クリニック通信(30) 「胃カメラをする時、私が心がけていることをお話します。」

まず、胃カメラをすることになった経緯を再確認します。本当に胃カメラが必要なのか、胃カメラを受けても大丈夫な健康状態なのか、患者さんは胃カメラを受けることでどんな利益を得ることが出来るのか、そういったことをチェックします。

誰でも、異物が喉に入ってきたら「オエッ」となります。嘔吐反射を無くすことはできません。長年、どうやったらこの嘔吐反射を少なく出来るか考えていました。ある時、二日酔いで舌の奥に指を突っ込んでワザと嘔吐しようとした時に閃きました。「そうか、舌の奥に触れると嘔吐反射が起きるのか。胃カメラの時は、絶対、舌に触れないようにしよう!」

舌に触れることなく、カメラが喉の奥深く(咽頭)に来たら、患者さんが「ふっ」と油断するのを待ちます。その瞬間を逃さないで患者さんが唾(つば)を飲み込む動作と同調してカメラを進めていきます。力が抜けた次の瞬間に思わず唾を飲み込んでしまうものなのです。
時々「大きなあめ玉を飲み込むようにゴクンと飲んで!」って言いながらカメラを挿入している先生がいらっしゃいますが、それは酷です。だって、あめ玉は飲み込むもではありませんから。

食道にカメラが入ったら、まず水で食道粘膜を洗い、泡立った唾液を洗い流します。食道は「しょう膜」という固い膜で包まれていませんので、がんが直ぐに他臓器に転移してしまいます。もし、今回の検査で食道がんを見落とせば、次にカメラを受けた時は手遅れかもしれないのです。

胃の中にカメラが入っても、直ぐに空気を入れて胃を膨らませることはしません。これをやると胃が張って苦しくなるからです。出来るだけ空気を入れないで胃の出口(幽門)に進みます。そこで、ゆっくりと送気して、徐々に胃を膨らませていきます。

十二指腸にカメラを進める時は、カメラが大きく胃の中でたわみます。十二指腸の入り口はカメラの進行方向と逆向きなので、どうしても、目いっぱい押し込まないとカメラは十二指腸には入りません。ですから、「胃が押されますよ。」と患者さんに声かけしてからカメラを押し込みます。

十二指腸潰瘍はその80%が十二指腸球部の前壁に出来ます。ここは、意識して見ないと見えません。カメラが胃に戻る瞬間に見える場所ですので、仮に胃にスポッと戻ってしまったら、懲りずにもう一度十二指腸に押し込みます。

カメラが胃に戻って来たら胃の中をくまなく観察します。胃は背骨の上にまたがって位置しているため、どうしても正面視出来ない所が生じます。特に「盲点」と言われる場所が数か所ありますので、そこを意識して観察します。

もうひとつ気をつけていることがあります。それは、無暗にカメラを出し入れしないで連続性のある観察をすることです。カメラを入れたり抜いたりすると苦しいので、出来るだけ無駄な動きをしないように心掛けています。

カメラを胃から抜く前に、送気した空気を抜いて胃を元通りのペッタンコにしておきます。そうしないと、検査が終わった後、胃が張って苦しいからです。

もう一度、食道を観察しながらカメラを抜いてきます。この時は、食道の「蠕動運動(ウニュウニュとした粘膜の動き)」に注意して観察します。ごく初期の食道がんは見た目には異常ないのですが、蠕動運動の時だけに一瞬僅かな段差が生じます。これを見逃さないためです。

検査が終わったら、患者さんにねぎらいの言葉をかけ、無事に検査が終わった喜びを分かち合います。所要時間は5分~10分です。本当にお疲れ様でした。

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