心に残った話(20) 「十二指腸潰瘍の裏側」

今回お話しする患者さんは60歳台の女性です。

健診で貧血を指摘されたために、消化管からの出血が疑われ来院されました。
さっそく、胃カメラを受けて頂くと、十二指腸にジワジワと出血している潰瘍を認めました。
これが貧血の原因だったわけです。

出血している所に細い針を刺し、少量のエタノールを注入し止血を試みました。
エタノールが十二指腸粘膜やその下に走っている細い血管を凝固させることで出血を止めるのです。しかし、針を刺した時に「サクッ」という感じでいつもの抵抗がありませんでした。気味が悪かったため、エタノールの注入は1回だけで切り上げ、アルゴンプラズマ凝固療法による止血に切り替えました。これは、胃内をアルゴンガスで充填させた後にプラズマ(かみなり)を放電させて、病変を焼いて止血する方法です。何とか無事に止血出来ました。

数日後、治り具合を確認するために、胃カメラを受けて頂きました。
ところが、潰瘍はまったく治っていませんでした。
潰瘍底には新しい血糊が付いていました。
いつもだったら、もう食事が出来るぐらいに治っている時期です。
潰瘍の裏側に何か異変があると考え、CT検査をおこないました。
その結果、十二指腸の背中側に直径10cmの大きな腫瘤が見つかりました。
この腫瘤が十二指腸を圧迫していたため、十二指腸粘膜の血流が悪くなり潰瘍が出来たわけです。
私が針を刺したのはこの腫瘤だったのです。

腫瘤は手術によって無事摘出されました(GIST ジスト:平滑筋肉腫)。
患者さんも自分のお腹の中にこんな大きな腫瘤があったことに驚かれました。

見える事柄だけで判断しないで、その背後に隠されている真実を推理することが大切ですね。

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