開院10周年記念 シーズン2 ⑧アルドステロン症

開院10周年記念 シーズン2 ⑧アルドステロン症

開院10年間で経験した印象深い病気を患った患者さんをご紹介したいと思います。なるべく、ご本人が特定されないように注意して書きました。

高血圧の患者さんの5%程度に存在すると言われているアルドステロン症ですが、これまで一度もお目にかかったことがありませんでした。

【レニン・アルドステロンの説明】
体内を流れる血液量が減ると、レニン(ホルモンの一種)が刺激されます。レニンはアンギオテンシンを介して、アルドステロンを分泌させます。アルドステロンは腎臓でナトリウム(Na)を再吸収し、カリウム(K)を排出します。その結果、血圧は高くなり、血中のK濃度は低下します。

【アルドステロン症のメカニズム】
体のどこかにアルドステロンをドンドン産生する腫瘍があるために高アルドステロン血症になります。その結果、高血圧となります。レニンはフィードバックがかかって産生が抑制されます。アルドステロン症では「低レニン・高アルドステロン」になるわけです。

【症例】
30代の女性で、風邪症状で来院されました。血圧170/120mmHgと異常に高かったのですが、これまで高血圧を指摘されたことは無かったそうです。時々、病院に来ると緊張して異常に血圧が上がる方がいらっしゃいますので、2週間ほど自宅で血圧を測って記録を持って来て頂くようにしました。
次の診察時に血圧の記録を見せてもらうと、自宅でも血圧が高いことがわかりました。そこで、レニン・アルドステロンを測定したところ、アルドステロン症の診断基準を満たす結果でした。エコー検査では副腎腫瘍は無かったので、腫瘍の無いタイプかも知れません。現在、大学病院で精査中です。早く結果が知りたいですね。

成書には、高血圧の患者さんは全員、初診時にレニン・アルドステロンを確認しておくことを勧めています。降圧剤を飲み始めるとレニン・アルドステロン値に影響が出るためです。レニン・アルドステロンを測定する時は、15~30分以上、安静臥床を続け、それから採血しなければ正確な値が出ません。ですから、高血圧の方にレニン・アルドステロンの採血をするのは、なかなか勇気のいることなのです。

古典的には、高血圧と低K血症の組み合わせがあるとアルドステロン症を疑うのですが、最近では、低K血症を起こすアルドステロン症は20%程度だそうです。アルドステロン症を見つけるのはなかなか難しいと思います。