心に残った話(3) 「人喰いバクテリア」

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

 今回の主人公は30代半ばの男性です。健康で、仕事に家庭に日々忙しく充実した時間を過ごされていました。何の非のないその方に突然不幸が降りかかったのです。
 
最初は急な発熱だけで、ご本人も「風邪かな?」と感じていました。解熱剤で様子をみていましたが、熱は一向に下がらず、体の具合はどんどん悪くなるばかり。2日後に病院を訪れた時に、初めて右足の腫れに気が付きました。そのまま入院となったのですが、病室で急に血圧が下がり、ショック状態となりました。直ちに集中治療室での全身管理が始まりました。救急医、内科医、整形外科医、形成外科医、等が総出で治療にあたりました。その結果、「劇症型A群レンサ球菌」による感染のため、発熱し、その菌が右足に飛び火して、足の筋肉が化膿したことが分かりました。その日の夜、緊急手術がおこなわれました。壊死した右足を大きく切開し、腐った部分が取り除かれました。その後も、一進一退の状態が続きました。足の手術も2回、3回と繰り返されました。徐々に傷が回復し、意識がしっかりし、食事が出来、杖歩行が出来るようになり3ヵ月後にようやく退院出来ました。さらにリハビリを続け、1年後には補助器具なしで、自由に歩けるようになりました。

劇症型A群連鎖球菌の電子顕微鏡写真(愛知県衛生研究所のHPより) この恐ろしい菌は別名『人食いバクテリア』と呼ばれています。アフリカなどの遠い国のことではなく、日本各地でも時々発生しており、その報告数は年間50人前後になります。感染する経路は不明であり、誰にでも起こり得ることなのです。この細菌は1時間に10cmのスピードで筋肉を食いつぶしていくと言われています。数十時間で全身に菌がまわり、命を落とす確率が非常に高い恐ろしい病気です。この方のように、後遺症も残さず治ったのは奇跡だと思います。
 ご本人がしっかり病気に向き合い、過酷な治療を受け止めてくれたことが、治療が成功した一番の理由であることは言うまでもありませんが、この病気に詳しい内科医がいたこと、腕の良い救急医、外科医がいたこと、そしてなにより、各科の医師達がすぐに集まってチームを作って治療にあたったことが大きいと思います。診療科間の垣根が低く、風通しの良い病院って意外に少ないのですよ。

2 Responses to “心に残った話(3) 「人喰いバクテリア」”

  1. ごう Says:

    恐ろしいですね。いざ、自分がなるようなことがあれば・・・・その時はお願いします☆
    土曜日にチャンピックスもらいに行きまーす。

  2. oshige Says:

    「禁煙」頑張っていますね!体内の一酸化炭素濃度の数値が大幅に下がって、良かったですね!

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