるランタンが胃粘膜に沈着した報告は英文を含めても14人しかありませんでした。

実は、この病理の先生に大腸smがんを診て頂いた時、「大腸がん取り扱い規約」に則った理路整然としたレポートがとても気に入り、以来、当院の病理診断はすべてこの先生にお願いしています。先生は、こんな珍しい症例のこともちゃんと知っておられたわけで、日々、勉強なさっていることに改めて敬服した次第です。後日、先生に透析患者さんであることを伝えておきました。

虫垂開口部の異常からの新展開

月曜日, 10 月 30th, 2017

大腸カメラの終点は盲腸です。盲腸には、虫垂の開口部が観察されます。通常では、それは、おへそのようなイメージです。
盲腸と虫垂の位置関係を確認してください。
【50代の女性】

腹痛の精査目的で大腸カメラを受けてもらいました。盲腸の虫垂開口部が「つくし」のような突起物として観察されました。色素散布をして詳しく観察すると、ポリープではなく、大腸粘膜の突起でした。腸の中から観察すれば、通常は窪んでいるハズの虫垂が腸の中に反転しているのです。大腸憩室でも同じことは起こります。ただ、虫垂の反転を観たことが無かったので、CT検査で確認することにしました。CTで虫垂の反転が確認されましたが、同時にすい臓がんも見つかり、急きょ、総合病院に入院していただきました。なお、虫垂の反転の原因はわかりませんでした。

【30代女性】
下腹部痛の精査のために大腸カメラを受けてもらいました。盲腸にある虫垂開口部が少し赤く腫れていました。虫垂に炎症があるわけで、CT検査も受けて頂きました。CTで慢性的に腫れた虫垂を認めましたが(慢性虫垂炎)、虫垂がんの可能性もあるため、大学病院に手術をお願いしました。手術前のルーチン検査として受けた胃カメラで胃がんが見つかり、急きょ胃がんの手術が追加されました。

最近、虫垂開口部の異常から内臓のがんが見つかった患者さんが2名続きました。たまたまだと思いますが、その異常を「良くあることだし、様子を見よう。」と判断していたら、がんの発見は遅れたと思います。わずかな異常でも「見逃さない」「そのままにしない」ということの大切さを強く感じました。

睡眠薬に関する豆知識

日曜日, 10 月 22nd, 2017

今夜も眠れない。睡眠薬に関するいくつかの注意事項をまとめてみました。

❶睡眠薬は麻薬及び向精神薬取締法で規制されています。処方された薬を誰かに転売したり譲渡することは『犯罪』になります。
❷アモバンとデパスに限っては、これまで90日処方が可能でしたが、最近、30日までになりました。医療機関から不正な手段で入手する事例が増えたためだそうです。
❸睡眠薬はイメージほど依存性が強くありません。一度飲んだら、止められないということは無いのです。むしろ、精神安定剤(デパス、リーゼ、等)の方が依存性が強いです。
❹最近まで、アメリカ合衆国では、睡眠薬は一生で最大35日しか処方出来なかったそうです。その理由は、保険会社が睡眠薬の処方をなかなか認めないことと、薬の認可の権限を持つFDAがとても厳しかったためです。
❺睡眠薬は安全な薬です。大量に服薬しても命の危険はありません。私が救急病院に勤務していた頃、自殺企図で睡眠薬をたくさん飲んで救急車で運ばれてきても、スタッフは皆落ち着いていました。
❻睡眠薬を飲めば、直ちに眠くなるわけではありません。すべての用事を済ませて、「あとは薬を飲んで寝るだけ」となった状態が必要です。寝室は、真っ暗にし(豆電球もダメ)、テレビ、ラジオも消してください。

医療に関する話 膵石(すいせき)

土曜日, 9 月 30th, 2017

スターフライヤーは北九州空港の飛行機です。
【50代男性】

慢性膵炎で当院に通院中の方です。腹痛などの症状は無いものの、膵酵素の異常高値が続くためCT検査を受けたところ、主膵管に膵石が見つかりました。(*主膵管とは、膵臓の真ん中を貫いている膵液の通る管です。膵臓で作られた膵液はこの管を通って十二指腸に流れていきます。)
大学病院の治療方針は内科医、外科医ともに、「膵石による症状が出たら、手術を検討する」という結論でした。別の病院でも診て頂いたのですが、まったく同じ回答でした。内視鏡治療の選択肢はありませんでした。
ご本人は「悪くなるまで待つというのは性に合わない。」と、この治療方針に納得されませんでした。
そこで、症状が無くても手術以外の方法で膵石を治療してくれる病院を探しました。その結果、内視鏡で膵石を取り除いてくれる病院が見つかり、九州から東京に出向くことになったのです。

ガイドラインでは、膵石に対する内視鏡治療は、原則、疼痛を認める症例を対象としています。ただし、疼痛がない場合でも、膵萎縮が無く膵機能の改善が期待できる症例も適応とすると記されています。この一文が、患者さんにピタリ当てはまりました。

私が、東北地方の病院に勤務していた頃のことです。膵癌の患者さんの手術を外科に依頼しましたが、血管走行の異常から、手術は出来ないと判断されました。そこで、特殊な手術方法の論文を見つけ、その論文を書いた東京の先生に患者さんをお願いしたのです。(無事手術を終えて、帰ってこられました。)
その時、自分の勤めている病院だけで判断しないで、もっと広い視野で治療を選択出来ることに気付いたのです。今回はこの経験が生かされました。

大腸smがん(ガイドラインどおりにならない時もある)

日曜日, 9 月 10th, 2017

大腸粘膜の層構造です。初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。

がんの深さが①までであれば内視鏡治療を選択します。
がんの深さが③④⑤まで及んでいれば(シェーマの黄色のラインより下)、外科手術が必要です。

②(粘膜下層)にがんが浸潤していた場合、粘膜筋板から1,000μm(=1mm)までの深さであれば、内視鏡治療で良いとされています。1,000μm以上あければリンパ節転移の可能性が10%程度あるため、手術が検討されます。

先日、60代男性に大腸ポリープ切除をおこなったところ、smがんと診断されました。ポリープ切除によって完全にがんは取り切れていたのですが、粘膜筋板からがんの最深部までの距離が2,000μm(=2mm)ありました。内視鏡治療の基準より深くがんが浸潤しているため、リンパ節郭清の目的で外科手術を依頼しました。                             

【その後】外科で詳細に検討されました。まず、CT検査でリンパ節転移が無いことが確認されました。病変が肛門に近かかったため、リンパ節郭清をすると肛門機能障害を来す可能性が問題になりました。その結果、ガイドラインには従わず、厳重フォローアップの方針となりました。診療の標準化のために、ほとんどの疾患にガイドラインが設けてあります。今回のように、あえてガイドラインから外れた治療法を選択することはとても勇気がいることです。親身に患者さんのことを考えてくださった外科医に心から感謝しています。患者さんにとっても、手術が回避出来て良かったです。


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