
『開院10周年記念①』 急性膵炎
『開院10周年』を迎えるにあたって、私が10年間続けてこられたもののひとつにブログがあります。自分にとって印象深かったブログ(8編)を紹介したいと思います。
今回の主人公はふっくらした中年の女性です。胆石が原因で急性膵炎になりました。すい臓は胃の背中側についている100g程度の小さな内臓です。
主な働きは消化酵素液を分泌することと血糖をコントロールするホルモンを分泌することです。膵炎をおこしますと、すい臓は自分の作った消化酵素液で自分自身を溶かしていくわけです。
この患者さんも激しい膵炎のために、集中治療室で意識がもうろうとしたまま数日が過ぎていきました。
私達医療スタッフは検温や処置をする度に、意識レベルの確認のためもあって、何度も何度も繰り返し「○○さん、どうですか?痛くないですか?」と呼びかけました。もちろん、返事はありませんが。そして、ある日を境に痛みが引いていき、すべての検査結果が改善してきました。本人も意識が戻り、しっかりとお話が出来るようになりました。
「先生。私、ずいぶん寝ていたでしょう?夢の中で、とってもキレイなお花畑の中を歩いていました。とても、気持ちよく、安らかに過ごせました。でも、後ろから何度も私を呼び止める声がするので、仕方なく振り返ったら、今、ちょうど目が覚めたのですよ。」
これまでにも、何度か、こんな話をする患者さんにお会いしたことはありました。いわゆる「臨死体験」というものだと思います。「あの世」が本当にあるのかは別として、今回の1件以来、私は、意識のない患者さんに積極的に呼びかけるようになりました。付き添われているご家族にも、患者さんの耳元で話しかけてあげるように勧めています。
【あとがき】 これはブログ第1作目です。これが一番皆さんに読んでもらいたいブログです。実際の臨床の場では、ドラマのような感動的な場面に出会うことは滅多にありません。それでも、不思議な体験や気持ちが高まる場面を何度か経験しました。その時の気持ちを皆様に伝えたくてブログを始めました。なお、この患者さんは、ご縁があって今も元気にクリニックに通院されています。時々、診察の合間に身の回りに起こった不思議な出来事を楽しく聞かせてもらっています。