
薬剤性膵炎
【50代男性】
白血病の既往(6年前)があり、その治療目的にアイクルシグ(抗がん剤)を内服しています。今回、特に誘因なく腹痛と背部痛が出現したため、当院を受診されました。
心窩部に圧痛を認める以外、特に有意な所見はありませんでした。自分自身のキーワードとして『下痢のない腹痛は要注意』という鉄則にのっとり、さらに詳細に調べることにしました。エコー検査では、胆石を認めず、膵臓の腫大も認めませんでしたが、血液検査でリパーゼ(脂肪を分解する膵酵素)が正常の5倍に上昇していることから、急性膵炎(軽症)と診断しました。数年前に、アイクルシグによる急性膵炎の既往があり、今回も同じ病態と判断しました。膵炎自体は軽症であることから、蛋白分解酵素阻害剤の内服治療を始めました。同時に、血液内科の担当の先生にアイクルシグの減量を提案しました。
【総説】
急性膵炎の成因は、アルコール性(30%)、胆石(24%)、特発性(23%)がおもであり、薬剤性は0.8%とまれです。薬剤性膵炎の多くは軽症で、予後は良好とされています。また、薬剤投与量の多い程、膵炎を起こしやすい傾向にあります。
一方、アイクルシグは、高頻度(14%)に膵炎を起こすことが報告されています。アイクルシグを含めた分子標的治療薬の内服中に腹痛を起こした場合、膵炎を鑑別疾患に入れておく必要があります。
【追記】
急性膵炎の患者さんを診ることは、年に1回あるか無いかぐらい”まれ”なことです。大抵は、アルコール性か胆石性であり、薬剤性膵炎に遭遇したのは、今回が初めてでした。
