ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群

70代男性
ハッキリとした自覚症状は無く、何となく元気が無いとのこと。診察では特に異常はありません。むくみも認めませんでした。精査のために血液検査を受けてもらったところ、低蛋白血症、低アルブミン血症を認めました。尿検査はしていません。悪性疾患の存在を疑い、大学病院に精密検査を依頼しました。その結果、ネフローゼ症候群と診断されました。ネフローゼ症候群とは尿に大量の蛋白が排泄される原因不明の病気です。

紹介する際に、ネフローゼ症候群のことはまったく考えていませんでした。なぜ、診断出来なかったのか、成書を読みながら振り返ってみました。
❶ネフローゼ症候群の1/4は浮腫を来さない。
❷ネフローゼ症候群は20才未満が65%と圧倒的に多いが、70歳以上にも%程度と少ないながらも報告はある。
ネフローゼ症候群イコール「むくむ」「若い人の病気」という固定概念にとらわれていたのですね。むくみの無い高齢者でもネフローゼ症候群はあり得るのです。ただ、その確率が低いということです。

低蛋白血症(低アルブミン血症)をみたら、
① 摂取不足(低栄養)か吸収不良が無いか。
② 蛋白が尿から漏れていないか(ネフローゼ症候群)、便から漏れていないか(蛋白漏出性胃腸症)。
③ 慢性の炎症(自己免疫疾患、他)や悪性腫瘍が無いか。
④ 肝機能障害が無いか。
というふうに、順序立てて考えていけば、丁寧な問診(きちんと食事はとれているのか、便の性状はどうか、など)と、簡単な血液と尿検査だけで診断が絞られてきます。今回の経験を明日からの診療に役立たせたいと思います。