医療に関する話  私の診察手順をお話します。

お腹の診察は患者さんに診察台に仰向けに寝て頂いておこないます。膝は軽く曲げてもらいます。
そうすることでお腹の力が抜けるからです。

まず、聴診器でお腹の音を聞きます。腸の動いている音が聞こえます。腸はしばらく動かない時もあるので、30秒間ぐらい待つこともあります。1分以上音がしなかったら腸閉塞を疑って、レントゲンを撮ります。危険な腸閉塞は特有の音がしますので、すぐにわかります。
 まれに、腸雑音に混ざって、おへその辺りで、「ブルーイ」と呼ばれる血管性雑音が聞こえることがあります。腎臓脈などが狭くなっているための雑音で、高血圧の原因になります。
続けて、打診をおこないます。ガスが溜まっている音、腹水が溜まっている音などがわかります。

次に触診をおこないます。目的の臓器を意識しながら軽くお腹を押さえます。胃、十二指腸、胆のう、すい臓、盲腸、S状結腸、の順です。少し時間がかかりますので、緊張気味の患者さんには、その都度、どの内臓を診察しているのか説明します。
 肝臓は肋骨に隠れているので、先に肋骨の下に指先を差し込んでおいて、大きく息を吸ってもらいます。そうすると、横隔膜が下がるのにつられて肝臓もお腹に下がってきます。この時、指先に触れる肝臓の感触で判断します。肝臓病の方は、大体、少し硬めなので、「コリッ」と触れます。
 虫垂炎を見逃してはいけませんので、盲腸は詳しく診察します。腰骨(腸骨)のてっぺんとおへそを結んだ線の腸骨より1/3の部位は必ず押さえておきます。離す時の方が痛いかも確認します。もし、そうであれば、腹膜炎の可能性があります。
 S状結腸は便が溜まっていれば、触れることが可能です。大腸がんの7割は直腸とS状結腸に出来るので、慎重に診察します。

 おへそも見ておきます。出べそなら腹水がたまっている可能性があります。

 顔と手と足も診察します。貧血、黄疸、リンパ節の腫れ、むくみ、爪の変形、肝臓病のサイン(顔の毛細血管や手のひらの赤み)をチェックします。

 最後に診察台に座って頂き、背中の中央、左右両脇の3か所を軽く叩きます。真中はすい臓、左右は腎臓の病気がないか確認するためです。

女性の場合、心臓の聴診は服の上からおこないます。無用な羞恥心を起こさないためです。呼吸音は背中に聴診器をあてて聞きます。この時は、シャツを上げて頂きます。直接皮膚に聴診器を当てないと肺炎かどうかは分らないからです。

 この一連の診察にかかる時間は5分程度です。診察には沢山の情報が溢れています。

【追記】医学生時、内科診断学の教授から「患者さんが診察室に歩いて入ってきて、すわるまでに8割は診断がつく。」と習いました。末端肥大症であれば、顔つきで分りますし、痩せて手足が長ければマルファン症候群かも知れません。息を吐く時に口をすぼめていれば、進行した肺気腫でしょう。小刻みに歩いていれば、パーキンソン病を疑います。診察室のドアを開けて、歩いてこられるところから診察は始まっています。

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