
食道アカラシアと逆流性食道炎
食道アカラシアは食道噴門部の弛緩不全による食物の通過障害であり、逆流性食道炎は、噴門部がゆるくなり、胃酸の食道への逆流による炎症です。良く似た症状ですので、両者の鑑別が難しいことがあります。
【患者さん】50代男性。BMI 30。
長引く咳に対して逆流性食道炎によるものと判断し、PPI(胃酸抑制剤)を処方するも、症状の改善は見られませんでした。睡眠中に胃液を嘔吐することがあり、4kgの体重減少を認めたことより、胃カメラを行いました。食道径がやや大きい印象と、食道内に胃液の貯留を認め、アカラシアと診断しました。なお、逆流性食道炎の所見は認めませんでした。福岡大学病院で手術(POEM)が施行され、すっかり元気になられました。
【反省と弁解】
「体重減少」の時点で、逆流性食道炎ではないと気付き、胃カメラでアカラシアと診断しました。逆流性食道炎は、要するに食べ過ぎが原因ですから、痩せることはありませんし、痩せるようであれば、症状は軽減するはずです。
BMIが30と肥満であったことから、逆流性食道炎だろうなと最初からバイアスがかかっていたことが大きな反省点です。
アカラシアは10万人に1人(年間発症率)のまれな病気であるのに対して、逆流性食道炎は10~20%の人が抱える一般的な病気です。胸やけ、胃液や食べ物の逆流、それに伴う咳などの症状をみたら、頻度の高い逆流性食道炎を最初に鑑別疾患に挙げるのは正しい判断だと思います。
当院でアカラシアと診断し手術を受けた方は、この方を含め5名です。10万人に1人の病気にしては、意外に遭遇するものですね。あるいは、アカラシアと診断されていない方がこの世にもっと沢山いらっしゃるのかもしれません。
【追記】
非びらん性胃食道逆流症(NERD)の存在もアカラシアの発見を遅らせる一因だと思います。NERDと診断された患者さんの中に、アカラシアが紛れ込んでいる可能性があるかもしれません。胃カメラで逆流性食道炎の所見が全く無いにもかかわらず、症状だけでNERDと診断出来るようにしたのは、「消化器内視鏡学会」もさすがに無理があると思います。
