大腸smがん
初期の大腸がんは内視鏡治療(ポリープ切除)で完治します。一方、進行した大腸がんは外科的手術が必要です。内視鏡治療か手術か、その境目になるのが「smがん」です。smとは「粘膜下層」という意味です。先日、ポリープ切除をおこなった患者さんがsmがんでした。
大腸の壁は、内側から、①粘膜(粘膜固有層) ②粘膜下層 ③筋層(固有筋層) ④しょう膜下層 ⑤しょう膜 の5層構造になっています。①と②の境には「粘膜筋板」といわれる薄い筋肉の層があります。【右図参照】
がんの深さが①にとどまっていれば内視鏡治療で完治します。絶対にリンパ節転移はありません。
がんの深さが③④⑤であれば、外科手術が必要です。
問題は②です。粘膜下層を3等分して、上から順にsm1 sm2, sm3と呼びます。がんが1/3までの深さ(sm1)ならば転移がないため、内視鏡治療で良いのですが、がんが深ければ(sm2以深)、10%程度のリンパ節転移があるために手術をした方が安全です。
先日、S状結腸のポリープ切除をおこなった患者さんの結果がsmがんでした。内視鏡治療は粘膜下層で切除するため、切除標本で粘膜下層を3等分して評価することは出来ません。粘膜筋板からがん最深部までの距離が1mm以下であれば、sm1扱いになります。この方は粘膜筋板が分からなかったため、病変表層からがんの最深部までの距離(2.3mm)で代用し、sm2以深のがんと診断しました。この場合、ポリープが完全に切除されていても、リンパ節転移のリスクが残ってしまいます。
患者さんと話し合い、追加の外科切除術を受けて頂くことになりました。手術の結果、リンパ節に転移はありませんでした。
smがんは、リンパ節転移がないと『ステージⅠ』です。もし、1個でもリンパ節転移があると、『ステージⅡ』を飛び越えて、一気に『ステージⅢa』になってしまいます。
ステージⅢの大腸がんは、化学療法を追加するのが一般的です。手術が終わった後に、半年間、抗がん剤の投与を受けなければいけません。それでも、5年生存率はステージⅠが90%であるのに対して、ステージⅢaは80%と低くなります(数字はS状結腸がんの5年生存率)。
粘膜内、粘膜下層はわずか数ミリメートルの厚みしかありません。しかし、そのほんのわずかな差でも結果は大きく違ってくるのです。
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