
1985年と2026年の比較
私が医師になった年(1985年)と41年後の現在を、印象に残っていることを思い出すままに列挙してみました。
なお、1985年を(昔)、2026年を(現在)と表記しています。
(昔)クローン病の治療は栄養療法か手術しかなかった。5回も6回も小腸を切除した患者さんがざらにいた。
(現在)生物学的製剤(TNF-α阻害剤)等で、QOLは格段に良くなった。腸切除術を受ける患者さんは見かけなくなった。
(昔)C型肝炎という概念が無かったので、非A非B型肝炎と呼ばれていた。もちろん、治療法も無かった。
(現在)C型肝炎は3か月間の抗ウイルス薬の内服で完治する疾患になった。
(昔)誰もが胃の中に生物は住めないと信じていた。胃潰瘍の原因は胃酸と考えられており、『No asid, No ulcer』と朝倉の内科学に記載されていた。
(現在)胃潰瘍の原因はピロリ菌感染が主な原因と判明した。ピロリ菌は抗生物質で駆除できるようになった。
(昔)胃潰瘍からの出血を止める手段がなかったので、すぐに手術になっていた。
(現在)いろんな内視鏡的止血術が選べるようになった。ほぼ100%止血できる。
(昔)大腸内視鏡検査の前処置は、下剤を大量に飲むだけだったので、検査の時に腸管内に便が残っていることが多かった。医師にとっても辛い検査だった。
(現在)経口腸管洗浄薬(2Lの下剤)で、腸内はクリーンになり、悪臭もなく、衛生的に検査が出来るようになった。
(昔)糖尿病の治療は2系統の内服薬とインスリン(注射)だけだった。
(現在)内服薬は10系統に増え、注射もインスリン以外にGLP-1受容体作動薬(1回/週)が加わった。
(昔)注射器はガラス製で、オートクレーブをかけて再利用していた。
(現在)体液や血液に触れるすべての医療機器はディスポーザブルとなった。
(昔)紙カルテに、自筆で書いていた。くせ字のひどい医師のカルテを解読するのに苦労した。検査結果の伝票を台紙に貼っていた。レントゲンフィルムは大きな袋に入れて保管した。
(現在)電子カルテに入力し、検査結果やレントゲン写真は電子カルテ内に保管できるようになった。
(昔)抗がん剤の選択などの治療方針を決めるときは、英語の論文を沢山読んでいる医師が幅を利かせた。
(現在)AIが最適の治療を提案してくれる時代になり、論文を読んだ数は関係なくなった。
(昔)お腹の手術はすべて、開腹術だった。
(現在)特別の理由がない限り、腹腔鏡手術になり、手術痕は最小限に抑えられるようになった。
おわりに
Instagramなどで、度々、昔と今を比べたショート動画を目にします。「昔は、税と社会保障費用が給与の25%だったのに、今では50%になっている。昔は良かったなあ。」みたいな。税と社会保障費が高くなった分、国民が恩恵を受けていることもあると思います。
