心に残った話(2) 「肝臓がん」

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

今回の主人公は患者さんの奥さんです。肝臓病を患っておられるご主人に付き添って診察室にこられました。ご主人の肝臓病はかなり悪く、一般的には「手遅れ」という状態だったと思います。しかも、肝臓がんが再発していたのです。その治療法のことで、ご本人と奥さんと私の3人で何度か話し合いました。手術でがんを切除することは不可能と思われましたし、肝臓が弱いために手術そのものが命取りになりかねない状態でした。ついつい、安全な方法、でも、あまり有効とは思えない治療法を提案する私に、奥さんは「何か別な方法があるはずだ。」「何とかして夫の命を救いたい。」という強い意志を主張されました。その熱意にほだされるように、私は、がんセンターと大学病院に相談し、思い切って、『肝臓移植手術』を提案しました。奥さんは迷うことなく同意され、まもなく臓器提供者を身内から見つけてこられました。大学病院に転院されて半年ほど経ったある日、ご主人がひょっこり外来にお見えになりました。
pict0080-31昔の面影がまったくない、健康的な顔色の、生気に溢れた、新しい命を貰ったご主人に生まれ変わっていました。ご主人の背後からは後光がさしているようにさえ思えました。本当に感動しました。相変わらず物静かなご主人は仕事が続けられることを喜んでおられました。一方、奥さんはお見えではありませんでした。もう、ご主人は健康だから、付き添う必要が無くなったわけです。強く念ずれば、願いは叶うのですね。

Leave a Reply


Social Widgets powered by AB-WebLog.com.