医療に関する話 ABC検診(胃がん検診)

これまで、胃がんの検診は胃透視か胃カメラでしたが、

血液検査だけで胃がんにかかりやすい人を拾い上げようとする検診が「ABC検診」です。

ペプシノゲンは胃粘膜で作られますが、胃の萎縮(老化)が進むと、産生が低下します。血液中のペプシノゲンⅠが基準値以下で、かつ、ペプシノゲンⅠ/Ⅱ比が基準以下の場合をペプシノゲン陽性と表現します。つまり、胃粘膜の萎縮の強い人達です。

さらに、血液中のヘリコバクターピロリ抗体が陽性か陰性で組み合わせると、
A群:ペプシノゲン(-)でピロリ菌も(-)のグループ
B群:ペプシノゲン(-)でピロリ菌は(+)のグループ
C群:ペプシノゲン(+)でピロリ菌は(+)のグループ

D群:ペプシノゲン(+)でピロリ菌は(-)のグループ

の4つのグループに分けます。そうすると、A群からはほとんど胃がんが見つからないのに対して、C群やD群からは高頻度に胃がんが見つかることが分りました。最も頻度が高いD群では1年間に80人に1人の割合で胃がんが発生しています。B群はピロリ菌には感染したけれど、ほとんど胃炎が起こらなかった人達です。

ところで、D群のペプシノゲン(+)でピロリ(-)という場合を説明しましょう。ペプシノゲン(+)で胃の萎縮がどんどん進むと、胃粘膜が腸粘膜化します(腸上皮化生)。腸上皮ではピロリ菌は生きていけないので、自然にピロリ菌感染が消えてしまいます。その結果、ペプシノゲン(+)でピロリ菌(-)という組み合わせが出てくるのです。(面白いですね。)

現在のように、ある年齢になったら、全員が胃透視を受けるのではなく、C群やD群の人達だけに積極的に胃カメラを受けてもらえば、効率的に胃がんが見つかるわけです。

A群の方は、胃カメラによる定期的検査は不要と考えても良いでしょう。
B群の方は3~4年毎に胃カメラを受ければ十分です。
C群やD群の方は、出来れば毎年胃カメラを受けた方が良いでしょう。

まず、自分がA,B,C,Dのどのグループなのかを知ることが必要です。そして、B群とC群の方は、積極的に除菌治療を受けることをお勧めします。

このABC検診、実は10年以上も前にその有用性が発表されていますが、なかなか普及しません。現在、東京都足立区など一部の自治体ではこのABC検診を採用し、成果を出しています。

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