心に残った話(13) 「お知らせ」 

心に残った話(13) 「お知らせ」 

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

お知らせを運ぶよ ♥♥体の異変を感じて、検査を受けたために、偶然、思いがけない病気が見つかることがあります。

【70代女性】突然の腹痛で深夜に救急外来を受診されました。診察、血液検査とも大きな問題はなかったのですが、滅多にお腹が痛くなるなんてことがないとのことでしたので、念のために腹部のCT検査をとりました。すると、すい臓に2cmのがんが見つかりました。今回の腹痛と関係はなかったと思うのですが、偶然にも早期に発見されたわけです。がんになったことは不幸ですが、この腹痛がなければ、発見は遅れたはずです。「お腹が痛くなったのは、何かの『お知らせ』だったのでしょう。」と説明し、前向きに考えて頂きました。無事手術も終わり、今は元気にお過ごしです。
【50代男性】吐血して救急外来を受診されました。胃カメラでは、胃潰瘍から出血していました。胃カメラで出血を止める治療をしましたが、潰瘍の形がいびつなので、細胞の検査もしておきました。結果は胃がんでした。ご本人には二重にショックだったかも知れませんが、「血が出なければ、もっと進行するまで気付かなかったわけですから、これを良い『お知らせ』と考えて下さい。」と説明しました。手術の結果、がん自体は早期であり、元気で仕事に復帰されました。

これと、真逆の例が、健診で異常を指摘されていたのに、何年も放置していて、症状が出てきたためにようやく病院を訪れる人です。かなり病気が進行していることがあり、かける言葉に困ってしまいます。