胃切除歴の無い巨赤芽球性貧血の2例

胃切除歴の無い巨赤芽球性貧血の2例

【はじめに】

当院は、胃がんの患者さんを診察することから、胃切除術後のビタミンB12欠乏性の巨赤芽球性貧血(大球性貧血を呈します)に、時々遭遇します。今回は、胃切除歴の無い巨赤芽球性貧血の患者さんを2名診察しました。

【症例①】

80代男性。胃切除歴はありません。大球性貧血(MCV 127)を呈していたことから、ビタミンB12の欠乏が確認されました。胃カメラで、胃底・体部の萎縮が強く、前庭部の萎縮が目立たない「自己免疫性胃炎」を呈していました。ビタミンB12の皮下注射により、速やかに貧血は改善しました。

【症例②】

70代男性。胃切除歴はありません。大球性貧血(MCV 118)を呈していたため、ビタミンB12と葉酸を測定したところ、葉酸が異常に低い値を示しました。葉酸の内服薬(フォリアミン)を開始しました。

【解説】

経口摂取したビタミンB12は胃の壁細胞から分泌される『内因子』と結合することで、初めて吸収されます。しかし、胃切除術を受けたために内因子を分泌出来ない状況ではビタミンB12を吸収出来ません。胃切除術を受けて5年くらいで、体内に貯蔵されているビタミンB12は枯渇し、ビタミンB12欠乏による貧血が顕性化します(胃切除後巨赤芽球性貧血)。

内因子は、胃底・体部の壁細胞から分泌されますが、自己免疫性胃炎では、この胃底・体部の萎縮が強いので、内因子がほとんど分泌されなくなります。そのために、胃切除術を受けたのと同じような状況になったと思われます。

葉酸は新鮮な葉物野菜に多く含まれていますが、熱に弱い特徴があります。患者さんに食事内容を尋ねると、野菜はほとんど冷凍モノを使っているとのことでした。冷凍すること自体は葉酸に悪影響はないようですが、冷凍する前に、熱処理するでしょうし、冷凍食材は熱を加えて調理することが多いと思います。ですから、冷凍野菜ばかりを食していたことで、葉酸の摂取量がかなり少なくなっていたと思われます。