発熱(8) 「不明熱(その3)」

38℃以上の発熱が2,3週間以上続き、詳しく調べても原因が分からない場合を「不明熱」と診断します。不明熱の70%は細菌感染です。今回は、細菌感染ではなかった不明熱の経験をご紹介します。

患者さんは60歳代の男性です。39度前後の発熱が2,3週間続き、体重も10kgほど減少したため入院となりました。
 いろいろ調べても、どこにも感染症の形跡がありません。頼みのCT検査や血液培養もこれといった情報はありませんでした。それならば、膠原病(リウマチなどの病気の総称です。)ではと、いろいろ自己抗体(膠原病で陽性になる血液検査の項目)を調べてみましたが、何も出てきませんでした。不明熱にはどんな病気の可能性があるのか、いろいろな医学書を読み直して、検査や診断の手順に抜けが無いか調べました。かなり、もがき苦しみましたが、病名を絞り込めませんでした。しかし、こうやって何度も医学書を読んだことで、結果的には、不明熱のことに詳しくなったと思います。

 当時、私は市中病院で研修医をしていました。週1回の内科部長の回診で、何回か経過を説明していました。3回目か4回目の時だったでしょうか、「それでは、血管造影をやってみなさい。」と指示を受けました。
 血管造影の結果、腎臓に「微小動脈瘤」が多発していることが確認され、膠原病のひとつである「結節性動脈周囲炎」と診断がつきました。ステロイド(炎症を抑える薬)の内服を始めることによって、熱は下がり、体重も増えてきました。

 部長は、研修医の私がいろいろ調べて、『この不明熱は、結節性動脈周囲炎かも知れない。それならば、血管造影が診断の決め手になるハズだ。』との考えに至るのを待って下さったのだと思います。しかし、私の病状説明を聞いていて、これは、もう指導した方がいいと判断されたのでしょう。

 それから、月日が流れ、今度は自分が研修医を指導する立場になりました。「あれとこれをやっておくように。」必要な用件を研修医に伝えれば、仕事は早いです。一方、研修医が自発的に考えて仕事を進めていくのを見守るのは非常に忍耐と時間が必要です。ハラハラもします。研修医からは「教えてくれない指導医」という評判だったかもしれません。でも、この指導方針は勤務医を辞めるまで変えませんでした。苦労せず得た知識はすぐに忘れますが、努力して得た知識はしっかりと身につくことを私自身が経験していたからです。

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