1.ヘリコバクター・ピロリ菌感染症


ヘリコバクター・ピロリ菌(Wikipediaより)

一昔前まで胃酸過多とストレスによって発症すると考えられていた胃十二指腸潰瘍は、現在では、ヘリコバクターピロリ菌が胃に感染していることが大きな要因であることが判明しました。

今や、胃十二指腸潰瘍は感染症であり、抗生物質(除菌療法)で治す時代です。

当院では、積極的に除菌療法を行い、その治療判定には最も正確である尿素呼気試験を行っています。

もし、除菌不成功に終わっても、二次除菌(薬剤耐性菌に対するより強力な除菌療法)を提供します。

具体的な治療のながれを説明します。

まず、胃カメラを受け、胃あるいは十二指腸に潰瘍があることを確認します。

同時にピロリ菌がいるかどうかも確認します(1 時間以内に判明)。

抗潰瘍薬を、胃潰瘍なら2ヶ月間、十二指腸潰瘍なら1.5ヶ月間飲んで頂きます。

胃潰瘍の場合、胃がんとの鑑別のために治療終了時(2ヶ月後)にもう一度胃カメラを受けて頂きます。

十二指腸潰瘍の場合はがんの可能性はないので治療終了時のカメラは必要ありません。次に、除菌療法をおこないます。

これは、抗生物質2剤と抗潰瘍薬1剤を1週間だけ飲みます(朝夕1日2回)

これで、治療は終了です。以降、胃薬を飲む必要は一切ありません。

除菌療法から4~8週後に「尿素呼気試験」をおこないます。これは、試験薬を飲んで、20分後に自分の呼気(吐き出した空気)を試験管に集める簡単な検査です。

これによって、ピロリ菌が完全に除去されたかどうかが判明します(判定まで5日前後かかります)。

無事ピロリ菌除去に成功した場合、潰瘍になりにくい体質に生まれ変わります。さらには、胃がんの予防にもなることが指摘されています。

除菌療法が不成功に終わった場合は、薬の一部を変更した「二次除菌」を行います。治療や判定の方法は同じです。

その結果、ほぼ100%の方が除菌に成功します。

注意

1.潰瘍があってもピロリ菌がいない人、あるいは、ピロリ菌は持っているが潰瘍がない人は除菌療法が出来ません。

2.まれに、除菌療法中にじんましんや下痢などの副作用が出ることがあります。治療を中断せざるを得ない場合もあります。

3.逆流性食道炎を持っている方は除菌療法をお勧めしません。それは、除菌によって胃が若返り、胃酸がよく出るようになるため、逆流性食道炎がさらに悪化する可能性が高いためです。

胃の病気豆知識

その1. 胃下垂 … 胃が骨盤の中に落ち込んでしまっている状態をいいますが、やせた女性の4人に1人が胃下垂の可能性があります。