心に残った話(6) 「肝性脳症」

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

今回の主人公は70台の男性です。肝臓病のために「肝性脳症」という意識障害を繰り返しておられました。肝臓の大事な機能のひとつに「解毒作用」というものがあります。肝臓でいろいろな毒性のある物質を分解する訳です。しかし、肝臓病によってその能力が低下し、ちょっとしたことがきっかけで体内に毒がたまり、その毒性によって意識がなくなってしまうことを繰り返していました。これまでは、点滴治療で意識は戻っていたのですが、今回は点滴の量を増やしても一向に効果がありません。お尻からも薬を注入しましたが、やっぱりダメでした。意識がなくなって3日目に、鼻から胃まで細いチューブをいれて、大腸カメラの時に飲む下剤(2リットル)をゆっくりと時間をかけて流し込みました。数時間待っていると、期待通り、大量の便が出てきました。こうして、腸の中を空っぽにした結果、血液中の毒素の濃度が下がり、めでたく意識が戻りました。

三年寝太郎の絵本より患者さんは3日間眠っていたせいか、晴れ晴れとしたお顔でした。以来、この患者さんは絵本に出てくる「3年寝太郎」をもじって「3日寝太郎」と呼ばれ、スタッフのみんなから愛され続けました。

(注)本当は、このような薬の適応外の使用は危険なので勧められません。

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