12 月 20 日, 2017

胸部レントゲン写真⇒胸部経時差分処理

胸部レントゲン写真です。胸部レントゲン写真を撮った時に、以前の写真と今回の写真を比べることで、初めて異常に気付くことがあります。また、異常が見当たらないレントゲン写真でも、前回と変化が無ければ、さらに確信が持てます。
これまでは、パソコンの画面上に2枚の胸部レントゲン写真を並べて自分の目で確かめていたのですが、この度、それをサポートしてくれるソフト「胸部経時差分処理」を導入しました。
以前からテレビのコマーシャルで放送していたので、気にはなっていたのですが、実際そのソフトが使えるようになると、とても良いですね。
もちろん、最終判断は人間がするわけですが、診断能力の向上、小さな病変の見落としの解消、読影時間の短縮、そして医師のストレス軽減に大いに役立つと思います。

癌の化学療法(抗がん剤投与)に関しては、AI(人工知能)の力を借りた方がより効果的な治療が出来る時代になりました。画像診断も胸部経時差分処理のようにAIがドンドン導入されていくことでしょう。外科手術に関しても、ダビンチの様なロボットを使った手術が普及しつつあります。未来の医師の仕事は大きく変わっていくことでしょう。

12 月 10 日, 2017

オートクレーブ

ピカピカのオートクレーブです!内視鏡機器の洗浄というと、どうしてもスコープの洗浄に注目されがちですが、処置器具の洗浄もスコープと同様に重要であることは言うまでもありません。

当院では、これまで、生検鉗子などの処置器具は、超音波洗浄をおこなった後に、強力な殺菌作用のある消毒液(フタラール)に浸漬してきました。また、「B型肝炎」「C型肝炎」「梅毒」の患者さんに対しては、1回きりで使い捨てのディスポーザブルタイプの生検鉗子を使用することで対応してきましたが、この度、より高度な消毒(滅菌)をおこなうために「オートクレーブ」を導入しました。

オートクレーブは高温(135℃)・高圧水蒸気を用いた滅菌です。オートクレーブにより芽胞を含むすべての病原体を全滅させることが出来ます。 なお、ポリペクトミーの際に用いる「局注針*」「スネア**」は従来よりディスポーザブルを使用しています。

*局注針 粘膜下に生理食塩水を局注し、ポリープを浮かせるための針です。
**スネア ポリープの根元にかけて、通電しながら締めることで、ポリープを焼き切ります。

11 月 30 日, 2017

乗馬日記(12)  手前を変える

ドクターX「私、失敗しないので。」北九州市若松区の「若松乗馬倶楽部」に通うようになって、丸2年が過ぎました。上手に乗れるようになった時に、「そんなことも出来なかったのか。」と懐かしがってみたく乗馬日記を始めました。乗馬の最終目標は、「若松の海岸をさっそうと駆け抜ける」です。

軽速足(けいはやあし)では、鞍の上で、「立つ」「坐る」を繰り返します。馬が左手前(左回り)の時は、右前肢が前に出る時に腰を浮かせます。(右手前なら、その逆です。)馬が左方向に回っていく時は、左肢に重心がかかります。右肢が浮いている時に、人間が鞍の上で立てば、馬はバランスを崩しません。逆に、右肢が浮いた時に、人間が座れば、馬はとても走りづらいのです。
乗馬を始めた頃は、コーチから「手前を変えて!」って言われるまで、全然気づきませんでした。また、馬の肢を目視しないと手前があっているのかいないのか、わかりませんでした。最近、ようやく、手前があっていないと、何となくしっくりこない感覚がわかってきました。
駈足(かけあし)にも同じような現象が起こります。左回りに走る時は、左前肢でリードしていきます。逆だと危険ですので、一旦、駈足を止めます。これも、乗っていて何となくわかるようになってきました。
馬の走り方は、一見左右対称のように見えますが、実はそうではないところが、奥深いのです。

11 月 20 日, 2017

胃の生検組織から、透析患者さんであることを言い当てる病理の先生ってスゴい。

毎日、顕微鏡とにらめっこです。50代女性】近医で、週3回の透析を受けています。萎縮性胃炎のために、当院で胃カメラをおこないました。白いブツブツが目立つために、粘膜の一部を採取し(生検)、病理検査をおこないました。
病理医のレポートは、『褐色の沈着物が認められ、これは、高リン血症治療薬である炭酸ランタンの可能性がある。この方は、透析を受けていませんか?』といった内容でした。

わずか1mm大の胃の生検組織から、内服中の薬を言い当て、その背景にある透析を受けていることまで想像出来るなんて、すごいと思いました。まるで、「名探偵コナン」みたいです。

文献を調べてみますと、炭酸ランタンは比較的新しい薬(2009年発売)で、高リン血症を治療するために、最近良く使われているようです。その主成分であるランタンが胃粘膜に沈着した報告は英文を含めても14人しかありませんでした。

実は、この病理の先生に大腸smがんを診て頂いた時、「大腸がん取り扱い規約」に則った理路整然としたレポートがとても気に入り、以来、当院の病理診断はすべてこの先生にお願いしています。先生は、こんな珍しい症例のこともちゃんと知っておられたわけで、日々、勉強なさっていることに改めて敬服した次第です。後日、先生に透析患者さんであることを伝えておきました。

10 月 30 日, 2017

虫垂開口部の異常からの新展開

大腸カメラの終点は盲腸です。盲腸には、虫垂の開口部が観察されます。通常では、それは、おへそのようなイメージです。
盲腸と虫垂の位置関係を確認してください。
【50代の女性】

腹痛の精査目的で大腸カメラを受けてもらいました。盲腸の虫垂開口部が「つくし」のような突起物として観察されました。色素散布をして詳しく観察すると、ポリープではなく、大腸粘膜の突起でした。腸の中から観察すれば、通常は窪んでいるハズの虫垂が腸の中に反転しているのです。大腸憩室でも同じことは起こります。ただ、虫垂の反転を観たことが無かったので、CT検査で確認することにしました。CTで虫垂の反転が確認されましたが、同時にすい臓がんも見つかり、急きょ、総合病院に入院していただきました。なお、虫垂の反転の原因はわかりませんでした。

【30代女性】
下腹部痛の精査のために大腸カメラを受けてもらいました。盲腸にある虫垂開口部が少し赤く腫れていました。虫垂に炎症があるわけで、CT検査も受けて頂きました。CTで慢性的に腫れた虫垂を認めましたが(慢性虫垂炎)、虫垂がんの可能性もあるため、大学病院に手術をお願いしました。手術前のルーチン検査として受けた胃カメラで胃がんが見つかり、急きょ胃がんの手術が追加されました。

最近、虫垂開口部の異常から内臓のがんが見つかった患者さんが2名続きました。たまたまだと思いますが、その異常を「良くあることだし、様子を見よう。」と判断していたら、がんの発見は遅れたと思います。わずかな異常でも「見逃さない」「そのままにしない」ということの大切さを強く感じました。

10 月 22 日, 2017

睡眠薬に関する豆知識

今夜も眠れない。睡眠薬に関するいくつかの注意事項をまとめてみました。

❶睡眠薬は麻薬及び向精神薬取締法で規制されています。処方された薬を誰かに転売したり譲渡することは『犯罪』になります。
❷アモバンとデパスに限っては、これまで90日処方が可能でしたが、最近、30日までになりました。医療機関から不正な手段で入手する事例が増えたためだそうです。
❸睡眠薬はイメージほど依存性が強くありません。一度飲んだら、止められないということは無いのです。むしろ、精神安定剤(デパス、リーゼ、等)の方が依存性が強いです。
❹最近まで、アメリカ合衆国では、睡眠薬は一生で最大35日しか処方出来なかったそうです。その理由は、保険会社が睡眠薬の処方をなかなか認めないことと、薬の認可の権限を持つFDAがとても厳しかったためです。
❺睡眠薬は安全な薬です。大量に服薬しても命の危険はありません。私が救急病院に勤務していた頃、自殺企図で睡眠薬をたくさん飲んで救急車で運ばれてきても、スタッフは皆落ち着いていました。
❻睡眠薬を飲めば、直ちに眠くなるわけではありません。すべての用事を済ませて、「あとは薬を飲んで寝るだけ」となった状態が必要です。寝室は、真っ暗にし(豆電球もダメ)、テレビ、ラジオも消してください。

10 月 10 日, 2017

ブログで診察(19)

いつものブログ先生です。体のチョッとした不調や気になる症状、一度、医師に聞いてみたかったことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

【質問】 健診でγ(ガンマー)-GTPの高値を指摘されました。お酒を飲まないのにどうしてでしょう?(50代女性)

【答】 γ-GTPはお酒のマーカーだけではありません。

γ-GTPといえば、お酒のマーカーというイメージが強いですね。確かに、その側面もあります。ただ、飲む量とγ-GTPの上がり方には個人差があって、γ-GTP値から飲酒量を推測することは出来ません。沢山飲んでいても、γ-GTPが正常の人もいます。一方、飲酒を止めれば、γ-GTPはもれなく下がってきますので、禁酒を守っているかどうかの指標になります

γ-GTP高値で見落としてはいけないのが、脂肪肝の存在です。非アルコール性脂肪肝はメタボリック症候群と強い関係にあります。肥満傾向にあれば、一度調べたほうが良いでしょう。

γ-GTPALP(アルカリフォスファターゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)とともに、「胆道系酵素」の側面も持っています。これらの酵素が揃って異常であれば、胆道系疾患(例えば、総胆管結石、胆のうの結石やがん、すい頭部の炎症や腫瘍)を疑い精査する必要があります。ただし、γ-GTP単独の異常値であれば、その可能性はほとんど無いです。

また、γ-GTPはある種の薬剤(抗てんかん薬、抗不安薬、抗菌剤、他)でも高値を示すことがあります。

γ-GTPは健康体であっても、異常値を示す場合があります。異常値が出た場合は、年に数回、測定することをお勧めします。数値に変化が無ければ、心配無いでしょう。

9 月 30 日, 2017

医療に関する話 膵石(すいせき)

スターフライヤーは北九州空港の飛行機です。
【50代男性】

慢性膵炎で当院に通院中の方です。腹痛などの症状は無いものの、膵酵素の異常高値が続くためCT検査を受けたところ、主膵管に膵石が見つかりました。(*主膵管とは、膵臓の真ん中を貫いている膵液の通る管です。膵臓で作られた膵液はこの管を通って十二指腸に流れていきます。)
大学病院の治療方針は内科医、外科医ともに、「膵石による症状が出たら、手術を検討する」という結論でした。別の病院でも診て頂いたのですが、まったく同じ回答でした。内視鏡治療の選択肢はありませんでした。
ご本人は「悪くなるまで待つというのは性に合わない。」と、この治療方針に納得されませんでした。
そこで、症状が無くても手術以外の方法で膵石を治療してくれる病院を探しました。その結果、内視鏡で膵石を取り除いてくれる病院が見つかり、九州から東京に出向くことになったのです。

ガイドラインでは、膵石に対する内視鏡治療は、原則、疼痛を認める症例を対象としています。ただし、疼痛がない場合でも、膵萎縮が無く膵機能の改善が期待できる症例も適応とすると記されています。この一文が、患者さんにピタリ当てはまりました。

私が、東北地方の病院に勤務していた頃のことです。膵癌の患者さんの手術を外科に依頼しましたが、血管走行の異常から、手術は出来ないと判断されました。そこで、特殊な手術方法の論文を見つけ、その論文を書いた東京の先生に患者さんをお願いしたのです。(無事手術を終えて、帰ってこられました。)
その時、自分の勤めている病院だけで判断しないで、もっと広い視野で治療を選択出来ることに気付いたのです。今回はこの経験が生かされました。

9 月 20 日, 2017

乗馬日記(11)  駈足(かけあし)発進

カッコイイ!北九州市若松区の「若松乗馬倶楽部」に通うようになって、丸2年が過ぎました。上手に乗れるようになった時に、「そんなことも出来なかったのか。」と懐かしがってみたく乗馬日記を始めました。乗馬の最終目標は、「若松の海岸をさっそうと駆け抜ける」です。

長らく乗馬のブログが更新できませんでした。というのも、ある壁にぶつかって、筆が進まなかったのです。

常足(なみあし)または軽速歩(けいはやあし)の状態から駈足(かけあし)にするには、(あぶみ)で馬の腹をけって合図を出します。そうすると、馬は一歩目を踏み込むので大きく揺れた後に、加速度がかかります。そのために、自分の体が後ろにおいて行かれそうになります。落馬したくない気持ちから、合図を出すと同時に上半身が前屈みになってしまうのです。そうすると、馬は止まってしまいます。前屈みにならないように我慢すると、手綱(たづな)を引っ張ってしまい、やはり、馬は止まります。手綱を引っ張らない様にしようとすると、手元があがってしまい、手綱が緩むとやはり馬は止まってしまいます。この壁に数か月間悩みました。

先日、同じ馬(ダニーボーイ:通称ダニー)に乗っている女性の練習を見学していると、楽に発進されていました。おまけに、発進した直後に手綱を片手に持ち替えて、「お利口さん」といわんばかりに、余った手でダニーの首をポンポンと叩いているのです。身のこなしがしなやかで、上半身に余計な力が入っていないのが良く分かりました。乗っている人間の上半身が硬くなると、馬も走りにくいのです。それで、心の準備のためと急な発進を回避するために、掛け声をかけてみることにしました。馬に聞こえるように、何より自分自身に。「イチ、ニ、サン、シ」でポン(で合図を出す)という具合です。そして、今日、スムーズに発進が出来るようになったのです!
この気持ち、子供の頃に、補助車を外してはじめて自転車に乗れた時と同じような感動でした。

9 月 10 日, 2017

大腸smがん(ガイドラインどおりにならない時もある)

大腸粘膜の層構造です。初期の大腸癌は内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。

大腸の壁は、内側から、①粘膜固有層 ②粘膜下層 ③固有筋層 (④しょう膜下層) ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。

がんの深さが①までであれば内視鏡治療を選択します。
がんの深さが③④⑤まで及んでいれば(シェーマの黄色のラインより下)、外科手術が必要です。

②(粘膜下層)にがんが浸潤していた場合、粘膜筋板から1,000μm(=1mm)までの深さであれば、内視鏡治療で良いとされています。1,000μm以上あければリンパ節転移の可能性が10%程度あるため、手術が検討されます。

先日、60代男性に大腸ポリープ切除をおこなったところ、smがんと診断されました。ポリープ切除によって完全にがんは取り切れていたのですが、粘膜筋板からがんの最深部までの距離が2,000μm(=2mm)ありました。内視鏡治療の基準より深くがんが浸潤しているため、リンパ節郭清の目的で外科手術を依頼しました。                             

【その後】外科で詳細に検討されました。まず、CT検査でリンパ節転移が無いことが確認されました。病変が肛門に近かかったため、リンパ節郭清をすると肛門機能障害を来す可能性が問題になりました。その結果、ガイドラインには従わず、厳重フォローアップの方針となりました。診療の標準化のために、ほとんどの疾患にガイドラインが設けてあります。今回のように、あえてガイドラインから外れた治療法を選択することはとても勇気がいることです。親身に患者さんのことを考えてくださった外科医に心から感謝しています。患者さんにとっても、手術が回避出来て良かったです。


Social Widgets powered by AB-WebLog.com.