
Colitic cancer(炎症性腸疾患由来の大腸がん)
炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎では大腸がんのリスクが高くなることが知られています。
【70代女性】
40年前から潰瘍性大腸炎を患っておられました。ここ数年は寛解状態が続いていたのですが、大腸カメラを希望され2年ぶりに来院されました。大腸カメラで、横行結腸に1cm大の扁平な隆起を認め、周囲の炎症性粘膜とは印象が違っていました。生検で大腸がんと診断されました。
【言葉の区別】
通常の大腸がんは、colon cancerと英語表記しますが、IBD由来の大腸がんはcolitic cancer と表記します。大腸炎(colitis)に由来するがん(cancer)という意味なのでしょう。
【頻度】
IBD患者さんの大腸がんリスクは、一般の人と比べて1.6から2倍と言われています。罹患10年で1%、20年で2%、20年以上で5%の発症率と言われています。
【発癌のメカニズム】
IBD由来の大腸がんは炎症性発がんであり、この点が通常の大腸がんと大きく異なります。慢性の炎症をベースに発がんするものには、ピロリ菌感染による慢性胃炎に出来る胃がんや、ウイルス性慢性肝炎に出来る肝臓がんなどが挙げられます。
【治療方針】
以前は、IBD由来の大腸がんは『全大腸切除』が一般的でしたが、最近では、内視鏡的粘膜切除が適応されることも可能となってきました。この方は、大腸全摘出術が施行されています。
IBD由来の大腸がんの知識はありましたが、経験したのは初めてでした。今回の経験を今後の診療に生かしていこうと思います。