食 道


食道の病気

「喉元過ぎれば熱さ忘れる」ということわざがあります。同じ失敗を繰り返す懲りない人のことを揶揄する時に使いますよね。
私達の体においては、喉元過ぎれば、そこは食道です。
食道はこれまでは、さほど問題にされることはありませんでした。しかし、最近では「逆流性食道炎」が大きく取り上げられるようになってきました。
食道の病気をいくつかご紹介しましょう。

1. 逆流性食道炎

逆流性食道炎は胃酸が食道内に逆流し、食道粘膜を刺激することで起こります。最も大きな要因は生活習慣、特に、食生活の乱れです。
暴飲暴食、早食い、脂っこい物の取り過ぎ、甘い物の食べ過ぎ、寝る前に食べる、あるいは食後すぐ横になる。等はすべて、逆流性食道炎を引き起こすことにつながります。
もう一つの要因は、日本人はこれまではピロリ菌感染者が多かったのですが、若い世代では感染者が少ないことです。
ピロリ菌に感染していると、胃の萎縮(老化現象)を来すため、胃酸が出にくくなります。
そのため、ピロリ菌を持っていると、食道炎にはかえってなりにくいのです。ところが、ピロリ菌を持たない世代、すなわち胃酸がよく出る人達は、食生活の乱れも加わり、逆流性食道炎を頻繁に引き起こしているわけです。
診断は胃カメラが最も正確ですし、胃酸を抑える薬を飲めば、速やかに良くなります。
しかし、覚えていてほしいのは、この病気は食生活の乱れが原因であることです。
それを自覚しなければ、意外に治療は難渋します。

2. 食道がん

まず、知っておいてもらいたいことは、
①男性に多い(男:女=5:1)
②喫煙と飲酒が強く関係している(両方とも習慣のある者:両方ともない者=7:1)
③食道は「しょう膜」といわれる強い膜で包まれていないため、簡単にがんが広がりやすい
④心臓、肺、大動脈などの重要な臓器と隣り合わせであること。
以上の4点です。③④の事柄から、食道がんは胃がんなどと違って、非常に予後が悪いのです。
診断は胃カメラがとても有用です。
一見しただけでは気が付かないようなごく早期のがんもヨード液をふりかけると、がんの部分だけ「白いしみ」となって浮かび上がってきます。
しかも、早期であれば、胃カメラによる治療で完全に治すことが可能です。
もし、不幸にも進行した食道がんが発見されたとしても、放射線療法、抗がん剤による治療、温熱療法などを組み合わせることで、最近の治療効果はすばらしく向上しています。
喫煙や飲酒の習慣がある男性の方は、1年に1回、胃カメラを受けられることを強くお勧めします。
食道がんは2年たてば、手遅れになり得ます。