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嗄声(声がれ)
【70代女性】
1か月ほど前から声が枯れるようになったため来院されました。耳鼻科では、異常を指摘されず。その時受けた血液検査でCPK(筋肉の酵素)が異常高値だったとこと。
その時点では鑑別すべき疾患が思い浮かばなかったため、CPKアイソザイムを調べて一旦診察を終えました。CPKアイソザイムはMM型(骨格筋由来)が99%でしたが、診断の参考にはならず。再診時には、四肢の冷え症、口渇感、等いろいろな体調不良の訴えがありましたが、対症療法に終始しました。数日後、あまりの体調不良のため救急病院に搬送され、『甲状腺機能低下症』と診断がつきました。その報告は、ご本人自ら連絡してくださいました。チラージン(甲状腺ホルモン剤)の処方を受け、体調は回復に向かっているそうです。
【学んだこと】
当院には10名あまりの方が甲状腺機能低下症で通院されています。その診断は比較的容易で、全身倦怠感、浮腫、易疲労感、便秘、寒がり、などが主な症状で、甲状腺機能が低下しているなあ、とイメージの湧きやすい症状です。『嗄声』も約15%に認められ、甲状腺腫以外の自覚症状としては3番目に多い症状です。ところが、私の鑑別診断には『嗄声』が抜け落ちていました。
【診察パターンの変更】
これまで、診察中に、患者さんの目の前でインターネットを使って、鑑別疾患を調べることは避けてきました。やっぱり、どこかに「見栄っぱり」の気持ちがあったのでしょうねぇ。でも、今回の経験を生かして、インターネットをどんどん使うことにしました。画像診断、病理診断、抗がん剤の選択、等、AIが医学に大きな影響を及ぼしている現代において、つまらない見栄を張っている場合ではありません。
<参考までに>
嗄声になるメカニズム:甲状腺機能低下により、生体の粘膜層や喉頭の筋肉に水分が溜まり、声帯が分厚くなり、その結果、正常に振動できなくなる。
CPKが高値になるメカニズム:甲状腺機能低下症が筋肉内のエネルギー代謝に異常をきたし、筋肉の硬直や筋力低下で筋細胞が損傷し、血液中にCPKが逸脱するため。
