大 腸


★ 下血したら・・・
当院を受診される方の多くのきっかけが「下血」です。ちょっと、ティシュに付く程度から大量の出血まで、鮮血だったり、暗赤色だったりします。下血の前に腹痛があったりなかったり、さまざまな場合があります。自己診断できそうな場合をいくつかご紹介しましょう。あくまでも、その可能性が高いという意味で、確実ではありません。

1.虚血性腸炎

虚血性大腸炎日頃から便秘がち。急に激しい腹痛が起こります。痛い場所は左下腹部であることが多いです。大抵、その後に下痢をします。下痢と同時に下血(鮮やかな赤い色が多い)をきたします。
浣腸だけした後に肛門からカメラを30cm程、挿入すれば、真っ赤に腫れ上がったこの病気に特徴的な大腸粘膜を確認できます。良性の病気ですので、食事に注意して、お薬を飲めば、5~7日で治ります。

 

2.病原性大腸菌による出血性腸炎

o157バーベキューなどで、生焼けの肉を食べた。4~8時間経過した後、腹痛と下痢が始まり、血も混ざって来た。
便の培養検査で確定診断がつきます。O-157のような「ベロ毒素」を出すものでは腎不全などを合併し、入院が必要な場合もあります。抗生物質を飲む前に、便の培養検査を済ませておくことが大切です。

 

3.胃潰瘍

時々、胃のあたりが痛んでいた。最近、便がゆるくなってきている。たまたま、観察したら、チョコレートを溶かしたような便だった。
胃で出血した場合、血液は胃酸で酸化され、黒色に変化します。この場合は、速やかに、胃カメラが必要です。貧血の検査も必要です。
なお、造血剤を飲んでも便は真っ黒に変色しますが、この場合は、心配ありません。

4.潰瘍性大腸炎

ここ数カ月ぐらい、時々、お腹が痛くなる。便は柔らかくなりがちで、1日2,3回便意をもよおす。
まれに、便に血が付いていたり、唾液のような粘液がついていたりする。
直腸から奥に向かって広がっていく、原因不明の慢性の腸炎です。大腸カメラでは、その特徴的な所見からすぐに診断がつきます。
厚生労働省の「難病」に指定されています。的確な診断と治療(飲み薬)で、日常生活に支障がない状態に持っていけます。

 

 
★ 便秘でお悩みの場合・・・
1週間に2回(以下)しか排便がない状態が便秘と定義されています。言い換えれば、3日に1回排便があれば、何とか正常範囲と言えるでしょう。便秘の多くが、生活習慣に基づく「単純性便秘」です。水分摂取が少ない、運動を全くしていない、リラックスする時間がない、偏った食事、等が誘因です。生活習慣の改善と並行して、少量の便通を整えるお薬を飲まれることをお勧めします。薬には、便を軟らかくする薬、腸を良く動かす薬、ガスをためないようにする薬、西洋薬や漢方薬など、いろいろありますが、基本はあくまでも生活習慣の改善であり、あまり薬に頼らない気持ちが大切です。
しかし、下痢と便秘を数日間隔で繰り返す「交代性便通異常」は大腸がんの可能性が高く、非常に危険な兆候です。早急に大腸カメラを受けることをお勧めします。

 

★ 過敏性腸症候群(IBS)かも知れない・・・
これは、腹痛と便通異常が、慢性的に持続する大腸の機能的な疾患です。IBSの診断のためには、まず、いくつかの除外項目があります。
① 50歳以上の方は大腸カメラを受けて、大腸がんでないことを確認しておく。
② 血便、発熱、体重減少はきたさない。
③ 血液検査や便検査に異常がない。
これらの条件を満たした上で、1年間で3ヶ月以上(連続していないくてよい)の腹痛(腹部不快感)があり、腹痛が排便で軽快し、排便の回数の変化や便の性状の変化で始まる場合は、その可能性が高くなります。
10人に1人がIBSであると言われています。最近は、IBSに有効な薬が2・3開発されました。IBSのために毎日の生活が楽しめていない方は、ご気軽にご相談ください。

 

【余談】実は、私自身、25歳位まで典型的な(それも結構ひどい)IBSでした。試験がある時は必ず下痢でした。小・中学校では、ほぼ毎日、腹痛で悩み、学校も休みがちでした。今振り返ってみると、学校のトイレに行くことを「恥ずかしい」と思っていたからではないかと思います。そのために、学校では、無理に排便を我慢したことが心因的負担になっていたように思います。毎晩のようにお腹が痛くなって、親に心配かけたものです。

 

★ 炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)
炎症性腸疾患の代表的なものとして、潰瘍性大腸炎やクローン病があります。
いずれも若い人に発症する原因不明の慢性の腸炎です。
近年、食事の欧米化に伴い、わが国でも患者数が増加しています。
これらの病気は原因が特定出来ていないこと、治療法が確立していないこと、慢性に長期にわたって経過することなどの理由から厚生労働省の定める「特定疾患(難病)」に指定されています。

確定診断には、大腸内視鏡検査が最も有効です。
一般的には、薬の服用で寛解しますが、重症の場合、特殊な治療が必要となります。
当院では、連携病院のバックアップのもと、栄養療法、免疫抑制療法、抗サイトカイン療法など、患者さんの状況に応じて適切な治療をおこなっています。万が一、重症化しても、すみやかに連携病院への入院が可能です。

大腸の病気豆知識

その1. 脾わん曲症候群 … ひ臓近くの大腸(左横行結腸、下行結腸)にガスが貯まると、思いの外、腹痛を訴えることがあります。心配はないのですが。
その2. 大腸の長さは、肉食系(欧米人)は大腸が短い。一方、草食系(アジア人)は大腸が長い。人種によって大腸の長さは違うんですね。