医療に関する話 「ヒスタミンと喘息と胃潰瘍」
『ガスターテン』のコマーシャルは皆さんも良くご存知だと思います。良く効く胃薬ですよね。この薬は、「ヒスタミンH2受容体拮抗剤」に属します。今回は、この薬の誕生秘話です。
「抗ヒスタミン剤」ってかゆみ止めの塗り薬に入っていたり、花粉症の飲み薬として皆さんも一度は使ったことがあると思います。古くから抗ヒスタミン剤はアレルギーの治療薬として汎用されていました。1960代、アメリカのスミスクライン社のひとりの研究者が、「喘息の患者は何故か胃潰瘍が少ない。」と日頃から不思議に思っていました。これをヒントに、喘息の治療薬として使用している抗ヒスタミン剤が胃潰瘍の治療にもなるのではないかと考えました。そして、ヒスタミンにはH1受容体とH2受容体があることを発見し、H1受容体はアレルギーに関係し、H2受容体は胃液の分泌に関係していることを確認したのです。その結果、ヒスタミンH2受容体をブロックする薬「ヒスタミンH2受容体拮抗剤」が誕生しました。この薬、当時としては画期的な胃潰瘍の薬であり、爆発的に売れました。私の記憶でも1980代から2000年にかけては、胃薬といえば、まずこの薬が処方されていました。スミスクライン社も莫大な財を築いたということです。その後、後を追いかけて、多くのヒスタミンH2受容体拮抗剤が発売されましたが、冒頭で出てきた「ガスターテン」もそのひとつです。
日頃のちょっとした疑問が大きな成果を生むのですね。