膵臓の病気

膵臓は消化酵素を分泌する「外分泌」とインスリンに代表される「内分泌」の両方をつかさどっている特殊な臓器です。近年、アルコール摂取量の増加に伴い、アルコール性膵炎が増加しています。何度か急性膵炎を繰り返すうちに、慢性化してしまいます。その何十年後には膵臓がんが発病する可能性が高くなります。膵臓がんは早期発見が難しく、がんの大きさが2cmで手遅れという状態です。膵臓のもう一つの側面である内分泌の病気の代表が「糖尿病」です。糖尿病といえば、肥満、過食、運動不足、といった言葉が連想されますが、実は、慢性膵炎に伴う特殊な糖尿病(膵性糖尿病といいます)が存在します。また、糖尿病のコントロールが急に悪化した場合、膵臓がんの可能性があります。こういった方面から糖尿病を診ることも非常に大事なのです。当院では、糖尿病の治療を血糖コントロールだけではなく、膵臓の病気のひとつとして診療にあたっています。私は膵臓病の研究で「医学博士」を取得しました。膵臓病に関しては特に数多くの臨床経験があります。
膵臓の病気で背中が痛くなるわけ…
ほとんどの内臓が腹膜という大きな袋に包まれています。ですから、病気した時はお腹が痛くなります。ところが、膵臓は腹膜に包まれておらず、背骨の上に乗っかった格好で固定されています。そのために、膵臓の痛みは背中に来るわけです。
急性膵炎・慢性膵炎
どちらの病気もアルコールが原因であることが圧倒的に多いです。急性膵炎の場合は胆石が膵臓の出口に引っ掛かったとか、原因不明の「特発性」という場合もありますが。急性膵炎を2回、3回と繰り返すと、間違いなく、慢性化します。慢性膵炎になれば、もう元には戻れません。1回の失敗で懲りて、きちんとアルコールを止めることが出来れば、慢性化はしません。慢性膵炎の行き着くところは膵臓がんといってもいいかも知れません。膵臓がんを早い段階で見つけるのは、CT検査しかありません。血液検査(腫瘍マーカーといわれるもの)やエコー検査、あるいはPET(ペット)検査などよりCT検査の方が数段、診断能力は上です。ただし、注意しなければいけないことがあります。

①造影剤を使ってCTを撮ること。膵臓がんは、血流が悪いため、造影剤を使うと「黒いしこり」としてうかびあがってきます。
②最新型のCT装置で撮影すること。「64列マルチスライス」までは必要ありませんが、最低でもヘリカルCTであることが条件です。
③優秀な放射線科医の読影コメントがついていること。レントゲンフィルムに写っていても、医師がそれを異常と認識出来なければ、見落とされてしまいます。担当医の判断だけではなく、放射線科医との二重チェックがより安全だと思います。

当院では、福岡新水巻病院とのスムーズな連携により、速やかにCT検査を予約することが可能です。大病院志向の現在、どこの病院でも、CT検査ならば1ケ月待ちは当たり前といった感があります。福岡新水巻病院には64列マルチスライスの最新型CT装置があり、さらに、優秀な放射線科医の読影が保証されています。

【余談】アルコールで肝臓を悪くする方と膵臓を悪くする方がおられますが、その違いは何なのでしょう?稀には両方とも悪い方もいらっしゃいますが、大抵、肝臓か膵臓かどちらかだけです。この疑問に答えられる論文を読んだことがありません。このことを明確にすることで、ひょっとしたら、何か大発見があるかもしれません。
すい臓にやさしい食事はといえば、何といっても、まず禁酒です。次に脂肪を控えること。てんぷら、うなぎ、ショートケーキなどはすい臓の負担になります。