平成27年診療報告より(1)   赤痢アメーバ症

平成27年診療報告より(1)  赤痢アメーバ症

赤痢アメーバ症は嚢子(シスト、卵に相当する)が口から侵入し、大腸粘膜で成虫(栄養型)になり、出血や潰瘍を伴った腸炎を来す病気です。
平成27年に当院でも1名確定診断が付きました。幸い、薬(フラジール)の内服で、完治しました。

当院では過去6名(6年間)の赤痢アメーバ症の患者さんが確認されました。
【男女比】男性:女性=6:0(全国集計でも9:1とやはり男性に多い)
【年齢】34歳~56歳(妻帯者2名、あとの4名は未確認)
【海外渡航歴】有(1名、中国)、無(5名)
【主訴】下血(3名)、健診で便潜血陽性(3名)
【病変の部位】直腸(4名)、盲腸(2名)

診断に関しては、大腸カメラが有用で、いわゆる「汚い」潰瘍やびらんが盲腸か直腸に認められれば、診断は容易です。10日間程度、薬を飲めば完治しますので、今のところ、大きな問題にはなっていません。

① 1990年代には年間100~200人程度だったのが、現在では年間1,000人以上の届け出があります。症状の無い保菌者はこの10倍いると考えられています。
② 東南アジアなどに渡航歴のある方や同性愛者(ゲイ)に多い病気とされていますが、実際は、どちらにも当てはまらない人が多いのが現状です。

この30年間で東南アジアへの旅行者はそんなに増えたでしょうか? 同性愛者(ゲイ)がそんなに増えたのでしょうか? 答えはいずれも「No」です。
圧倒的に男性に多いのは何故なのでしょうか?

赤痢アメーバの嚢子は野菜や果物に付着しています。特に、人糞を肥料として使っているとそのリスクは高くなります。嚢子は熱に弱いのですが、水洗いぐらいでは取れません。 (*東南アジアでは肥料に人糞を使うことがあります。)

【ここからは私見です】
日本でこの30年間で大幅に増えたモノ。そのひとつに『コンビニ』『ファミレス』があると思います。コンビニやファミレスのサラダ(カット野菜)は、何処で生産されたものなのでしょうか? サラダは水洗いだけで、熱処理は出来ないはずです。消毒水に浸すことで、細菌は殺せても、赤痢アメーバの嚢子は死にません。男性は、女性と違って、スーパーで産地を確認した野菜を買ってきて、家でサラダを作ることは滅多にしないでしょう?

【対策】
コンビニやファミレスでは熱処理してある(焼いたり茹でた)野菜を選ぶ。

【将来の不安】
現時点では、赤痢アメーバ症は抗生物質(フラジール)で完治します。しかし、フラジールが効かない報告も出てきています。将来的には、フラジールが効かないタイプが多くなる可能性があります。赤痢アメーバ症は決して、特殊な人の病気ではなく、身近な病気だと思います。

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