心に残った話(11) 「鼻の穴」

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

今回の主人公は70代の男性です。重症の急性すい炎のために集中治療室に入院して頂いていました。すい炎という病気は、本来ならば腸に流れていくべき消化液(とても刺激が強い液)がすい臓からお腹の中に染み出ていき、お腹の中を溶かしていく病気です。そのために、激しい腹痛を伴います。また、すい液は血液中に逆流し、肺をはじめ色々な内臓にダメージを与えます。
この方も、すい炎のために呼吸状態が悪くなり、人工呼吸器につながなくてはいけませんでした。そのチューブを気管内に入れる時に鼻の穴を経由して挿入しました(経鼻挿管といいます)。このほうが、チューブの固定がいいためです。その後、さらに、腸閉塞を来たしたため、腸液を抜くためのチューブも入れる必要が出てきました。もう一方の鼻の穴から胃にチューブを入れました。どちらのチューブも結構太いため、鼻の穴は大きく広がりました。ただし、苦しくないように睡眠薬を点滴していましたから、ご本人は全然記憶がありません。
つくづく、鼻の穴が2個あることに感謝しました。
 すい炎も峠を越え、徐々に回復され、とうとう元気に退院することが出来ました。その方と話をする時はどうしても、鼻の穴に目がいってしまいました。しっかりとした、良い形の鼻の持ち主でした。

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