クリニック通信(60) 「絶対お薦め!重粒子線がん治療」
来春(H25年春)佐賀県鳥栖市に「九州国際重粒子線がん治療センター」が開院されます。今回はそのセンター長の先生の講演を拝聴してきました。
まず、最初に、放射線治療の誤ったイメージを払拭する必要があります。がんの治療といえば「手術」が思い浮かびます。手術出来ない場合に、やむを得ず、抗がん剤や放射線治療を選択すると思いがちです。しかし、そうではないのです。早期のがんに放射線治療をおこなうと、再発率や余命は手術と同等の効果が得られるのです。
これまでの放射線治療で使われてきたX線やガンマ線は、体の表面で放射線量が最大となり、体内に進むにつれて減少します。そのために、体の深い所にあるがんにダメージを与えるためには、その手前の臓器により大きなダメージを与えてしまっていました。
一方、粒子線(陽子線や重粒子線)は一定の深さで放射線量をピークにすることが可能です(ブラックピーク)。そのために、ピンポイントでがんにダメージを与えることが出来るのです。
1回の照射で大きな効果が得られますので、その結果、治療の回数が少なく済みます。例えば、前立腺がんにX線治療をした場合、5回/週、8週間(合計40回)を要しますが、重粒子線では、4回/週、4週間(合計16回)で済みます。
勤務医だった頃、食道がんの患者さんにX線治療をおこなうと、胸の皮膚が黒ずみ、背骨に放射線が当たらないように斜めに照射しても、骨髄抑制(白血球減少)を来し、治療を中断せざるを得なくなることがありました。また、「放射線酔い」と言われる気分不良の訴えにも度々悩まされました。
重粒子線治療では、これらの副作用がほとんどありません。
もし、あなたやあなたの身近な方ががんになった場合、もう子供をつくる予定がないのであれば、重粒子線治療を選択肢の一つに考えてみてください。私は、「第1選択」に考えます。人間の体に不要な臓器はひとつもないのですから。
【参考までに】
① 粒子線がん治療は胃がん、大腸がんには使えません。治療によって胃や腸が破れてしまうからです。対象となるがんは、頭頚部、中枢神経、肺(非小細胞がん)、肝臓、前立腺、子宮、すい臓、骨軟部、食道、直腸(再発)などです。
② 粒子線がん治療は保険が効きません。約300万円の自己負担が必要となります。がん保険に「先進医療の特約」を付けることをお勧めします。
③ 重粒子線と陽子線を比較すると、重粒子線の方が、より鋭いブラックピークを得ることが出来ますので、がん細胞を殺傷する能力は2~3倍大きいと考えられています。
(指宿市:陽子線、鳥栖市:重粒子線)
④ 粒子線治療施設は現在、日本に10数か所ありますが、東京や大阪の大都市にはありません。九州でも鹿児島県(指宿市)と佐賀県(鳥栖市)の2か所で、九州で一番の都会である福岡市にはありません。どうしてなのでしょう? 人口密集地には作れない何か事情があるのでしょうか。
⑤ なぜ日本人はがんと言うと手術を連想してしまうのか。日本は世界的にも胃がんの多い国です。胃がんは手術が必要ですから、そのイメージが先行したためかもしれません。
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