医療に関するお話 「すい臓の薬」
私が研修医だった頃、慢性すい炎の治療の新薬が発売され話題になったことを覚えています。
しかし、それ以降、25年間、すい臓に関する新薬はまったく見受けられません。２，３の抗がん剤が、すい臓がんに対しても新たに保険適応が認められた程度です。
例えば、肝臓ですと、２０年前までは「Ｃ型肝炎」という存在すらわからなかったものが、今では、改良を重ねられたインターフェロン（注射）のお陰で、多くの患者さんが助かっています。最近では、国会でも肝炎の法律が出来ようとしていることは皆さんもご存知のことと思います。肝臓がんに対しても、ラジオ波焼灼（注１．）や肝臓移植術など、すさまじい勢いで進歩しています。同じことが胃や食道にも言えます。
一方、すい臓では、「自己免疫性膵炎」や「重症急性すい炎」の診断や治療法が確立しましたが、『画期的な』新薬や治療法といったものは見当たりません。何故でしょうか？要因のひとつとして、母集団の規模が関係しているかもしれません。例えば、肝炎の患者さんは本邦に200万人から300万人いると言われていますが、すい炎の患者さんはその1/100程度とされています。すい臓病にならないためには、何と言っても飲酒の制限です。過度の飲酒はすい炎、ひいてはすい臓がんの誘因になりますので、節度ある飲酒に心がけてください。
（注1．）エコーで見ながら肝臓に針を刺して、針先の部分を電子レンジの要領で焼く治療