医療に関する話  アミラーゼとリパーゼ

すい臓の病気を疑う場合、まず、血液中のアミラーゼを測定します。
アミラーゼは炭水化物をブドウ糖に分解するすい臓の代表的な消化酵素です。
すい臓にトラブルが起きると、本来ならば腸管に流れていくすい液が逆流し、その結果、血中のアミラーゼ値が高くなります。
 
アミラーゼは頬の内側にある唾液腺からも分泌されます(口の中から消化は始まっているのです)。
アミラーゼが高い場合、唾液腺からなのか、すい臓からなのか、血液検査で判定できます。
例えば、おたふく風邪であれば、唾液腺由来のアミラーゼがそのほとんどを占めます、急性すい炎では、すい臓由来のアミラーゼが90%以上になります。

血中アミラーゼ値が高い場合、どこかで作られているためなのか(産生の亢進)、尿に出ていかないためなのか(排泄の低下)を見極めることが必要になることがあります。血液中で、アミラーゼが分子量の大きい蛋白質と結合して、腎臓でろ過されにくくなってしまうマクロアミラーゼ血症は排泄の低下の代表的な疾患です。「アミラーゼ・クレアチニン・クリアランス比」を計算すれば判定可能です。少量の血液と尿で簡単に計算できます。

脂肪を分解する消化酵素はリパーゼです。
アミラーゼ同様にすい臓に異変がると高値を示します。特にアルコールが原因のすい炎ではアミラーゼ以上に鋭敏に反応します。

【最近あった出来事】
当院では、すい臓病を疑った時には、必ず、アミラーゼとリパーゼの2項目を検査するようにしています。アミラーゼは、すい臓に異常があっても、すぐに正常値に戻ってしまう性質があるためです。
先日、糖尿病が急に悪化したため、すい臓の異常を疑い血液検査をした患者さんがおられました。その結果、リパーゼのみがわずかに異常値を示しました。念のためにCT検査を追加したところ、すい臓には異常なかったのですが、小腸に2cmの腫瘍が見つかりました。偶然とはいえ、アミラーゼだけの測定であれば、この腫瘍は見つからなかったわけです。何が幸いするかわかりません。なお、腫瘍は手術で無事摘出されました。

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