Archive for the ‘院長「医療に関する話」’ Category

医療の話  虫垂がん

水曜日, 8 月 12th, 2015

虫垂の位置を確認してください。① 虫垂切除しているのに虫垂がんが見つかった。
② 進行した虫垂がんでも大腸カメラでは見つけられなかった。

今回は、2人の虫垂がんのお話です。

① 70代の方の話です。
若い頃に虫垂炎で手術を受けています。ですから、虫垂は無いわけです。最近、右の下腹部(虫垂のあったあたり)が痛むため、大腸カメラを受けて頂きました。虫垂口が出べそのように隆起し、そのてっぺんに、辺縁が不整で、扁平な10mm大のポリープを認めました。生検でがんと診断されたため、総合病院外科に転院となりました。
この方の場合、虫垂切除を受けていたことで虫垂の開口部が出べその様な形になり、大腸カメラでがんが観察出来たと思います。通常は、虫垂の中は観察出来ませんから。
人生、何が幸いするかわかりません。

② 60代の方の話です。
右下腹部痛(虫垂のあるあたり)のために来院されました。触診でしこりを触れましたので、エコーでみてみました。そうすると、イモ虫の様に虫垂が腫れているのが観察されました。そこで、近くの総合病院でCT検査を受けて頂き、虫垂がんと診断されました。手術の前に、大腸カメラが実施されましたが、虫垂口には何ら異常は無かったそうです。
触診の重要性を改めて実感した次第です。

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医療の話  心不全

日曜日, 8 月 2nd, 2015

血圧と脈拍を測ります。50才代の方で食欲不振のために胃カメラを希望されて来院されました。
BMI29とかなりの肥満です(正常18~24)。
血圧200/135 mmHg  脈拍90回/分(自動血圧計による測定)
酸素飽和度98%(パルスオキメーターによる測定)

食欲は無いのですが、体重は減っておらず(測定していない)、過去に高血圧は指摘されたことは無く、いつから高いのか不明でした。

幾つかの懸念が頭をよぎりましたが、それを打ち消して、ご本人の希望通り胃カメラを実施しました。何も異常は見つかりませんでした・・・。

<数週間後>
市内の総合病院の循環器内科医より、急性心不全で入院されたと連絡を受けました。胃カメラの時に心不全の兆候はなかったか尋ねられました。心不全の原因は頻脈性心房細動によるポンプ不全でした。利尿剤の投与で体重は7kg減少し、アブレーションで心房細動は消失しました。心不全や呼吸不全ではしばしば食欲低下を来します。ですから、こういった病状の方に、「食事が十分摂れていないなら、点滴でもしておくか。」といった処方は真逆の治療であり、心肺不全を悪化させてしまいます。

頭では理解しているつもりでしたが、この方の心不全の兆候を見抜くことが出来ませんでした。どこに問題があったのか。幾つかの言い訳が頭をよぎりました。「あの日は忙しくて、ゆっくり話を聞けなかった。」「胃カメラの直前には緊張のあまり血圧が急に上がってしまう人はいる。」などなど。しかし、冷静に考え、出した答えは、『直接、脈を触れていなかった』ということにたどり着きました。
たった10秒でも、この方の手首で脈をとれば、脈が乱れていることに気付いたはずです。脈拍数を器械に任せていたため、心房細動に気付かなかったのです。問診をしながらでも脈を触れることは可能です。私のこれまでの診察のスタイルに問題があったことを痛感させられました。

<現在>
初診の方、高血圧の方、脈の多い方などには、手首で脈を取るようにしていますが、すべての方に実行するまでには至っていません。長年の習慣を変えるというのは難しいですね。気が付くと、脈を触れていません。しかし、ここで、自分を律して、脈を取る診察のスタイルを確立しなければ、同じ失敗を繰り返すことになります。患者さんから教わることが多いです。

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医療の話  虫垂炎

月曜日, 7 月 27th, 2015

お腹痛いっ!先日の土曜日の朝、急な吐き気のために、中学生の方がお父さんに付き添われて、来院されました。診察室に入ってくる姿は、お腹をくの字に曲げてはいません(腹膜炎はなさそう)。昨夜は生ものを食しておらずあたりでもなさそう下痢や発熱はありません。同じ症状のクラスメイトはおらず(ウイルス性の嘔吐下痢症ではなさそう)、今日、特別なイベントはないとのことでした(ストレスでもなさそう)。

いつものようにお腹の診察を進めていきました。虫垂のある右下腹部を圧迫した際に、強い痛みを訴えられました。本人も私も、お父さんもみんなびっくりしました。血液検査で白血球数が15,000(正常は6,000程度)と著しく増加していました。

虫垂炎スコア(*)は6点(10点満点)で、強く虫垂炎を疑う点数ではありませんでしたが、虫垂炎の手術適応を判断しるために、大学病院に診察をお願いしました。CT検査で虫垂の腫れが確認されましたが、まずは、抗生物質で様子見ることになったとのことです。

問診からはまったく予想していなかった今回の虫垂炎ですが、診察の際の必ず盲腸の所も圧迫してみる習慣が役に立ちました。いろいろ考えるよりも、まずは、ていねいな診察の大切さを再確認しました。

虫垂炎スコア(*)  <7点以上:虫垂炎の確率が90%>

① 痛みの移動  (1点)
② 食欲不振   (1点)
③ 嘔気・嘔吐   (1点)
④ 右下腹部圧痛 (2点)
⑤ 反跳痛 (1点)
⑥ 発熱 (1点)
⑦ 白血球増多 (2点)
⑧ 白血球の左方移動  (1点)   <合計10点>

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医療の話  やっぱり難しい「急性すい炎」

月曜日, 6 月 22nd, 2015

先日、早朝より急に胃が痛みだした患者さん(40才代、男性)が来院されました。
あつかんもイイね。【問診】昨日の夕食はかつ丼で、お酒はいつものようにビール350mL程度だったとのこと。発熱なく、嘔吐、下痢はしていません。
【診察】心窩部に強い圧痛を認めましたが、腹膜炎の所見はなく、腸雑音は弱いながらも聴取出来ました。
【検査】血液検査で白血球の増多を認め、腹部レントゲン撮影では、わずかに小腸のガス像を認め、腸炎を起こしている様子でした。エコー検査で、胆石や腹水はなく、すい臓は見える範囲には異常はありませんでした。

【診断】???
さて、困ってしまいました。急性すい炎を起こすほとんどの人はアルコール多飲か高蛋白食を摂っています。もしくは、胆石があります。血圧が異常に高かったので、解離性動脈瘤の様な「血管性の腹痛」も頭をよぎりました。

【治療】兎に角、痛みを緩和させるために、鎮静剤を注射しましたが、効果がありません。『急性腹症』の病名で、救急病院に精査治療をお願いしました。

【経過】救急病院のCT検査で「急性すい炎(軽症)」と診断されました。なお、翌日に、すい酵素(アミラーゼ、リパーゼ)が異常高値であったことがわかりました。

最近、ブログで「腑に落ちない腹痛は急性すい炎を意識しながら診療しています。」と書いたばかりなのに、今回も、急性すい炎を強く意識したうえで転院して頂くことが出来ませんでした。

血液生化学検査やCT検査の結果を見て、次のステップを考えるのではなく、クリニックで診療をする以上、より詳細な問診と注意深い診察、そして、最小限の検査で急性膵炎が診断出来るようになるしかありません。

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医療の話  高コレステロール血症と食事②

月曜日, 6 月 15th, 2015

エビフライ、大好き!高コレステロール血症に対して、これまで、コレステロールの摂取量が制限されてきましたが、平成27年4月に厚生労働省が、制限を撤廃しました。「食事では体内のコレステロール値は変わらない。」ことが解ったからです。それを受けて、「日本動脈硬化学会」も5月には食事制限が無意味である旨を発表しました。

それでは、これまで食事についてはどのような内容が示されていたのでしょうか。興味深いですね。

平成24年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」には、コレステロールの1日摂取量を200mg未満と明記されています。
・塩分を1日6g以下に制限すること。
・多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)の摂取を増やすこと。
・中性脂肪を減らすためには炭水化物を制限すること。
・アルコールを減らすこと。
・運動で体重を減らすこと。
など、結局、総合的にメタボリック体質にならないようにすることが大事で、コレステロールだけを制限しても意味がないことは示されていたわけです。

このブログの資料となった医学書が、対話形式になっていました。進行役の方が、繰り返し食事療法の事を聞き出そうとします。「日本食が良いのですか?」「地中海食はどうですか?」「具体的な食事内容は?」という具合に。
ところが、回答する動脈硬化学会の重鎮(教授)は、のらりくらりと一般論でかわしているのです。やっぱり、食事ではコレステロールは下がらないことが解っていたのでしょうね。
そもそも、医学部の講義に「栄養学」はありませんから、医師に食事の事を聞くこと自体が的外れなのかもしれません。

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医療の話  「ごめんなさい」(高コレステロール血症と食事①)

月曜日, 6 月 8th, 2015

美味しそう!高コレステロール血症に対して、これまで、コレステロールの摂取量が制限されてきましたが、平成27年4月に厚生労働省が、制限を撤廃しました。「食事では体内のコレステロール値は変わらない。」ことが解ったからです。それを受けて、「日本動脈硬化学会」も5月に食事制限が無意味である旨を発表しました。

そもそも、コレステロールは体内で80%が作られるために、食事の影響が少なかったのです。しかも、コレステロールを沢山摂取すれば、体内での生産が抑制され、食べる量を減らすと、体内で沢山作り、体内のコレステロールを一定に維持することが解ったのです。

これまで、さんざん、コレステロールの高い方には「卵は1日1個までですよ。」とか「えび、いか、たこ、イクラ、などはコレステロールが高いから注意して下さい。」などと説教してきましたが、まったく無意味だったのです。ゴメンナサイ!
これからは、好きなものを好きなだけ食べてください。食用油やマヨネーズの「コレステロール1/2」などを謳っている比較的高価な食品を買う必要もない訳です。

ただし、悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)が高い方は、不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)をしっかり摂取した方が良いです。

n-3系脂肪酸:α-リノレン酸、DHA、EPA(青魚に多い)

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医療の話  解離性大動脈瘤

木曜日, 10 月 30th, 2014

赤い血管が大動脈です。今回は、『的確な診断には詳細な病癧の聞き取りが必要である。』というエピソードです。

40代の女性。1週間前から肩甲骨の辺りが痛くなり、数日後には、上腹部が痛くなりました。昨日あたりから腰も痛くなり、当院を受診されました。
血圧が170/110 mmHg に上がっていましたが、「痛みのためかな」と思い、それ程、気にかけませんでした。
エコー検査で15mmの胆石を2個認めましたので、「胆石による腹痛」と判断しました。胆石では度々、肩甲骨辺りが痛くなりますから。ただし、胆石が胆嚢の頚部に詰まっているわけでもなく、胆嚢炎の所見も無いので、「本当に胆石が原因かな?」という疑問は残りましたが、精査治療のために救急病院を受診して頂きました。

救急病院でCT検査を受けた結果は、意外にも「解離性大動脈瘤」との診断でした。痛みは、解離の生じた部位(肩甲骨辺り)から解離の進行に伴い、腹部から腰部へと移動していったわけです。

①痛みの場所がドンドン移動している。
②普段は高血圧ではないのに、血圧が上がっている。
③胆石はあるが、食事の時間や内容と関係なく痛みが出現している。エコー検査でも、石が詰まったり、胆嚢炎をおこしている所見が無い。

このように、冷静に考えれば、十分「解離性大動脈瘤」は想像される疾患でした。紹介状に「解離性大動脈瘤の疑い」と書けなかったことがとっても悔しいですが、患者さんが元気になられて何よりでした。

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医療の話  「伝染性単核症」

水曜日, 9 月 10th, 2014

伝染性単核症はEBウイルスに感染することによって発症する病気です。高熱、リンパ節腫脹、喉の痛み、肝機能障害、などが主な症状です。唾液を介して感染することが多いことから俗に「kissing disease(キッシング病)」とも言われています。

39℃でた!先日、数日間の高熱の後に、瞼(まぶた)がむくんだために来院された方(19歳)がいらっしゃいました。

まず尿を調べると、蛋白が出ています。血液検査では白血球が増えています溶連菌感染後ネフローゼ症候群をおこし、瞼が腫れているのではないかと推理しながら診察を進めました。血液検査では肝機能障害を認めました。エコー検査では脾臓が腫れ、胆のう壁も肥厚していました。血液検査結果から、当初、想定していたネフローゼ症候群は否定されました。しかも、瞼の腫れと胆のう壁の肥厚がどう関係しているのか説明できません。正直、混乱してしまいました。白血球増多と脾臓の腫れから最悪の場合、「白血病」の可能性があるかも知れないと考えました。念のために、大学病院の血液内科で診て頂くことにしました。

その結果、リンパ球の半分以上が『異型リンパ球』であり、(後に判明したことですが)EBウイルスに初感染のパターンのウイルス抗体価を示したことで、伝染性単核症と診断されました。紹介状に「伝染性単核症の疑い」と書けなかったことが、口惜しかったのですが、患者さんが1週間の入院で元気に退院されたので、兎に角、良かったです。

文献を調べてみると、伝染性単核症でまぶたが腫れることが、確率は低いものの、在るのですね。初めて知りました。なぜ、まぶたが腫れるのかは、分かっていないようです。また、本疾患で胆のう壁が肥厚することも稀ながら報告されていました。

(〇)発熱 90%以上
(〇)首のリンパ節の腫れ ほぼ100%
(〇)喉の発赤 80~90%
(☓)肝臓腫大 50~90%
(〇)脾臓の腫大 30~75%
(☓)発疹 30%程度
〇)眼瞼浮腫 10~30%
〇)胆のう壁の肥厚 非常にまれ

〇印:本例に当てはまる。☓印:本例に当てはまらない。

「瞼が腫れている」という事象に惑わされて、確定診断に至るまでに遠回りをしてしまいました。伝染性単核症は教科書どおりではない、非典型的な症状や経過を辿ることが多いのですが、改めて、診断の難しい病気であることを思い知らされました。

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医療の話  虫垂炎(下巻)

水曜日, 8 月 27th, 2014

たった今、虫垂を切除しました。たびたび遭遇するけれども、意外に診断が難しい「虫垂炎」(いわゆる盲腸というやつです。)について、前回からの続きです。

今年になって虫垂炎と診断して、総合病院の外科に紹介した患者さんのなかに、CT検査の結果、虫垂炎ではなかった方が2名(Aさん,Bさん)いらっしゃいました。
また、その一方で、腹痛の原因を調べるために救急病院でCT検査をお願いして、虫垂炎とわかった患者さんが3名(Cさん,Dさん,Eさん)いらっしゃいました。
この5名の方々について、虫垂炎の診断ポイント8項目を再検証してみました。
【結果】
Aさん:6点
Bさん:5点
Cさん:5点
Dさん:3点
Eさん:0点

【思ったこと】
Aさん、Bさんに関しては、総合病院で抗生物質の処方がされています。確定診断の基準となる7ポイントを下回っていたわけですから、クリニックで抗生物質を処方して、患者さんにもうしばらく様子をみることを提案するべきだったと反省しています。

Cさん、Dさん、Eさんとも、確定診断の目安となる7ポイントを大きく下回っていたので、診断は難しかったと思います。特にDさんとEさんは、虫垂炎を否定して良い4ポイント以下ですから、CT検査の結果を知った時は「まさか!」と思いました。3名とも虫垂炎の手術が無事に施行されています。

クリニックに来院される時点では、痛みが未だ右下腹部に移動していない状態であることもたびたびあります。腹痛で来院された場合は、常に「虫垂炎」の可能性を念頭に置き、もっともっと診断の精度を上げていこうと思いました。

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医療の話  虫垂炎(上巻)

水曜日, 8 月 20th, 2014

お腹が痛い!たびたび遭遇するけれども、意外に診断が難しい「虫垂炎」(いわゆる盲腸というやつです。)についてのお話です。

虫垂炎らしい患者さんを診察する時は、次の項目についてチェックしています。

① 痛みの移動  (1点)
② 食欲不振   (1点)
③ 嘔気・嘔吐   (1点)
④ 右下腹部圧痛 (2点)
⑤ 反跳痛 (1点)
⑥ 発熱 (1点)
⑦ 白血球増多 (2点)
⑧ 白血球の左方移動  (1点)   <合計10点>

【解説】
① 痛みの移動:典型的な虫垂炎は最初、「胃が痛い」「食欲がない」「吐気がする」などの胃の症状で発症します。それから数十時間から数日経過すると、右の下腹部に痛みが移動してきます。
④ おへそと右の骨盤の出っ張りを結んだ直線の右から1/3の点を「マックバーニー(Mcburney)の圧痛点」といいます。
⑤ 反跳痛とは、お腹を押えた時よりも、離す時の方が痛いことをいいます。
⑥ 38℃以上が目安です。
⑧ 白血球の成分のうち「好中球」の比率が増えることです。

8項目の合計点が以上であれば、ほぼ90%の確率で虫垂炎と考えられます。一方、4点以下であれば、まず虫垂炎ではないと考えます。(下巻へと続く)

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