よもやま話(71) 「臨床研究」

よもやま話(71) 「臨床研究」

勤務医だった頃、救急車で運ばれてくる患者さんが助かる場合と助からない場合の違いを、ある病態について調べていた時のことです。

膨大な臨床データをパソコンに入力し、何か違いがあるはずだと、あれこれ調べていました。例えば、助かったグループの年齢と助からなかったグループの年齢を統計ソフトに入力し、2群間で有意差が出るか検討してみます。その結果、年齢に差は出ませんでした。では、血圧はどうか?血液検査ではどうか?こういった作業を根気よく繰り返していきます。

入院時の条件では違いを見出せなかったので、入院後の経過で「何か違いがないか」さらに検討を続けました。
調べていくうちに、12時間後の血液中のpHに有意な差があることを見つけました。助かる人はpHが正常値に戻り、助からなかった人は正常値に戻らないままでした。

2群間で有意差を検定するためには、助かったグループの正常値に戻ったデータと助からなかったグループの異常値のデータの両方が揃っていなければ比較出来ません。どちらが欠けても、比較できないのです。

一般に、正常値のデータは揃いにくいものです。正常と予想される場合は検査しなかったり、一度正常値であれば、それ以降は繰り返し検査しないからです。ましてや、入院12時間後というのは、大抵、深夜になっています。

この貴重なデータを揃えてくれた研修医の皆さんには心から感謝しています。集中治療室で不眠不休の治療にあたってくれたわけですから。

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