医療に関する話 「新薬の開発」
新しく開発された薬が、実際に患者さんに使ってみて効果があるかどうか、安全かどうかを確認しないと、使用許可がおりません。
「新薬を患者さんに使ったら病気が治った。」それだけでは、新薬の効果で治ったのか、本人の回復力で治ったのかはっきりしません。ですから、新薬の効果を正確に判断するために、治療を受ける患者さんを2つのグループにわけます。ひとつのグループは新薬を投与される群です。もうひとつのグループは「偽薬(プラセボ)」を投与される群です。偽薬を投与された患者さん方は、まったく治療を受けないことになります。ただし、最初から偽薬と分かっていると患者さんは直す気力を無くしますし、医師の方も熱意が失せるので、新薬か偽薬かは、治療が終わるまでは、患者さんにも医師にも分からないようにします(この方法を二重盲検法といいます)。この結果、明らかに新薬の投与を受けたグループが治っていれば、その薬は有用であることが証明されたわけです。しかし、患者さんは未知の部分がある新薬の危険性にさらされるだけでなく、治療を受けられない危険性もあるわけです。
当然、日本ではこのような「非人道的」な臨床実験は普及しないため、日本の新薬の開発は海外に大きく遅れをとっているのが現状です。
【一口メモ】偽薬(プラセボ)でも、「これは、良く効きますよ。」と医師から言われて飲むと、20~30%の患者さんは、症状や検査結果が良くなるそうです。これを「プラセボ効果」といいます。古くから言われている「病は気から」は科学的に証明されているわけです。