心に残った話(22) 「アルコール性ケトアシドーシス」

今回ご紹介する患者さんは40代の男性です。

仕事も家庭も上手くいかなくなり、やけになって酒浸りの日々を数ヶ月送っていた結果、アルコール性急性膵炎を発症し、集中治療室に入院となりました。入院時の意識はもうろうとし、呼吸が速いのが印象的でした。
急性膵炎はその重症度によって「重症」「中等症」「軽症」に分類されます。重症すい炎は死亡率が高く、厚生労働省が「難病」に指定しています。
この患者さんも重症でした。

さらに、血中ケトン体が1,000μmol/l以上あり、それだけで死に至る数字でした。何日もお酒ばかり飲んで、ロクに食事を取っていなかったため、「飢餓状態」になり血液中のケトン体が高くなったのです。ケトン体は血液中でマイナスイオンとして存在しますので、同じマイナスイオンである重炭酸濃度が低下し、「代謝性アシドーシス」を来たします。アシドーシスとは体が酸性になることを意味します。ケトン体の増加によるアシドーシスはケトアシドーシスと呼ばれます。この患者さんはpH6.7と生命に危険が及ぶ強いアシドーシスに陥っていました。
重症すい炎も高ケトン血症もアシドーシスもそれぞれが致死的な状態だったわけです。

幸いなことに、これら3つの病態は治療の方向性が同じなので、治療方針はすぐにたてることが出来ました。

集中治療室では何日も不穏が続き、目が離せない状況でした。やむを得ず、ベットに縛り付けて治療を続けました。
徐々に回復に向かい、最終的にはすっかり元気になられました。
回復の途中で、しみじみと自分の過去のおこないを悔い、退院される時には、人生をリセットする計画をお話して頂きました。勿論、お酒もキッパリやめることを決意されていました。

アルコールによるケトアシドーシスは、アルコール常用者が栄養不足と脱水を契機に発症する疾患です。まだまだ知られていませんが、早期に適切な治療を開始しないと命を落としかねません。「大酒家突然死症候群」とも言われています。酔った人の呼吸回数が多い時は、ケトアシドーシスの可能性が疑われます。注意してあげてください。

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