Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

年齢が若いから胆石は無いだろう。と決めつけていました。

火曜日, 6 月 21st, 2016

先日、20代前半の女性で、胆石と総胆管結石による上腹部痛(心窩部痛)の患者さんがいらっしゃいました。年齢が若いから胆石はないだとう。と決めつけていたことで、診断までに遠回りをしてしまいました。

総胆管は肝臓と十二指腸をつなぐ管です。20代前半の女性で、食後に胃の辺りと背中が痛むために来院されました。2度目の診察で、胃カメラを受けて頂きましたが異常は見つかりませんでした。
胃薬で様子を見ていましたが、しばらくして、再び強い痛みが出たため、3度目の診察でエコー検査をおこない、胆石を確認しました。「まさか!」って感じでした。さらに、血液検査では、肝胆道系酵素が異常値を示していました。直ちに、大学病院を紹介し、CT、MRIなどの精密検査の結果、「胆のうと総胆管に結石あり」と診断されました。総胆管結石を内視鏡的に摘出した後に、胆のう摘出術が施行されました。

胆石症は「太った40代の女性」に多いということが定石です。太った(fatty)、40代(forties)、女性(female)といずれも『F』で始まるので覚えやすいのです。ところが、胆石・総胆管結石患者さんの男女比は1対1.2でさほど女性に多いわけではありません。50~60代にピークがあり、40代ではありません。「胆石は40代の女性に多い」という誤った概念を払しょくしなければなりません。

胆石・総胆管結石患者さんの15%は20代、30代であることから、決して、若年者にはまれというわけでもないのです。

実は、もうひとつ、反省しなければいけないことがあります。患者さんが、介護職だったため、きっと仕事のストレスが大きいだろうなあ。と勝手に想像していたのです。胃の痛みも『仕事のストレス』の要因が大きいと決めつけていました。

そういった点を反省しながら、カルテを見直していると、初診時に「背中も痛い」と記載しているではないですか! 胃潰瘍では背中は痛くなりません。胆石なら、右の肩甲骨あたりに痛みが放散することがしばしばあります。最初の出だしでつまずいていたのです。

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大腸smがん

水曜日, 5 月 25th, 2016

初期の大腸がんは内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。先日、ポリープ切除をおこなった患者さんがsmがんでした。
大腸粘膜の層構造です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜(粘膜固有層) ②粘膜下層 ③筋層(固有筋層) ④しょう膜下層 ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。【右図参照】

がんの深さが①にとどまっていれば内視鏡治療で完治します。絶対にリンパ節転移はありません。
がんの深さが③④⑤であれば、外科手術が必要です。

問題は②です。粘膜下層を3等分して、上から順にsm1 sm2, sm3と呼びます。がんが1/3までの深さ(sm1)ならば転移がないため、内視鏡治療で良いのですが、がんが深ければ(sm2以深)、10%程度のリンパ節転移があるために手術をした方が安全です。

先日、S状結腸のポリープ切除をおこなった患者さんの結果がsmがんでした。内視鏡治療は粘膜下層で切除するため、切除標本で粘膜下層を3等分して評価することは出来ません。粘膜筋板からがん最深部までの距離が1mm以下であれば、sm1扱いになります。この方は粘膜筋板が分からなかったため、病変表層からがんの最深部までの距離(2.3mm)で代用し、sm2以深のがんと診断しました。この場合、ポリープが完全に切除されていても、リンパ節転移のリスクが残ってしまいます。

患者さんと話し合い、追加の外科切除術を受けて頂くことになりました。手術の結果、リンパ節に転移はありませんでした。

smがんは、リンパ節転移がないと『ステージⅠ』です。もし、1個でもリンパ節転移があると、『ステージⅡ』を飛び越えて、一気に『ステージⅢa』になってしまいます。
ステージⅢの大腸がんは、化学療法を追加するのが一般的です。手術が終わった後に、半年間、抗がん剤の投与を受けなければいけません。それでも、5年生存率はステージⅠが90%であるのに対して、ステージⅢaは80%と低くなります(数字はS状結腸がんの5年生存率)。

粘膜内、粘膜下層はわずか数ミリメートルの厚みしかありません。しかし、そのほんのわずかな差でも結果は大きく違ってくるのです。

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平成27年診療報告より(2)  アルドステロン症

日曜日, 2 月 28th, 2016

レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系高血圧の患者さんの5%程度に存在すると言われているアルドステロン症ですが、これまで一度もお目にかかったことがありませんでした。

【レニン・アルドステロンの説明】
体内を流れる血液量が減ると、レニン(ホルモンの一種)が刺激されます。レニンはアンギオテンシンを介して、アルドステロンを分泌させます。アルドステロンは腎臓でナトリウム(Na)を再吸収し、カリウム(K)を排出します。その結果、血圧は高くなり、血中のK濃度は低下します。

【アルドステロン症のメカニズム】
体のどこかにアルドステロンをドンドン産生する腫瘍があるために高アルドステロン血症になります。その結果、高血圧となります。レニンはフィードバックがかかって産生が抑制されます。アルドステロン症では「低レニン・高アルドステロン」になるわけです。

【症例】
30代の女性で、風邪症状で来院されました。血圧170/120mmHgと異常に高かったのですが、これまで高血圧を指摘されたことは無かったそうです。時々、病院に来ると緊張して異常に血圧が上がる方がいらっしゃいますので、2週間ほど自宅で血圧を測って記録を持って来て頂くようにしました。
次の診察時に血圧の記録を見せてもらうと、自宅でも血圧が高いことがわかりました。そこで、レニン・アルドステロンを測定したところ、アルドステロン症の診断基準を満たす結果でした。エコー検査では副腎腫瘍は無かったので、腫瘍の無いタイプかも知れません。現在、大学病院で精査中です。早く結果が知りたいですね。

成書には、高血圧の患者さんは全員、初診時にレニン・アルドステロンを確認しておくことを勧めています。降圧剤を飲み始めるとレニン・アルドステロン値に影響が出るためです。レニン・アルドステロンを測定する時は、15~30分以上、安静臥床を続け、それから採血しなければ正確な値が出ません。ですから、高血圧の方にレニン・アルドステロンの採血をするのは、なかなか勇気のいることなのです。

古典的には、高血圧と低K血症の組み合わせがあるとアルドステロン症を疑うのですが、最近では、低K血症を起こすアルドステロン症は20%程度だそうです。アルドステロン症を見つけるのはなかなか難しいと思います。

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平成27年診療報告より(1)  赤痢アメーバ症

日曜日, 2 月 14th, 2016

実は危険な食材かも。赤痢アメーバ症は嚢子(シスト、卵に相当する)が口から侵入し、大腸粘膜で成虫(栄養型)になり、出血や潰瘍を伴った腸炎を来す病気です。
平成27年に当院でも1名確定診断が付きました。幸い、薬(フラジール)の内服で、完治しました。

当院では過去6名(6年間)の赤痢アメーバ症の患者さんが確認されました。
【男女比】男性:女性=6:0(全国集計でも9:1とやはり男性に多い)
【年齢】34歳~56歳(妻帯者2名、あとの4名は未確認)
【海外渡航歴】有(1名、中国)、無(5名)
【主訴】下血(3名)、健診で便潜血陽性(3名)
【病変の部位】直腸(4名)、盲腸(2名)

診断に関しては、大腸カメラが有用で、いわゆる「汚い」潰瘍やびらんが盲腸か直腸に認められれば、診断は容易です。10日間程度、薬を飲めば完治しますので、今のところ、大きな問題にはなっていません。

① 1990年代には年間100~200人程度だったのが、現在では年間1,000人以上の届け出があります。症状の無い保菌者はこの10倍いると考えられています。
② 東南アジアなどに渡航歴のある方や同性愛者(ゲイ)に多い病気とされていますが、実際は、どちらにも当てはまらない人が多いのが現状です。

この30年間で東南アジアへの旅行者はそんなに増えたでしょうか? 同性愛者(ゲイ)がそんなに増えたのでしょうか? 答えはいずれも「No」です。
圧倒的に男性に多いのは何故なのでしょうか?

赤痢アメーバの嚢子は野菜や果物に付着しています。特に、人糞を肥料として使っているとそのリスクは高くなります。嚢子は熱に弱いのですが、水洗いぐらいでは取れません。 (*東南アジアでは肥料に人糞を使うことがあります。)

【ここからは私見です】
日本でこの30年間で大幅に増えたモノ。そのひとつに『コンビニ』『ファミレス』があると思います。コンビニやファミレスのサラダ(カット野菜)は、何処で生産されたものなのでしょうか? サラダは水洗いだけで、熱処理は出来ないはずです。消毒水に浸すことで、細菌は殺せても、赤痢アメーバの嚢子は死にません。男性は、女性と違って、スーパーで産地を確認した野菜を買ってきて、家でサラダを作ることは滅多にしないでしょう?

【対策】
コンビニやファミレスでは熱処理してある(焼いたり茹でた)野菜を選ぶ。

【将来の不安】
現時点では、赤痢アメーバ症は抗生物質(フラジール)で完治します。しかし、フラジールが効かない報告も出てきています。将来的には、フラジールが効かないタイプが多くなる可能性があります。赤痢アメーバ症は決して、特殊な人の病気ではなく、身近な病気だと思います。

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大腸カメラで思う事

日曜日, 12 月 13th, 2015

大腸カメラはこんな感じです。開業して年が経ちました。勤務医の時から今まで沢山の大腸カメラをおこなってきました。開業してからの大腸カメラは、診察と同時進行であるがゆえに時間の制約があること、患者さんの痛みにより一層気を遣うこと、など勤務医の時とは違ったプレッシャーを感じます。
ここ数年、大腸カメラに対する自分のスタイルというものが、ようやく確立できました。その結果、検査時間が安定するようになりました。検査時間が安定すれば、予定も立てやすくなりますし、スタッフも行動しやすくなります。
大腸カメラを習い始めた若い先生方に、私流の大腸カメラのポイントを説明します

① 硬度可変式カメラの硬さ(0~3)は「」に設定しておきます。左側臥位でカメラを挿入したら、直ぐに仰向けになって頂きます。介助者に下腹部を圧迫してもらいます。この時、S状結腸に沿って、斜めに圧迫します。直腸S状部からS状結腸へ押し込まないで通過できれば、後はかなり楽です。ここは、時間をかけてもいいので、押し込まないで通過できないかやってみる価値があります。

② S状結腸から下行結腸への挿入(SD 移行部)が、大腸カメラの最大の難所です。
深部S状結腸まで挿入した時に、痛みの訴えがあれば、躊躇なく、左側臥位に戻って頂きます。その方が、カメラの自由度が大きくなり、より少ない痛みでカメラが進みます。
プッシュでSD移行部を超えたと感じたら、カメラの先端が抜けないように、カメラのループをストレート化します。大抵、手元は右ひねりになりますが、そうとは限りません。あくまでも、画面を見ながら、先端が抜けてこないように手元操作をおこないます。

③ 下行結腸に入ったら、介助者にヘソを軽く用手圧迫してもらいます。これでカメラが進まなかったら、介助者に両手でS状結腸を挟むように固定してもらいます。

④ 横行結腸から上行結腸へ移行する肝彎曲部が「第の難所」と言って良いでしょう。肝彎曲部に近づいたら、出来るだけ横行結腸のたわみを取り、カメラの硬度を「」にし、介助者にヘソの右横を圧迫してもらいます。ここで、カメラを強く押し進めると、カメラの先端はわみながらも上行結腸にひっかかります。用手圧迫を解除し、上行結腸の管腔を見失わないように、カメラのたわみを取ります。

⑤ 盲腸まで真っ直ぐの場合はそれで良いのですが、上行結腸が「Z字型」にたわんでいる場合があります、必ず、回盲弁や虫垂の開口部を確認してください。

如何だったでしょうか。大腸カメラの手技は人それぞれだと思います。自分のやり方に自信が持てるようになれば、精度の高い、かつ、痛みの少ない、安定した大腸カメラを提供し続けられると思います。

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医療の話  反省が生かされた!

日曜日, 10 月 11th, 2015

心電図です。
【60代の方です】
高脂血症で通院中の方ですが、診察の際に、手首で脈をとってみました。以前、心房細動に伴う心不全を見抜けなかった苦い経験をして以来、出来るだけ、脈を触れるように診療のスタイルを変えました。「トットットッ」って感じで脈が一瞬乱れました。ご本人はまったく自覚症状が無いのですが、念のために、24時間心電図を受けて頂きました。その結果、7秒間の心停止が確認され、ペースメーカー植え込み術の適応と判定されました。

【40代の方です】
心窩部痛で来院されました。大酒家ではないけれど、ある程度は、お酒を飲まれる方です。以前、一度、急性膵炎にかかったことがあります。この腹痛はアルコール性急性膵炎だろうと考えました。血中膵酵素の異常を確認し、速やかに膵炎の治療を始めることが出来ました。「原因がハッキリしない腹痛」が、結果的には急性膵炎だったという事例が最近2回続いていたので、今回、初診時に急性膵炎と診断出来て嬉しかったです。

過去の失敗や経験が、今回、診療に活かされたことで、単に「苦い思い出」に終わらずに、報われました。

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医療の話   大腸カメラ後の虫垂炎

日曜日, 10 月 4th, 2015

最近、この人、何回も出てきてます。【20代の方です】
腹満感や便通異常の精査目的で大腸カメラを受けて頂きました。検査は、通常通り終了し、大腸に異常を認めませんでした。
検査後からお腹の張りを自覚していたのですが、徐々に悪化したため、検査後5日目に来院されました。盲腸の部位に一致して圧痛を認め、血液検査でも白血球が増えていることから、大腸カメラが誘因となった虫垂炎と判断しました。
それほど、強い痛みではなかったため、抗生物質で経過をみることが出来ました。

大腸カメラの前処置で飲む下剤の影響で糞便が虫垂口に詰まったり、検査の際の送気が刺激になったことで、大腸カメラ後に虫垂炎を起こすことがまれにあります。
今回も、そういった経緯であろうと判断し、慌てることなく、診察できました。

文献を調べてみますと、色々な報告がありました。
・大腸カメラの後に腹膜炎を来したが、原因は、虫垂に魚の骨が刺さったためであった。

・大腸のポリープ切除をした後に、大腸の穿孔を来し緊急手術になったが、穿孔の原因はポリープを切除したためではなく、虫垂炎が破れたためであった。
などなど。

大腸カメラの後に虫垂炎をおこすことがある。」ということを知っていなければ、検査の後の腹痛に主治医が動揺し、その後の対応を誤り、患者さんに余計な不安(又は怒り)を与えることになります。知識(経験)が大事であることを改めて感じました。

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医療の話  偽膜性腸炎

日曜日, 9 月 27th, 2015

雪が降る~。理由の如何を問わず、抗生物質の投与を受けると、腸内細菌のバランスが崩れます。運悪く、菌交代現象により異常に増殖したクロストリジウム・ディフィシル菌が産生する毒素(CDトキシン)により大腸粘膜が炎症を来し、腸炎が発症することがあります。ひどい場合は、大腸粘膜に白色の丸い斑点が散在している様子を大腸カメラで観察できます。この斑点が「偽膜」と呼ばれるものです。大腸の中に、雪が降ったような感じになります。
抗生物質投与中ないしは投与後に発症しますので、病歴を聞けば、大体、予想はつきます。

開院以来6年間で5名の「偽膜性腸炎」の方がいらっしゃいました(案外、少ない印象です)。その方々について、まとめてみました。
1. 年齢 43歳~76歳 (平均年齢60歳)
比較的高齢の方に多い傾向があります。

2. 大腸カメラで「偽膜」を確認出来た方が4名います。
偽膜は直腸~S状結腸に多いので、内視鏡を挿入すると、直ぐに診断がつきます。言い換えると、内視鏡をしないと、確定診断が難しい病気かもしれません。

3. CDトキシンを確認できた方が4名います。
便で調べるのですが、迅速診断で、ほぼ翌日には判明します。便の培養検査は1週間近くかかりますので、早く結果を得ることで、治療への取り組みもはやくなり、大変助かります。

4. 便の培養検査でクロストリジウム・ディフィシル菌(C.difficile)が確認できた方が3名います。

C. difficile は嫌気性菌(大腸菌などは好気性菌)なので、便の採取に特殊な容器が必要です。なお、ディフィシル(difficile)はdifficult (難しい) に由来しています。嫌気性菌であるため、培養が難しかったのでしょうね。

5. 治療
何といっても、まず、抗生物質の中止です。軽症の方(3名)は整腸剤で軽快しています。重症の方(2名)は入院治療をお願いしました。

偽膜性腸炎の診断は病歴(抗生物質の投与)と大腸カメラが決め手です。患者さんは、別の病気の治療で、腸まで悪くなったので、混乱されていることが多いです。「運が悪かった。」としかなぐさめようがありません。

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医療の話  病原性大腸菌 O-157

日曜日, 9 月 20th, 2015

これが、O-157です。

これが、O-157です。

【40代の方です】
焼肉を食べて6日後に、腹痛、下痢、下血で来院されました。すぐに、大腸カメラをおこなうと、盲腸から上行結腸にかけて、激しい粘膜の浮腫や発赤、出血、びらん、潰瘍、などの異常所見が認められました。また、健常な粘膜をはさんで、病変が点在している様子から感染性腸炎が疑われました。盲腸~上行結腸に好発する菌は病原性大腸菌が有名です。肉を食した経緯も、病原性大腸菌に合致します。O-157に良く効くクラビットを処方しました。しかし、翌日、腹痛が強くなったため、大学病院に入院して頂きました。後日、便検査でO-157とベロトキシンが検出され、保健所に届けました。
今回は、診断から治療までが非常にスムーズに進みました。特に、初診時に直ぐに大腸カメラを受けて頂いたことが大きかったと思います。当初は、「虚血性腸炎」を想定し、S状結腸までの観察予定でしたが、S状結腸に異常が無いため、どんどんカメラを進めていった結果、盲腸の異変にたどり着きました。

【苦い思い出】
勤務医の頃、O-157の患者さんを担当したことがあります。やはり、腹痛、下痢、下血で緊急入院となったのですが、O-157の確定診断に必要な便検査の結果が出るまで数日かかります。CT検査でも盲腸~上行結腸が腫れており、さらに腹水も溜まっていました。O-157を想定してクラビットの投与は始めていたのですが、入院2日目、3日目と、確定診断が得られないまま、全身状態は悪化する一方でした。病状に不安を感じられたご家族から転院の申し出があり、大学病院にお願いしました。転院された翌日にO-157と判明しました。その後、ようやくクラビットが効いて、快方に向かったとのことでした。

裁判官!【溶血性尿毒症症候群と裁判】
O-157はベロトキシンが溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こし、死に至ることがあります。HUSは赤血球が破砕され溶血性貧血を起こし、同時に、血小板減少と腎不全を合併する病態です。ベロトキシンの影響で腎血管内に血小板血栓が生じることが原因とされています。
私が研修医だった頃(30年前)、神戸でO-157によるHUSがもとで亡くなったお子さんの裁判がありました。被告の開業医が「HUSの存在を知らなかった。」と弁明したのですが、「医師は知らなかったでは済まされない。」と有罪になりました。今でこそ、O-157HUSの関係は周知の事実ですが、当時は、まだそこまで医学が進んでなかったと思います。医師の責任の重さを感じた出来事でした。
なお、HUSの早期発見のコツは、毎日尿の蛋白と潜血をチェックすることです。案外簡単です。

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医療の話  リフィル処方箋

日曜日, 8 月 30th, 2015

今、日本では画期的な医療改革がおこなわれようとしています。医療費削減が一番の目的でしょう。それは、「リフィル処方箋」の導入です。

薬局で処方箋を渡します。リフィル処方箋(refill:補充、詰め替え)とは、一定の定められた期間内に反復して使用できる処方箋のことです。患者さんは、医師の診察を受けることなく、リフィル処方箋一枚で繰り返し、薬局で薬を受け取ることが可能となります。その結果、患者さんは診察代や処方箋代が必要なくなり、時間と経済的な節約になります。
一方、医師(特に勤務医)も、外来診療で、慢性の患者さんに時間を取られなくなり、新患の方や、重症の方、病状が悪化した方などに、十分の時間を割くことが出来ます。
アメリカでは既に60年以上も前から、カナダ、フランス、イギリス、等の諸外国もこのリフィル処方箋が導入されていますので、日本が追随するのは時間の問題と思います。

唯一、反対しているのが、私達開業医の政治圧力団体『日本医師会』です(私も医師会の会員です)。「患者さんの健康管理に責任が持てない」というのが名目上の理由ですが、正直なところは、開業医の収入が大幅に減ることが明白だからでしょう。
例えば、高血圧症や糖尿病の患者さんは通常、月に1回診察に来て頂きますが、リフィル処方箋が導入されれば、受診が3~6カ月に1回程度に減ることが予想されます。今の時代、血圧は自宅で簡単に測れます(測定器は5,000円程度です)し、糖尿病のコントロールの指標になるヘモグロビンエーワンシー(HbA1c)も薬局で指先の血液を使って数分で測ることが出来ます。高血圧や糖尿病は自己管理できる環境になったのです。

欧米の開業医は平均、一日10~20人程度の患者さんを診察すると聞いたことがあります。一方、日本では一日35人以上診ないと経営が成り立たないという俗説があります。一人の医師が1日100人以上の患者さんを診ている「スーパークリニック」もあります。どちらが、患者さんにとって良いのかは、明白です。

ひるがえって、私自身もリフィル処方箋の導入によって、自然淘汰されないようにしなければなりません。今から、試行錯誤を繰り返し、自分なりの答を見つけ出したいと思います。

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