
近未来の北九州市八幡西区の医療(人口動態からの検証)
先日、医師会主催の講演を拝聴してきました。大学病院の公衆衛生の教授の講演でした。
自分にとって興味があった内容を思い出すままに書き出してみました。
・2040年問題
2025年(現在)から2040年のわずか15年間で日本では、労働者人口が1千万人減少する問題です。働き手がいなくなるばかりか、納税者も大幅に減少することになります。当院も充分なスタッフの数を揃えられないまま綱渡り的な運営を強いられています。従来と同じサービスが提供出来なくなり、業務の簡素化に取り組んでいます。例えば、大腸内視鏡検査では当日2L(リットル)の下剤を飲むのですが、各自、自宅で飲んできてもらうことで、看護師の仕事を減らせられます。現在、特に人手の足りない土曜日に取り入れています。
・人口分布図(人口ピラミッド)
日本はすでにピラミッド(若い人が多くて、高齢者が少なければ、ピラミッドの形になります)ではなく、ダイヤモンド型、さらには逆三角形になっています。10数年後、人口が一番多い年齢層は90才以上の女性だそうです。信じられますか?(人口動態というのは、かなり正確に将来が予想出来ますので、信じるしかありませんが。)この時、演者が、『この層の人達には貧困という問題が待っています。遺族年金をもらえる人はまだ何とかなるかもしれませんが・・・。』と語尾を濁されました。だから、余計に気になりました。日本では、まだまだ女性の年収は男性ほどではありません。当然、年金も男性より少なくなります。未婚の女性には経済的に大変な老後が待っているということを言いたかったんだろうと思いましたが、それを口に出すと、差別だの老後のために結婚するわけではない、などの批判が聞こえてきそうです。
・スエーデンの80才以上の医療の取り組み
高福祉国家として有名なスエーデンですが、80才以上になると、ほぼ通常の医療は受けることが出来ません。肺炎になったとして、内服薬を処方してもらう程度で、点滴(抗生物質とか栄養剤のことだろうと思います)などは受けられません。自分の生命力で生き抜くしか方法が無いのです。しかし、国民はこの制度を受け入れています。
・これからの主役は3次救急じゃなくて、1次救急の病院
テレビドラマなどに度々登場する高度な医療を提供する3次救急病院。そこでは、新進気鋭のスタッフがはつらつと働き、救えなかったかも知れない命を守り抜きます。しかし、近未来では、高齢者の(誤嚥性)肺炎や脳梗塞の再発など、限られた疾患が圧倒的に多くなります。この患者さんを1次救急で対応しきれないと、3次救急に回ってきてしまいます。3次救急が本来の高度医療を提供するためには、1次救急の充実が重要になってくるわけです。
・訪問診療の需要の飛躍的増加
これも、当然の成り行きです。政府の方針で今後病床は減っていきます。入院出来ない高齢者は訪問診療(往診)に頼るしかありません。私の住んでいる町にも訪問診療専門のクリニックが増えてきました。訪問診療の問題点は移動にかかる時間です。1軒目と2軒目の訪問先の距離が離れていれば、移動に時間を取られます。訪問診療は、勤務時間の6割は移動している時間だそうです。効率が悪いのが訪問診療の問題点と言えます。
お先真っ暗な話ばかりになり、読んでいてげんなりされたかもしれません。書いている私がげんなりしていますから。しかし、何か手はあるハズです。各自でいろいろ考えていきましょう。ひとつ言えることは、これからの十数年は、これまでのやり方に縛られず、変化を恐れず、新しいことに挑戦する勇気が必要だということです。