
十二指腸狭窄による胃拡張
【患者さんの背景】10代の男性。半年前から、食欲低下、腹痛、嘔吐を繰り返すようになり、体重も7kg減少したため来院されました。BMIは18.8と低値でした。
【診断にいたるまで】腹部レントゲン撮影をおこなうと、お腹の中央には何もなく、小腸と大腸のガス像が骨盤腔内に追い込められている状態でした。これは、「胃拡張」による結果と判断しました。胃拡張を来す理由は、胃の次の臓器である十二指腸の通過障害が原因であろうと予想し、総合病院で腹部CT検査を受けてもらったところ、十二指腸下行脚が狭窄していることが判明しました。
【その後】大学病院で診てもらった結果、十二指腸下行脚の難治性の潰瘍が狭窄の原因でした。バルーン拡張をおこなっても、しばらくすると狭窄が再発するため、最終的には胃空腸吻合術が施行されました。その結果、通過障害による症状は消えて、しっかり食べられるようになったとのことです。
【思ったこと】完璧に出来ている人間の体もいくつか弱点があります。その一つが、十二指腸水平脚が大動脈と上腸間膜動脈の狭い隙間を横切らなければならない事です(上腸間膜動脈症候群)。この患者さんは、狭窄部位が少しずれていましたが、上腸間膜動脈症候群の概念がなければ、診断にたどりつけなかったと思います。
1枚の腹部レントゲン写真が診断につながったことは、主治医として嬉しかったですが、今後、益々、大事な所見を見落とすことが無いように気をつけようと思った次第です。