医療の話 ベロトキシン(腸管出血性大腸菌)
1982年、アメリカとカナダでハンバーガーが原因となった食中毒を契機に、腸管出血性大腸菌が発見されました。この時、O-157からベロトキシンが産生されていることがわかったのです。日本では、1996年大阪堺市でO-157による食中毒が集団発生し、数人の方が亡くなられています。
【80代女性】
強い腹痛、下痢、下血にて近医からの紹介で当院を受診されました。大腸カメラをおこなうと、直腸とS状結腸に、びらんや浮腫が規則性を持たないで混在していました。「規則性が無い」というところがポイントで、細菌性腸炎が最も疑われる所見でした。数日後、便培養検査から腸管出血性大腸菌O-26が検出され、ベロトキシン(VT1)が確認されました。その後の経過は良好でした。ただし、腸管出血性大腸菌が溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすと、命を落とすこともあります。
ベロトキシンを持つ腸管出血性大腸菌はそのほとんどがO-157ですが、まれにやO-26やO-111の場合もあります。3類届け出感染症ですので、私も保健所に届けました。
北九州市における腸管出血性大腸菌の届け出数は、以下の通りでした。
平成26年 46名(8月26名)
平成27年 60名(8月37名)
平成28年 19名(8月6名)
注目すべき点は、8月に約半数が集中していることです。
夏休みにBBQなどを楽しむ際は、生肉の取り扱いに十分注意してください。