漢 方 医 学


漢方を使ってみませんか。

ツムラ HPより症状がいろいろあって、原因が特定しにくい。症状の原因も何の病気かもわからない。
こういったことは誰もが一度ならずとも体験しているのではないでしょうか。
医師の立場からは「不定愁訴」とか「自律神経失調症」とみなされがちです。
この状態を西洋医学で治そうと、ひとつひとつの症状に合う薬を処方していくと、あっという間に5,6種類の薬が必要になってしまいます。そして、それらをすべて飲んでも、結局は良くならない。
皆さん、ご存知ですか?「自律神経」が失調状態であれば、人間は生きていけないのです!
いろいろな症状や訴えから「キーワード」を拾い出し、適切な漢方薬を処方出来れば、予想以上の効果が期待できます。
漢方では症状や訴えが多ければ多いほど、「キーワード」も多くなり、処方薬を絞り込みやすくなります。
これを、西洋医学一本やりで解決しようとすると、「ヒント」の一杯詰まった、せっかくの患者さんの話が『わずらわしい』ものになってくるわけです。
ひとつの例を出しましょう。
食欲低下、腹満感、嘔気、胸やけを自覚しており、さらに、片頭痛や肩こり、不眠症でも悩んでいる方が、近医で胃カメラを受けたけれど、特に異常はないと言われました。
しかし、何も薬を出さないわけにいかないので、胃酸抑制剤と粘膜保護剤を処方されていました。
当然、症状はよくなりません。良くなるはずがありません。
胃潰瘍もないのに、どうして、胃酸を止める必要があるのでしょうか?(胃酸は決して要らない悪いものではないのです)要するに、西洋医学は、検査で異常がなければ、診断が付かないので、そこから先に進めないのです。

六君子湯(りっくんしとう) この方には「六君子湯(りっくんしとう)」を処方し、胃酸抑制剤は少しずつ減らすように指示しました。
漢方によって、胃は徐々に元気になり、食べることが楽しみとなり、それにつれて、いろんな症状も忘れてしまっていました。
(この「忘れる」という感覚が漢方では重要です。)
きちんと検査をしないで、始めから漢方に頼るというのも危険です。漢方では、がんや物理的にものが詰まった状態は治せないのです。
しかし、免疫力を引き上げたり、炎症をおさえたり、体全体の不調を回復させることは得意です。
西洋医学と漢方はお互いに欠点を補い合えるものだと思います。

ウイルス感染には漢方を。

明らかな細菌感染による肺炎や膀胱炎、胆のう炎などには、残念ながら、漢方薬はまったく威力を発揮出来ません。使わない方が良いです。
しかし、風邪やインフルエンザ、ノロウイルスによる胃腸炎などにはごく初期に漢方を使用することが有用です。
インフルエンザには『タミフル』という抗ウイルス薬がよく知られています。発症後48時間以内に内服を開始すれば有効です。
もちろん、私も、ためらわず、タミフルを処方しています。しかし、漢方薬はさらに初期段階から有効なのです。

例えば、熱が出た。あるいは、寒気がした。喉がいがらっぽくて、体がだるい。ふしぶしが痛い。など

 

「風邪のひきはじめかなあ。いや、ひょっとしたらインフルエンザかも」
などという段階で、「麻黄湯(まおうとう)」を一服内服しておけば、ずいぶん楽になります。
あるいは、「葛根湯(かっこんとう)」をお勧めします。これらの漢方薬は細胞内の免疫力を高め、風邪ウイルスに対して有効に作用してくれます。

 

 

 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

 

もし、遷延化すれば「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が適しています。
このように、漢方の特徴は同じ診断名でも、その時期によって処方すべき薬が違ってきます。

 

 

のどのつかえに漢方を。

消化器内科では「喉(のど)の違和感」を訴えて来院される方が多くみられます。
半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)柴朴湯(さいぼくとう)」その9割が女性といっても良いでしょう。胃カメラを飲んで頂いて、食道を含め詳しく調べても異常がないことが多い印象です。もちろん、食道の入り口に腫瘍(がん)が出来ていることもまれにあります。ですから、一度は、胃カメラを受けて頂いた上で、何も異常がなかった場合は、漢方治療が良いと思います。
「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」「柴朴湯(さいぼくとう)」が良く効きます。
 喉のつかえ感を訴える方のお話をよく伺ってみると、自分の身の回りに納得できない怒りの感情を持っていることが多くみうけられます。漢方では「一怒一老」といって、怒りは寿命を縮める悪い感情とされています。「半夏厚朴湯」を処方すれば、大抵の方は2~4週間ですっかりよくなります。

ノロウイルスによる嘔吐下痢症に漢方を。

冬になるとノロウイルス(あるいはロタウイルス)による嘔吐下痢症が数多く来院されます。
五苓散(ごれいさん)嘔吐下痢の症状がある場合、白血球が増えいていれば、細菌性胃腸炎(いわゆる食あたり)と診断し、便の細菌培養検査をおこない、抗菌剤を処方します。しかし、白血球が正常もしくは少なめの場合は、ウイルス性胃腸炎と判断します。便を採取して、ノロウイルスの存在を調べることも可能ですが、ウイルスに対する特効薬がありません。ですから、症状を緩和する「対症療法」になります。
「五苓散(ごれいさん)」は全身の水チャンネルであるアクアポリンを介して水の適正分布に関与していると考えられています。嘔吐や下痢による水の不適切な分布に効果があるわけです。
インフルエンザやノロウイルスなど、ウイルス感染にこそ、漢方はその威力を発揮するのです。

花粉症(アレルギー性鼻炎)に漢方を。

そろそろ、花粉症の季節ですね。敏感な人は未だ春が遠い時期から、鼻がむずむずしてきます。
花粉症によく用いる漢方薬は「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。西洋医学では、抗アレルギー剤(抗ヒスタミン剤など)を処方しますが、どうしても、眠気がきます。その点、小青竜湯は眠気がまったく来ません。小青竜湯は元来、体が冷えて鼻水が出る人に用いる風邪薬です。ですから、花粉症のように体が寒くなり、鼻水が出る人にも効果があるわけです。小青竜湯にはエフェドリンを含有する麻黄(まおう)が含まれていますので、動悸などの副作用が出ることがありますが、ほとんどの方は大丈夫です。
じつは、私自身、ひどい花粉症を持っています。ひどくなると、目をこすりすぎて、白目のところがむくんで、鏡を見るとオバケみたいな顔になります。テッシュはいくらあっても足りません。ステロイド入りの抗ヒスタミン剤を飲んだ上に、目と鼻に薬を注入していましたが、それでも、止まらないくしゃみと鼻水におかしくなりそうでした。しかし、昨年、開業をきっかけに、本格的に漢方を診療に取り入れるようになり、まずは、自分自身から試そうと、小青竜湯を飲んでみました。そうすると、嘘のように楽になりました。最近では、くしゃみが出るときだけ頓服として使っています。小青竜湯には抗ヒスタミン剤を飲んだ時のあの嫌な「けだるさ」というものがありません。是非、皆さんも、お試し下さい。