診療報酬シリーズ(21) 診療報酬の点数に関する私見
このシリーズは、開業8年目の私の知識が、母校の新規開業した先生、あるいは、開業を控えている先生のお役にたてればと思い始めました。その対象でない方は読んでも面白くありませんので、予めご了承ください。
① 診療報酬は命に関わることには点数が高い。
例えば、内視鏡検査で大腸ポリープを切除した場合、5,000点です(1点=10円)。ところが、切除後数日経過した後に下血し、急きょ、内視鏡的に止血術をおこなった場合は、10,930点と倍以上の高い点数が付きます。大腸ポリープ切除も止血術もほぼ同じ処置内容です。「切る」か「止血する」かの違いだけです。ただし、止血できなければ、生命を脅かす場合もあり得るわけですから、高い点数が付いているのだと思います。
一方、歯科の点数が異常に低いことをご存知ですか。私自身の経験ですが、30分間かけて、歯石や歯肉の手入れをして頂いても、400点程度でした。これでは、歯科医院が閉院に追い込まれるのもやむを得ないと思います。点数が低いのは、虫歯では死なないから?
② 診療報酬の髙点数に惑わされてはいけない。
国の政策は、医療費の抑制目的で入院患者さんを在宅医療に移行しようとしています。開業医が在宅医療を積極的に取り入れるように、非常に高い点数が付けられました。夢の様な点数です。そのため、診察室の無い「在宅専門クリニック」も出来ました。そして、ある程度、在宅医療が浸透してきたころを見計らって、大幅な点数の引き下げがおこなわれました。まさに悪夢です。ですから「点数の高い・低い」に惑わされることなく、自分の信念をつらぬかなければ、ひどい目に合うと思うのです。
③ 診療報酬は確実に下がっています。
例えば、糖尿病の治療のひとつであるインスリン自己注射を例にとってみましょう。
20年前は管理料として1,000点程度が算定されていました。
10年前ぐらい前から880点に減額され、昨年からは750点に下げられました。2型糖尿病に安易にインスリン治療を併用するなどの医療側の要因もあると思いますが、財源が厳しいのが最大の理由だと思います。
④ 点数が決められていることの安心感
同じ自営業として、レストランを例にとってみましょう。ランチをいくらに設定するか悩みます。売れ行きが悪ければ、もう少し値段を下げようかと思案したりするでしょう。ところが、医療は値段が決められていますので、悩む必要がありません。経営を成り立たせるためには、その医療行為に要する時間を短くする以外には方法は無いのです。その最たる弊害が「3分間診療」と揶揄される診察時間の短縮でしょう。だからこそ、診察に時間をかけることで、信頼関係が得られると私は信じています。