ブログで診察(16)   腫瘍マーカー

ブログで診察(16)   腫瘍マーカー

体のチョッとした不調や気になる症状、医師に一度聞いてみたかったと言われたことなどを日々の診療からピックアップしてブログで紹介しています。

 

【質問】健診で腫瘍マーカーのひとつであるCEAが5.7(正常は5未満)と異常を指摘されました。どうしたらいいのでしょうか?(50代 女性)

【答】腫瘍マーカーでがんの早期発見は難しい。

腫瘍マーカーは進行したがんを見逃さない効果はあります。また、がんを手術や抗がん剤、放射線などで治療した場合の効果判定にも役にたちます。あるいは、がんの再発の発見にも役立ちます。しかし、がんの早期発見には向かないでしょう。

実は、腫瘍マーカーに正常値はありますが、異常値が出た時に、その測定値での感度と特異度がわかっていないのです。例えば、この方のCEA5.7は何%の確率でがんが存在するのかわからないのです。ですから、徹底的に検査を進めていくべきなのか、1年後にもう一度CEAを測定する程度で良いのか、あるいは、まったく無視していいのか、判断に迷うわけです。

もうひとつの問題が、腫瘍マーカーはそれ程、臓器特異性がないということです。CEAは、大腸がんが有名ですが、甲状腺がん、胃がん、肺がん、すい臓がん、子宮がん、等多くの臓器で上昇します。精査をするといっても、いったいどこから始めればいいのか迷ってしまいます。なお、PSAに関しては、前立腺がんの特異性が高いことが知られています。

CEAの場合、喫煙者で高く出る傾向にあります。しかし、「CEAが高いのはタバコのせいで、がんの心配はないですよ。」と言い切ることは出来ません。なぜなら、肺がんが隠れているかも知れないからです。禁煙をした後に、CEAが下がってくるのか確かめるべきです。

健診や人間ドックのオプションに腫瘍マーカーがあっても選ばない、という方法もひとつの解決策かも知れません。