よもやま話(9) 「アルカルイオン水」

よもやま話(9) 「アルカルイオン水」

いろいろな健康補助食品が世に出回っています。ゴマのエキスだの、葉緑素のエキスだの、蜂のエキスだの、飲むヒアルロン酸だの、ざっと思いつくだけでも3つ4つ挙げられます。これらの効能に疑問があるとしても、ご本人が良かれと思って使用することは個人の自由です。しかし、どうしても、アルカリイオン水だけは許しがたいものがあります。
そもそも、人間の体はpH【注1.】7.4前後の狭い範囲に調整されています。そして、このpHを決める因子は、呼吸(肺)と腎臓(尿)の2つの内臓だけなのです。食べ物(胃腸)は一切関係ありません。ものすごく酸っぱいものを食べたところで、所詮、酢酸ですから、「弱酸性」です。なんたって、胃酸はpH2の強酸なのです。これは、劇薬の塩酸と同じくらい強い酸性の液体なのです。ですから、アルカルイオン水を何リットル飲もうと、体のpHには何の影響もありません!
人間のpHのわずかな異常は、「致死的」な電解質異常を来たし得ることが多々あります。それは、治療薬の副作用でも起こり得ますし、少しの呼吸異常や腎機能異常でも起こり得ます。特に重症の病人は、本来の病気ではなく、このpHの異常で足元をすくわれることがあるのです。ですから、常にpHには気を配っています。それだけに、「アルカリイオン水」というキャッチコピーの無責任さに腹立たしく感じてしまいます。

【注1.】pHとは、酸アルカリを示す数値。pH 7が中性で、それ以下が酸性、それ以上がアルカリ性。