8 月 9 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑨フィッツヒュー・カーティス 症候群 

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

お腹が痛い!「症候群」は、その病態を最初に発見した人の名前を付けることが一般的です。
フィッツヒュー医師とカーティス医師がそれぞれ、女性の性感染症による腹痛を報告したのが最初で、この名前が付きました。
現在では、クラミジア(等)感染症による骨盤周囲炎と同意語になっています。

【症例】20代女性
強い右上腹痛のために来院されました。嘔吐、下痢はありません。発熱もありません。診察では、腸雑音に異常は無かったのですが、打診(中指をもう一方の中指でトントンと叩くやつです)すると、強く痛みを訴えられました。痛みは広範囲で、部位を特定できませんでした。触診上、お腹は柔らかく、腹膜炎の可能性はなさそうでした。血液検査では、白血球数は正常で、白血球の成分も正常でした。エコー検査では胆石は認めませんでした。

ここまでで一旦頭の中を整理してみました。
① 腹痛ではあるけれど、胃腸症状は無い。こういった場合はむしろ要注意である。虫垂炎、尿管結石、お腹の血管の閉塞、などいろいろ考えておかなければならない。白血球が増えていないので、虫垂炎ではなさそうだ。血尿の訴えはなく、尿管結石も考えにくい。不整脈がないことから血栓が詰まる可能性は低そうだ。
② 強い痛みを訴えている割には、診察上、異常所見は認めない。
③ 女性の腹痛は子宮や卵巣が原因の可能性もある。

そこで、性感染症の可能性をご本人に説明し、クラミジア抗体を測定し、クラミジアに効果のある抗菌剤を処方することを了承して頂きました。
フィッツヒューカーティス症候群は、その激しい痛みのために、緊急手術になることが時々あります。この方も、非常に強い痛みでしたが、腹膜炎の所見はなく、落ち着いて診察が出来ました。なお、クラミジアに感染しても白血球は増えないことが多いのです。

後日、来院された時は、腹痛はおさまっていました。クラミジア抗体が上昇していることを説明し、産婦人科医にその後の治療をお願いしました。

【余談】三十数年前、医師国家試験に備えて、数多くの症候群を暗記しました。フィッツヒューカーティス症候群は無かったですね

8 月 8 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑧アルドステロン症

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

レニン・アンギオテンシン・アルドステロン系高血圧の患者さんの5%程度に存在すると言われているアルドステロン症ですが、これまで一度もお目にかかったことがありませんでした。

【レニン・アルドステロンの説明】
体内を流れる血液量が減ると、レニン(ホルモンの一種)が刺激されます。レニンはアンギオテンシンを介して、アルドステロンを分泌させます。アルドステロンは腎臓でナトリウム(Na)を再吸収し、カリウム(K)を排出します。その結果、血圧は高くなり、血中のK濃度は低下します。

【アルドステロン症のメカニズム】
体のどこかにアルドステロンをドンドン産生する腫瘍があるために高アルドステロン血症になります。その結果、高血圧となります。レニンはフィードバックがかかって産生が抑制されます。アルドステロン症では「低レニン・高アルドステロン」になるわけです。

【症例】
30代の女性で、風邪症状で来院されました。血圧170/120mmHgと異常に高かったのですが、これまで高血圧を指摘されたことは無かったそうです。時々、病院に来ると緊張して異常に血圧が上がる方がいらっしゃいますので、2週間ほど自宅で血圧を測って記録を持って来て頂くようにしました。
次の診察時に血圧の記録を見せてもらうと、自宅でも血圧が高いことがわかりました。そこで、レニン・アルドステロンを測定したところ、アルドステロン症の診断基準を満たす結果でした。エコー検査では副腎腫瘍は無かったので、腫瘍の無いタイプかも知れません。現在、大学病院で精査中です。早く結果が知りたいですね。

成書には、高血圧の患者さんは全員、初診時にレニン・アルドステロンを確認しておくことを勧めています。降圧剤を飲み始めるとレニン・アルドステロン値に影響が出るためです。レニン・アルドステロンを測定する時は、15~30分以上、安静臥床を続け、それから採血しなければ正確な値が出ません。ですから、高血圧の方にレニン・アルドステロンの採血をするのは、なかなか勇気のいることなのです。

古典的には、高血圧と低K血症の組み合わせがあるとアルドステロン症を疑うのですが、最近では、低K血症を起こすアルドステロン症は20%程度だそうです。アルドステロン症を見つけるのはなかなか難しいと思います。

8 月 7 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑦アカラジア

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

バリウムがなかなか食道から胃に流れていきません!アカラシアとは下部食道噴門部(胃の入り口)が緩みにくくなることで、食物の通過障害を来たす病気です。先日、当院でアカラシアが見つかった方が、最新の手術を終えて、1年ぶりに来院されました。すっかり、元気になり表情も明るくなっておられました。

アカラシアは10万人に1人程度のまれな病気です。症状も嚥下困難、食欲不振、嘔吐、胸痛など、それほど特徴的なものはありません。そのために、診断に時間がかかることがしばしば見受けられます。摂食障害と診断され、心療内科に長く通院していた報告もあります。

その方は30代前半で、すでに、いくつかの病院を受診されていました。「逆流性食道炎」の診断のもと、抗潰瘍薬(プロトンポンプインヒビター)が処方されていましたが、あまり効果は無かったようです。当院で胃カメラを受けて頂きましたが、特に異常を認めませんでした。この方はとてもしっかりした受け応えで、病状を的確に説明されましたので、心因的な要因は無さそうでした。診断の決め手となったのは、「水が飲み込みにくい。」という言葉でした。アカラシアは、何故か、固形物よりも流動物の方が飲み込みにくいのです。アカラシアの可能性があることをご本人に説明し、大学病院を受診して頂きました。

その後、別の大学病院でアカラシアの根治手術「内視鏡的食道筋層切開術(POEM)」が施行されました。この治療法が導入されて以来、アカラシアは完治する病気になりました。なお、POEMは2008年、世界に先駆けて日本で実施されています。

患者さんが「先生に出会わなかったら、今の私は無かった。」と話してくださいました。医者冥利に尽きる最高の褒め言葉でした。

8 月 6 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑥若年者の胆石症

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

先日、20代前半の女性で、胆石と総胆管結石による上腹部痛(心窩部痛)の患者さんがいらっしゃいました。年齢が若いから胆石はないだとう。と決めつけていたことで、診断までに遠回りをしてしまいました。

総胆管は肝臓と十二指腸をつなぐ管です。20代前半の女性で、食後に胃の辺りと背中が痛むために来院されました。2度目の診察で、胃カメラを受けて頂きましたが異常は見つかりませんでした。
胃薬で様子を見ていましたが、しばらくして、再び強い痛みが出たため、3度目の診察でエコー検査をおこない、胆石を確認しました。「まさか!」って感じでした。さらに、血液検査では、肝胆道系酵素が異常値を示していました。直ちに、大学病院を紹介し、CT、MRIなどの精密検査の結果、「胆のうと総胆管に結石あり」と診断されました。総胆管結石を内視鏡的に摘出した後に、胆のう摘出術が施行されました。

胆石症は「太った40代の女性」に多いということが定石です。太った(fatty)、40代(forties)、女性(female)といずれも『F』で始まるので覚えやすいのです。ところが、胆石・総胆管結石患者さんの男女比は1対1.2でさほど女性に多いわけではありません。50~60代にピークがあり、40代ではありません。「胆石は40代の女性に多い」という誤った概念を払しょくしなければなりません。

胆石・総胆管結石患者さんの15%は20代、30代であることから、決して、若年者にはまれというわけでもないのです。

実は、もうひとつ、反省しなければいけないことがあります。患者さんが、介護職だったため、きっと仕事のストレスが大きいだろうなあ。と勝手に想像していたのです。胃の痛みも『仕事のストレス』の要因が大きいと決めつけていました。

そういった点を反省しながら、カルテを見直していると、初診時に「背中も痛い」と記載しているではないですか! 胃潰瘍では背中は痛くなりません。胆石なら、右の肩甲骨あたりに痛みが放散することがしばしばあります。最初の出だしでつまずいていたのです。

8 月 5 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ⑤抗リン脂質抗体症候群 

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

お腹の血管はアーケードを形成しています。40代女性
1週間ほど前から続く上腹部痛のために来院されました。痛みの程度はうずくまるほどの激痛では無いけれど、これまで経験した胃の痛みよりは強い。という感じでした。エコー検査で胆石は無く、胃カメラでは胃潰瘍を認めませんでした。検査の結果を説明している間も、自然に手がお腹に行ってしまっており、痛みの深刻さが伝わってきました。その日のうちに腹部CT検査を受けてもらった結果、腹腔動脈と上腸間膜動脈の起始部での血栓による閉塞が確認されました。どちらもお腹の大事な血管です。閉塞部位を迂回する血管のバイパス手術が施行されました。
当院で採血していた保存血液で「抗カルジオリピン抗体」が陽性と判明したことより、血栓の原因は抗リン脂質抗体症候群だと思います。なお、確定診断を付けるためには12週間以上間隔をおいて再度、測定することが必要です。

抗リン脂質抗体症候群は、血中に抗リン脂質抗体と呼ばれる自己抗体が、様々な部位の動脈血栓や静脈血栓を来す疾患です。脳で起これば、脳梗塞が発症しますし、末梢動脈の閉塞では皮膚潰瘍が、網膜の血栓では視野異常失明を来します。今回、腹腔動脈と上腸間膜動脈の閉塞という非常に大きなトラブルにもかかわらず、内臓に大きな障害が出なかったのは、腹部の動脈がお互いに血流が行き来できる「アーケード」を形成しているためではないかと考えます。
なお、リン脂質抗体症候群は「習慣性流産」の既往が有名ですが、この方の場合、定かではありません。診察した際に、確か妊娠線は無かったと記憶しているので、出産の経験が無いかもしれません。
この病気の原因は不明であり、治療は抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)の内服による血栓の予防しかありません。再発率は高いようです。

原発性の抗リン脂質抗体症候群は日本に5,000~10,000人程度いると推定されています。“1万人に1人“というかなりまれな病気です。それだけに、強く印象に残る経験でした。

8 月 4 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ④大腸カメラ後の虫垂炎

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

最近、この人、何回も出てきてます。【20代の方です】
腹満感や便通異常の精査目的で大腸カメラを受けて頂きました。検査は、通常通り終了し、大腸に異常を認めませんでした。
検査後からお腹の張りを自覚していたのですが、徐々に悪化したため、検査後5日目に来院されました。盲腸の部位に一致して圧痛を認め、血液検査でも白血球が増えていることから、大腸カメラが誘因となった虫垂炎と判断しました。
それほど、強い痛みではなかったため、抗生物質で経過をみることが出来ました。

大腸カメラの前処置で飲む下剤の影響で糞便が虫垂口に詰まったり、検査の際の送気が刺激になったことで、大腸カメラ後に虫垂炎を起こすことがまれにあります。
今回も、そういった経緯であろうと判断し、慌てることなく、診察できました。

文献を調べてみますと、色々な報告がありました。
・大腸カメラの後に腹膜炎を来したが、原因は、虫垂に魚の骨が刺さったためであった。

・大腸のポリープ切除をした後に、大腸の穿孔を来し緊急手術になったが、穿孔の原因はポリープを切除したためではなく、虫垂炎が破れたためであった。
などなど。

大腸カメラの後に虫垂炎をおこすことがある。」ということを知っていなければ、検査の後の腹痛に主治医が動揺し、その後の対応を誤り、患者さんに余計な不安(又は怒り)を与えることになります。知識(経験)が大事であることを改めて感じました。

8 月 3 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ③ナットクラッカー症候群

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

ナットクラッカー症候群の解剖図!

ナットクラッカー症候群とは、左腎静脈(LRV)が大動脈(Ao)と上腸間膜動脈(SMA)に挟まれることによって、腎臓から下大静脈への血流が悪くなり、左腎静脈圧が高くなる病態です。一般的には、血尿や左側腹部痛の症状が出ます。

ナットクラッカー症候群は私が好きな病態のひとつです。なぜなら、完璧に思える人間の肉体で、数少ない構造的な弱点のひとつなのですから。

大学病院勤務時代、ポリクリの学生さんに「腹部エコー」のベットサイドティーチングを担当していました。その時に、必ず、このナットクラッカー症候群を紹介していました。しかし、医師になって30年間、一度もお目にかかったことが無かったのです。

先日、腹痛の患者さんのエコー検査をした際に、左腎静脈の拡張と大動脈をまたいだ後の急な細まりを見つけました。「これは、ひょっとして。」と胸の高鳴りを覚えました。腹部CT検査を受けて頂き、診断が確定しました。今後の治療は、大学病院にお任せしましたが、とても大きな充実感を得た出来事でした。

8 月 2 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ②「解離性動脈瘤」

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

赤い血管が大動脈です。今回は、『的確な診断には詳細な病癧の聞き取りが必要である。』というエピソードです。

40代の女性。1週間前から肩甲骨の辺りが痛くなり、数日後には、上腹部が痛くなりました。昨日あたりから腰も痛くなり、当院を受診されました。
血圧が170/110 mmHg に上がっていましたが、「痛みのためかな」と思い、それ程、気にかけませんでした。
エコー検査で15mmの胆石を2個認めましたので、「胆石による腹痛」と判断しました。胆石では度々、肩甲骨辺りが痛くなりますから。ただし、胆石が胆嚢の頚部に詰まっているわけでもなく、胆嚢炎の所見も無いので、「本当に胆石が原因かな?」という疑問は残りましたが、精査治療のために救急病院を受診して頂きました。

救急病院でCT検査を受けた結果は、意外にも「解離性大動脈瘤」との診断でした。痛みは、解離の生じた部位(肩甲骨辺り)から解離の進行に伴い、腹部から腰部へと移動していったわけです。

①痛みの場所がドンドン移動している。
②普段は高血圧ではないのに、血圧が上がっている。
③胆石はあるが、食事の時間や内容と関係なく痛みが出現している。エコー検査でも、石が詰まったり、胆嚢炎をおこしている所見が無い。

このように、冷静に考えれば、十分「解離性大動脈瘤」は想像される疾患でした。紹介状に「解離性大動脈瘤の疑い」と書けなかったことがとっても悔しいですが、患者さんが元気になられて何よりでした。

8 月 1 日, 2019

開院10周年記念 シーズン2 ①「伝染性単核症」

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

伝染性単核症はEBウイルスに感染することによって発症する病気です。高熱、リンパ節腫脹、喉の痛み、肝機能障害、などが主な症状です。唾液を介して感染することが多いことから俗に「kissing disease(キッシング病)」とも言われています。

39℃でた!先日、数日間の高熱の後に、瞼(まぶた)がむくんだために来院された方(10代)がいらっしゃいました。

まず尿を調べると、蛋白が出ています。血液検査では白血球が増えています溶連菌感染後ネフローゼ症候群をおこし、瞼が腫れているのではないかと推理しながら診察を進めました。血液検査では肝機能障害を認めました。エコー検査では脾臓が腫れ、胆のう壁も肥厚していました。血液検査結果から、当初、想定していたネフローゼ症候群は否定されました。しかも、瞼の腫れと胆のう壁の肥厚がどう関係しているのか説明できません。正直、混乱してしまいました。白血球増多と脾臓の腫れから最悪の場合、「白血病」の可能性があるかも知れないと考えました。念のために、大学病院の血液内科で診て頂くことにしました。

その結果、リンパ球の半分以上が『異型リンパ球』であり、(後に判明したことですが)EBウイルスに初感染のパターンのウイルス抗体価を示したことで、伝染性単核症と診断されました。紹介状に「伝染性単核症の疑い」と書けなかったことが、口惜しかったのですが、患者さんが1週間の入院で元気に退院されたので、兎に角、良かったです。

文献を調べてみると、伝染性単核症でまぶたが腫れることが、確率は低いものの、在るのですね。初めて知りました。なぜ、まぶたが腫れるのかは、分かっていないようです。また、本疾患で胆のう壁が肥厚することも稀ながら報告されていました。

(〇)発熱 90%以上
(〇)首のリンパ節の腫れ ほぼ100%
(〇)喉の発赤 80~90%
(☓)肝臓腫大 50~90%
(〇)脾臓の腫大 30~75%
(☓)発疹 30%程度
〇)眼瞼浮腫 10~30%
〇)胆のう壁の肥厚 非常にまれ

〇印:本例に当てはまる。☓印:本例に当てはまらない。

「瞼が腫れている」という事象に惑わされて、確定診断に至るまでに遠回りをしてしまいました。伝染性単核症は教科書どおりではない、非典型的な症状や経過を辿ることが多いのですが、改めて、診断の難しい病気であることを思い知らされました。

7 月 19 日, 2019

『開院10周年記念⑧』 風疹 高抗体価

『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログを紹介してきましたが、今回が最終回です。
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風疹ワクチンは1995年までは、女子のみに実施されていました(現在は男女とも接種)。2006年までは子供の頃に1回打つだけでした(現在は2回接種)。その結果、風疹の抗体を持たない昭和生まれの男性が社会問題になっています。

【30代男性(昭和生まれ)】
先日、妊娠を希望するパートナーとして風疹の抗体検査(無料)を受けられました。抗体価(HI法)は2048倍と異常な高値を示しました。発熱、発疹、リンパ節腫脹などの風疹を疑うような症状はありません。

妊娠中に風疹に感染すると、赤ちゃんに先天性風疹症候群をおこすことがあります。先天性風疹症候群の赤ちゃんは、様々な障害を持って生まれます。
風疹の抗体価は、陰性(8倍未満)、ボーダーライン(8倍~16倍)、陽性(32倍以上)と判定します。32倍以上あれば、風疹に対する免疫があるため、安心して妊娠できます。
16倍以下であれば、ワクチン接種が望ましいです。

では、2048倍はどういうことなのか。可能性が高いのが、風疹の不顕性感染(あるいは再感染)です。自然感染後の3~10%に、ワクチン接種後の14~18%に再感染が起こりうるのです。再感染は、無症状の事が多く、本人も気付かないのです。その結果、パートナーに風疹を感染させてしまうわけです。

女性が風疹の再感染で妊娠した場合を想定してみましょう。ワクチンも打っているし、症状もないので、まさか、風疹に再感染しているなんて想像もできないでしょう。しかし、ワクチンの効果は永遠ではないのです。母体は再感染でも、胎仔にとっては初感染ですので先天性風疹症候群は発症します。再感染による先天性風疹症候群をまとめた論文では、母体に発疹が出たのは27%、急性期感染の裏付けとなるIgM抗体の陽性率は50%程度と診断が難しいことを物語っています。

結局、この男性はどうすればよいのでしょうか?
① まず奥さんの抗体価を確認する。陽性であれば、妊娠に支障はないです。
② 奥さんの抗体価が陰性又はボーダーラインであれば、ご主人の抗体価が落ち着いてから妊活を再開する方が無難でしょう。

【あとがき】
妻が妊娠中に風疹にかからないようにするために、夫が風疹抗体を持っているのか調べられるようになりました。抗体がなければ、ワクチン接種に補助金も出ます。今回は、『高抗体価』という思わぬ事態に遭遇しました。この方にお会いするまで、風疹が再感染することを知りませんでした。しかも、再感染は、ほぼ無症状なのですから、2次感染の防ぎ様が無いですね。医療には想定外の事態が起こることを認識させられました。

ブログは、それなりに下調べをしなければ書けません。『是非、読んでもらいたい』という気持ちが強ければ、調べることも苦になりません。新しい知見が得られてむしろ楽しいです。これからも、その気持ちをエネルギー源にして、ブログを続けていきたいと思います。


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