2021年を振り返って①(胃カメラ編)

2021年を振り返って①(胃カメラ編)

昨年も大勢の方に胃・大腸内視鏡検査を受けて頂きました。有難うございました。自分なりに2021年を振り返ってみようと思います。

観察の工夫
胃カメラの際に、患者さんに協力してもらうことで、より詳細に観察出来ることがあります。内視鏡学会が主催する教育講演会などで知り、さっそく当院でも取り入れました。
①食道胃接合部は、患者さんに大きく息を吸ってもらって止めると、見たい所が良く広がって観察が容易になります。
②胃体上部大湾のひだが送気しても充分に伸展しない場合、患者さんに顔は横を向いたまま、お腹を上に向いてもらうと、胃が体の一番上に来るためにひだが良く伸びます。
今更という内容ですが、良いことはドンドン取り入れていこうと思います。

微小胃がん(5mm以下のがん)
体上部後壁の小さなビランでした。チョッと血が付いていたので気になって生検したところ、グループ2でした。数ヵ月後、再度、同じところを生検すると、今度はグループ5(がん)と診断がつきました。大学病院で内視鏡治療を受け、完治しています(粘膜内がん)。

毛細血管拡張症による胃出血
軽度の貧血の精査のために胃カメラをおこなった際に、直径5mm程度の赤い斑点を認めました。近づいて観察すると、毛細血管の固まりが観察されました。その周囲はやや白い粘膜になることが多く「日の丸紅斑」と言われています。送気による過伸展でも容易ににじみ出るような出血を来しました。これが、貧血の原因だったわけです。大学病院で、アルゴンプラズマによる粘膜焼灼術を受け完治しています。

胃マルトリンパ腫
胃がん検診で発見されました。数か月前から胃の重い感じがあったため、検診を受けられました。胃マルトリンパ腫の主な病因はピロリ菌感染です。ですから、ピロリ菌の除菌でマルトリンパ腫の大きな治療効果が得られます。この方の治療は総合病院にお願いしましたが、ピロリ菌の除菌で寛解しました。

食道粘膜がん(深達度:粘膜筋板m3)
食道をNBIに切り替えて観察していて見つかりました。通常観察では気が付いていませんでした。青緑の視野に中にぽつんと茶色のスポットが浮かび上がっていたのです。さらにルゴールを散布してみると、病変部に一致するルゴール不染帯が浮かび上がりました。この時、偶然に食道の蠕動運動で生じる「畳目ひだ」がほんの数秒間生じました。畳目ひだがいつ生じるかなんて分りません。検査中一度も出ないことの方が多いです。正常粘膜には入っている畳目ひだが病変部には入っていない決定的瞬間を写真に収めることが出来ました(写真参照)。この現象は、がんが粘膜筋板に達していることを意味します。実際、大学病院で内視鏡治療を受けた結果も、がんの深さは粘膜筋板(m3)と診断されました。説得力のある内視鏡写真を紹介状に添えることが出来て良かったです。画面3時方向の白い所が病気です。そこだけたたみ目ひだがありません。