消化器病と電解質異常(8)
がんに伴う高カルシウム血症
今回もカルシウム(Ca)についてお話しします。
血中のCa濃度は副甲状腺ホルモン(PTH)によって調節されています。副甲状腺は、甲状腺の裏側にある4つの小さな粒状の臓器で総重量はわずか0.1gしかありません。
がん患者さんの10~15%に高Ca血症がみられます。その多くは、がんからPTH関連蛋白(PTH-rP)が産生されるために、血中のCa濃度が上がります。がんが骨に転移することで高Ca血症を来す場合もあります。高Ca血症を来しやすいがんは、乳がん、肺がん、腎臓がんなどです。
およそ20年前にすい臓がんがPTH-rPを産生し高Ca血症を来した患者さんを受け持ったことがあります。当時、九州ではPTH-rPを測定出来なかったため、東京の検査会社に測定をお願いした記憶があります。
血中Ca濃度が15mg/dlまで上昇したとき、昏睡状態に陥りました。PTH-rPを下げることは出来ないので、血中のCaを骨にシフトさせる「ビスホスホネート」を投与することにしました。患者さんの鼻から胃までチューブを留置し、ビスホスホネートの錠剤をすり潰し、水に溶いて流し込みました。そうしますと、速やかに血中Ca濃度は下がっていきました。それに伴って、意識も改善し、翌日にはまた話が出来るようになりました。
当時の医学書には高Ca血症の治療としては、大量の点滴に利尿剤の注射、ステロイドやカルシトニンの投与といったものしかありませんでした。ビスホスホネートが血中Ca濃度を下げることは判っていましたが、当時は骨粗鬆症の治療薬でしかなかったビスホスホネートの投与は「イチかバチか」の賭けでもありました。治療が上手くいった時は本当に嬉しかったです。ちなみに、現在では、数種類のビスホスホネートの注射薬が開発され、高Ca血症は点滴で簡単に治せる時代になりました。
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