診療報酬シリーズ(19)  ピロリ菌の診断・除菌・判定

診療報酬シリーズ(19)  ピロリ菌の診断・除菌・判定

このシリーズは、開業年目の私の知識が、母校の新規開業した先生、あるいは、開業を控えている先生のお役にたてればと思い始めました。その対象でない方は読んでも面白くありませんので、予めご了承ください。

今回のテーマは「ピロリ菌の診断・除菌・判定」について、私見を交えながら解説したいと思います。
【1】 適応
ヘリコバクタピロリ菌の診断・治療は、その適応がドンドン広げられ、現在では、「内視鏡検査で診断された(萎縮性)胃炎」まで適応となっています。内視鏡検査を受けた人は、引き続き、ピロリ菌感染の検査を受けることが出来ると解釈しても良いと思います。

では、次の場合はどうでしょうか?
① 会社の健診で血中ピロリ菌抗体陽性を指摘された。
まず、内視鏡検査を受けて頂き、萎縮性胃炎を確認したならば、迅速ウレアーゼ試験等をおこないます。内視鏡検査をしないで、ピロリ菌の除菌治療は出来ません。
② 人間ドックで内視鏡検査を受けて「萎縮性胃炎」と診断された。
この場合、もう一度、内視鏡検査を受けて頂くのは気の毒なので、当院では、ピロリ菌感染の有無を血液か便か呼気で調べています。ただし、レセプトの症状詳記に内視鏡検査を何時何処で受けたかを明記しています。なお、内視鏡検査の時期は「半年以内」であることが望ましいようです。(1年以内であれば、査定されたことはありません。)

【2】 診断
ピロリ菌感染の有無を調べる方法は項目あります。
① 迅速ウレアーゼ試験(内視鏡検査必要)
② 組織鏡検法(内視鏡検査必要)
③ 培養法(内視鏡検査必要)  *実際はほとんど使わない
④ 抗体測定
⑤ 尿素呼気試験
⑥ 便中ピロリ抗原測定

難しいのは以下の文面です。
「①~⑥より1法を用いる。判定が陰性の場合に限り他の検査が1つだけ認められる」
「①~⑥の検査を同時に実施した場合①+②、④+⑤、④+⑥、⑤+⑥に限り同時算定可」

どうです?なかなか、難解な文章でしょう?読んだ時は解っていたつもりでも、実際の診療の場では、「あれっ?どうだったけ?」となることが多々あります。
私は、ほとんど①(迅速ウレアーゼ試験)のみで判定しています。50歳以下の方は除菌によって90%胃がんのリスクが小さくなります。ですから、50歳以下で①(迅速ウレアーゼ試験)が陰性だった場合は、⑥(便中ピロリ菌抗原測定)を追加で受けることを勧めています。⑤(尿素呼気試験)は高額ですから、そのことを説明した上でお勧めしています。

過去にピロリ菌感染があいまいに指摘されている方や複雑な事情のある方は、④⑤⑥の組み合わせを使って同時に項目調べることがありますが、まれです。この同時算定可のくだり、必要なのでしょうかねえ?

【3】除菌判定
さらに、難解になります。
先の①~⑥を使って除菌の判定をするわけですが、
「①~⑥より1法を用いる。判定が陰性の場合に限り他の検査が1つだけ認められる」
「④⑤⑥の検査を同時に実施した場合2つに限り同時算定可」
「④(抗体測定)は除菌前後で定量計測する。除菌後の抗体陰性化には6カ月以上要する。」

①②③ともサンプリングエラーの可能性があるわけですから、除菌治療の判定に「点」による判定方法は好ましくありません。私は、除菌の判定には、最も正確とされている⑤(尿素呼気試験)を第一選択にしています。自由診療で除菌された方は、比較的費用のかからない⑥(便中ピロリ菌抗原測定)を選択しています。

④(抗体測定)は除菌後6カ月経過し、前値に比べて1/2以下に低下していれば、除菌成功と判定します。ですから、除菌後の抗体が陽性でも、除菌出来ている場合があります。このあたりが間違った説明を受けている方を時々見かけます。
④(抗体測定)をおこなう時は、抗体価が出る血液を用いるべきでしょう。尿は抗体価が出ないために、治療前後で比較出来ません。
また、④(抗体測定)は、プロトンポンプインヒビター(PPI)の影響を受けませんので、除菌判定中に、逆流性食道炎等でPPIを内服している場合には、唯一使える検査法です。

いずれにしても、これらの診断、治療、判定の流れが誰にでも分るようにレセプトに明記する必要があります。

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