腸子宮内膜症
*子宮内膜症とは、子宮内膜類似組織が、異所性に存在する病気です。腸管に出来た場合は腸子宮内膜症と言います。
【患者さんの背景】30代の女性。健診で便潜血陽性を指摘され、当院で大腸カメラを受けています。直腸S状結腸移行部に、にじむ様な出血を伴ったびらんを認めました。同部位の管腔が固くなっており、病変を正面視することは出来ませんでした。何とか生検が出来ましたが、確定診断はつきませんでした。
大学病院で再度大腸カメラを受けてもらい、同部位からの生検で子宮内膜症粘膜が確認されました。この際、病変を正面視するために大腸カメラより小回りの利く胃カメラを使ったとのことです。執念ですね。
【その後】腸子宮内膜症の診断がつきましたが、特に症状もないことから、経過観察となりました。
【学んだこと】今回、長年の疑問が解けてスッキリしたことが幾つかありました。まず、腸子宮内膜症は成書によく出てくる病気なのに、これまで一度も遭遇したことが無かったので、不思議に思っていました。生殖年齢の女性の10%にみられ、その5~15%は腸に出現するとされています。100人に1人ぐらいの頻度になります。しかし、病変が粘膜より深層にあることが多く、内視鏡時の生検では診断率が10%程度と低いことが、この疾患に巡り合わなかった大きな要因と考えられます。
S状結腸が好発部位なのは、卵管に近いためだそうです。成書には、「月経期に一致して下血する」と記されていますが、粘膜面に病巣が及んでいなければ、そうはなりませんので、実際にはこの事象はまれであることも理解できました。