心に残った話(8) 「大酒家」

私のこれまでの24年間の医師としての経験の中で印象深いエピソードを時々紹介したいと思います。すべて実話ですが、個人の特定が出来ないように、場所や時代は多少事実とは違います。よかったら、読んでみてください。

お酒は、美味しいですが、飲みすぎには注意しましよう!今回の主人公は60代の男性です。大酒家でした。ある年のお盆にいつも以上にお酒を飲みすぎてしまい。その後体調を崩し、もうろうとして救急車で運ばれてこられました。飲酒後の脱水と低栄養のために血液中の「ケトン体」(注1.)が致死的濃度にまで上昇していました。入院して頂き、ブドウ糖やビタミン剤の点滴で翌日には元気になられました。
 その翌年のお盆に、また、同じようにお酒を飲み過ぎた後、体調を崩して救急車で運ばれてきました。昨年とほとんど同じ検査結果だったので、同じ点滴メニューで治療をおこないました。ところが、二度目の時は、入院後なかなか病状が良くならず、さまざまな合併症を起こして、亡くなられてしまいました。
 同じ人で、同じ病気で、同じ治療をして、助かる場合とそうでない場合がある。という現実はとてもショックでした。いったい何が、違うのだろう?いろいろ文献をあたりましたが、生命予後に関する具体的な記載はありませんでした。それから、5年間、約40人の同じような病気の方が助かった場合とそうでなかった場合の詳細な検討をおこないました。
 
その結果、助からなかった方は、
① 最初から強い意識障害を伴っていることが多い。
② 入院後12時間経過した時点でも酸アルカリ関係のある数値が正常化していない。
という結論に達しました。以降、この2点に注意して、診療に当たるように気を付けました。後に、この研究は学会で報告しました。

(注1.)ケトン体とは脂肪酸の代謝物質であり、エネルギー源として糖質が適切に使われていない時に増加する。例えば、飢餓状態、糖尿病悪化時、など。

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