医療の話  偽膜性腸炎

医療の話  偽膜性腸炎

理由の如何を問わず、抗生物質の投与を受けると、腸内細菌のバランスが崩れます。運悪く、菌交代現象により異常に増殖したクロストリジウム・ディフィシル菌が産生する毒素(CDトキシン)により大腸粘膜が炎症を来し、腸炎が発症することがあります。ひどい場合は、大腸粘膜に白色の丸い斑点が散在している様子を大腸カメラで観察できます。この斑点が「偽膜」と呼ばれるものです。大腸の中に、雪が降ったような感じになります。
抗生物質投与中ないしは投与後に発症しますので、病歴を聞けば、大体、予想はつきます。

開院以来6年間で5名の「偽膜性腸炎」の方がいらっしゃいました(案外、少ない印象です)。その方々について、まとめてみました。
1. 年齢 43歳~76歳 (平均年齢60歳)
比較的高齢の方に多い傾向があります。

2. 大腸カメラで「偽膜」を確認出来た方が4名います。
偽膜は直腸~S状結腸に多いので、内視鏡を挿入すると、直ぐに診断がつきます。言い換えると、内視鏡をしないと、確定診断が難しい病気かもしれません。

3. CDトキシンを確認できた方が4名います。
便で調べるのですが、迅速診断で、ほぼ翌日には判明します。便の培養検査は1週間近くかかりますので、早く結果を得ることで、治療への取り組みもはやくなり、大変助かります。

4. 便の培養検査でクロストリジウム・ディフィシル菌(C.difficile)が確認できた方が3名います。

C. difficile は嫌気性菌(大腸菌などは好気性菌)なので、便の採取に特殊な容器が必要です。なお、ディフィシル(difficile)はdifficult (難しい) に由来しています。嫌気性菌であるため、培養が難しかったのでしょうね。

5. 治療
何といっても、まず、抗生物質の中止です。軽症の方(3名)は整腸剤で軽快しています。重症の方(2名)は入院治療をお願いしました。

偽膜性腸炎の診断は病歴(抗生物質の投与)と大腸カメラが決め手です。患者さんは、別の病気の治療で、腸まで悪くなったので、混乱されていることが多いです。「運が悪かった。」としかなぐさめようがありません。

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