よもやま話(109) 『生きていく』
プライバシーに気を付けながら、患者さんのことをご紹介します。皆さん、90才前後の「超」ご高齢の方ばかりです。
【一人目】近所に一人暮らしをしている息子さんがいらっしゃいます。仕事が終わるのが毎日夜10時を過ぎるため、温かい夕飯を作って用意してあげるのが日課になっています。疲れて帰ってきて、冷たいご飯だったら心がすさみます。体力が続く限り、続けていきたいとのことです。
【二人目】養護施設に入所しているお子さんがいらっしゃいます。バスと電車を乗り継いで、月に2~3回、面会に行かれています。杖をついて、歩くのもおぼつかないのですが、顔を見せると喜んでくれるので、根性で続けておられます。
【三人目】病弱のために入退院を繰り返しているお子さんがいらっしゃいましたが、長年の看病の甲斐なく、昨年亡くなられました。一時期、生きる意味を感じなくなられたようですが、毎日お線香をあげたり、法要をするために、もう少し生きていく気力がわいてきたそうです。
人が生きる場合、「生きていく」と「生きている」があるそうです(浄土真宗の住職さんの話)。この三人の方々は、まさに「生きていく」を実践されていると思います。